メディアとは何ぞや~テレビ屋編~

※この投稿は2006年9月12日にmixi日記に投稿した記事の修正再掲です。

 私の場合、大学を卒業して就職活動において「マスコミ」という職業を選んで入社したわけではなく、「テレビに出られるようなタレント」になりたくて、高校演劇部から放送部、そして、様々な人たちとの出会いを経て、テレビのリポーターオーディションに合格、半年間のリポーター(出演)経験をし、ADに転向、4年間の下積みの後、師匠の計らいで今の会社に入れて頂いた。(私は放送局の人間ではないです。)
なので、私は「マスコミ」で仕事をしているつもりは無く、あくまでテレビ番組を作る「テレビ屋」です。 

そもそも、マスメディアという言葉には「新聞社」や「ラジオ」も含まれているわけで、テレビだけがマスメディアではないのです。それが、インターネットの場合でも、発信者が特定少数の場合(ヤフーニュースとか。ブログは除く)は、マスメディアと呼ぶことがあります。

で、元来、マスメディアの役割は「どこで何が起きてるか」を知らせる「瓦版」に端を発します。
京都にいる人たちが「浦賀に黒船来航!」とか、堺の商人たちが「大政奉還さる!」など、自分達の生活とは直接的には関係無いが、何らかの影響を与えそうな出来事を瓦版を通じて知っていたのです。

で、新聞やラジオ・テレビもそもそもはこのようなメディアでした。日本人が日本にいながらにして、アメリカ大統領暗殺の事実を知ることが出来たのもマスメディアの力です。

では、いつからマスメディアがおかしくなったのか。それは、民間放送が誕生し、スポンサーという概念が出来たことによると思います。スポンサーが放送局に広告を出し広告料(電波料)を払う。その料金の中から工面した制作費で番組が作られる。
ここまでの過程で、実はひとつ忘れられやすい手続きがあります。
広告を出した商品を視聴者が買ってくれないと、この手続きは終わらないのです。

で、もちろん広告料を出してもらえないと番組が作れませんから、必然的に制作側は、スポンサーが嫌がることは出来なくなります。例えそれがニュース番組であれ、ドキュメントであれ。

飲酒運転が多発している…どうすれば防げるか。ものすごく簡単な方法がひとつあります。それは、単純に「禁酒法」や「酒類製造禁止法」などを作って、世の中からアルコール飲料を排除することです。でも、例え番組に提供していなくても、放送局には酒類のスポンサーもありますから、そんなことは直接言えません。遠まわしな表現をしていくしかないのです。

また、ドキュメントの場合、番組として成立させるためには、どうしても「取材者の視点」が入ることになります。

以前、取材した高校演劇部の顧問の先生に、放送終了後に言われた一言があります。

「テレビは事実を曲げますからね。」

その通りです。

プロジェクトXが終了した背景にはそれがある。現在の「プロフェッショナル~仕事の流儀」という番組にも色濃く残っているが、ナレーションに「ディレクターの思い」がこもりすぎているのだ。
いうなれば、現在のドキュメントなんて、「ディレクターの主張したい事を、取材対象に代わりに言ってもらっているに過ぎない」のです。だって、長くインタビューしても、「番組構成上必要ない言葉」はカットされるのだから。ディレクターの都合で。


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