何かを直すには、一度全部崩さないと…

※この投稿は2005年8月28日にWEBサイト「ウチナーコンボイ通信本部」内のコラムコーナー「余計な一言」に掲載した記事の再掲です。

最近、バスに乗ることがよくある。那覇市から沖縄市まで行く。自家用車を運転しない私は、必然的に公共交通機関利用者になるわけだが、先日、ちょっと首をひねる出来事に遭遇した。
私は、バスの左側一番前の席に好んで座る。居眠りをしたいのだ。真ん中あたりの席は、どうにも寝にくい。だから、一番前の左側。運転席にも当然近い。

 普天間高校前あたりで、運転手さんが私に話しかけてきた。「どこまで行くんですか?」
居眠り明けで、ちょっとボーッとした私は、何でそんなタクシーの運転手みたいなことを質問するのだろうと不思議に思いながらバスの車内を見渡すと、乗客は私一人になっていた。

「何台か繋がっているから、ここで少し止まってていいですか?」

聞いたことの無い質問。前を見ると、確かにもう一台路線バスが並んでいる。その運転手が4~5分止まってていいですか?なんて聞くものだから、私は少し慌てた。このまま走れば10分で目的のバス停に着いて、約束の時間に間に合い、私の計算通りになるのに。
その話をしたら、仕方なさそうに運転手さんは再び走り始めたが、その後、運転手さんと話をしてみて、その質問の真意がわかった。沖縄のバス路線はどうかしているようだ。

 それは、中部~那覇間のバス路線が増えたために、バスの数珠つなぎ現象が時々起こるらしいのだ。中でも問題なのは、那覇から中部に向けて走る路線群。

那覇と中北部を結ぶ路線は大きく分けて、「牧志経由」と「久茂地経由」の二種類。まず、牧志路線は、バスターミナルから一度国際通りに入って、国道58号に出る。一方の久茂地路線は、そのまま国道58号に出て直進して北上する。そして、この2路線は、泊高橋という停留所を過ぎたところで「合流」する。両方とも58号を北上するからである。

しばらく直進して、宜野湾市の伊佐あたりで、普天間方向に進む路線や、そのまま北谷方向に直進する路線に細かく分かれていく。

実は、この段階でも少し問題は発生していたのだが、以前はまだ良かったのだという。事態が大きく変わるのは、那覇新都心が整備されてから。

ゆいレール・おもろまち駅の下に交通広場があり、ここの停留所を通って国道330号を北上して中部に向かう路線が登場したのだ。ちなみに、このおもろまち経由の路線の中に、更に久茂地経由と牧志経由が存在するからややこしい。

つまり、純粋な「牧志経由」「久茂地経由」のほかに、「牧志⇒おもろまち経由」「久茂地⇒おもろまち経由」という路線に細分化されたのだ。

さぁ、問題はその各路線が合流した時に発生する。

各路線とも、バスターミナルを出発するときは、大体5分間隔でバラバラに出発する。しかし、バスは公道を走るわけで、当然渋滞に巻き込まれたりする。周囲の車の走るペースや信号に当たる回数なども、バス停の通過時間に大きく影響する。

等間隔でバラバラに出発した各路線が、4つのルートを通り、合流した時に、数珠つなぎにあることがよく起こるようになったのだ。最悪なのは4台くらいバスが並んだ時。何が悪いかというと、その4台のバスは、あと15~16程は同じバス停を通るのだ。

となると、必然的に一番先頭のバスに乗客が集中し、後ろのバスにはほとんど乗客がいなかったりすることもしばしば。

しかも、最後尾のバスの、次のバスが遅れていたらもう大変。15分から30分くらい、バスが通らない、なんていうことも起きるらしい。

実は、おもろまちを経由させる路線は、従来あった路線を増便した上で、若干の行程変更をした路線なのだそうだ。200番台がその路線。(つまり、27番が従来路線で、227番がおもろまち経由。そして、27番と227番両方に、牧志経由と久茂地経由が存在する。)

ここでわかるのが、バス各社の「計画しているようで計画出来てない」路線運営のやり方である。
「おもろまちが出来たからどうしよう」という所だけに目を向けて、この路線を作ったら宜野湾あたりでは、沖縄市あたりではバスはどう動いているか、という予測がなされていない。

沖縄の西側の幹線は、58号と330号の二本だけなのだから、ここを通る路線はいずれ合流することは予測できたはずである。しかし、その作業がなされていないので、バスの数珠つなぎなんていう事態になるのである。


本来ならば、おもろまちバス停が出来るとき、一度全部の路線を白紙にして、路線を引き直せば良かったのだ。運転手さんは「会社はそんな面倒なことしないよ」と嘆いていたが、これこそが会社のやるべき仕事なのでないか。そういう小手先のことがしっかりしてないから、利用客離れに拍車がかかるのではないか。

一部分を直したいときには、一度今までのものを崩して、抹消して最初から組み立て直した方が、ちゃんとしたものが出来るのである。

人気テレビ番組「大改造・劇的!ビフォーアフター」を見ているが、あの番組に登場する「問題のある家」は、ことごとく無計画な増改築がその問題を生み出しているような気がある。
だから、壁を全てぶち抜いた上でのリフォームが必要になるのである。

沖縄のバス路線にも、大胆な「リフォーム」が必要なのかも知れない。

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