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ウクライナ戦争に関する私見 烏賀陽弘道

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2022年2月24日の開戦以来、ウクライナ戦争について分析した論考を書き続けいています。無料で読めます。価値があると思われたらカンパ・サポートしてください。
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#バンデラ

射殺されたリトアニア人監督が遺した  ウクライナ激戦下の市民の生活の記録  「7日間の取材記録に命を吹き込む」   フクシマやツナミと同じ人間の気高さ  この映画には人間への愛がある     ウクライナ戦争に関する論考     2023年3月1日現在

本稿は話題を少し変えて、第二次ウクライナ戦争(2022年〜)下の市民の暮らしを記録したドキュメンタリー映画「マリウポリ 7日間の記録」の話をする。 この映画は2023年4月15日の東京を皮切りに、全国の主要都市で公開される。世界でも初めての劇場公開である。 私がこの映画を知ったのは偶然だ。映画の配給宣伝会社から試写の案内が来たのだ。オンラインで試写を見た。 冒頭写真:殺害されたマンタス・クヴェダラヴィチウス(Mantas Kvedaravičius)監督。特記のない限り

ウクライナ戦争を理解する歴史知識7  ウクライナ・ロシア32年間の負のループ  政治・経済・国際関係とも抜け出せず     最後は武力侵攻という暴挙に         ウクライナ戦争に関する私見 分析編 2023年2月1日現在

前回、前々回本欄で、ソ連崩壊・ウクライナ独立後32年の歴史をたどってみた。たいへん複雑である。自分で書いていても、平易にまとめるのに四苦八苦した。 そこで、さらに本編で「分析と解説」を加えることにした。 ロシア・ウクライナの過去32年の歴史を調べていくうちに、いくつかの「パターン」が繰り返されていると私は考えるようになった。そのうち、特徴的な次の3点を抽出してみた。 (1)「経済」「政治」「国際関係」3つの負のループに2国間関係がはまり込み、抜け出せなくなった。 (2)

ウクライナ戦争を理解する歴史知識5  軍事侵攻以前から続くロシアとの紛争     政治混乱と汚職・寡頭支配で不安定   ウ経済はソ連時代の6割に縮小     32年間政治・経済体制の移行に失敗  ウクライナ戦争に関する私見18/概観  2023年1月20日現在

今回は1991年にソビエト連邦が崩壊、ウクライナが主権国家として独立してから、2022年2月にロシアが軍事侵攻するまでの話をする。 日本人の大半は、2022年2月24日にロシアの軍事侵攻が始まって初めて、ウクライナという国に注意を向けるようになった。「戦争が始まるまで、ウクライナはどんな国だったのか」を深くは知らない。その空白を埋めようというのが本稿の狙いだ。 前編では、まず独立後ウクライナのOverall View=全体像を俯瞰していく。いわば「概観」「概論」である。後

ウクライナ戦争を理解する歴史知識4      なぜプーチンはウクライナを      「ナチ」「ファシスト」と呼ぶのか     第二次世界大戦、ドイツ・ソ連戦争期     被害と加害の記憶をめぐり今も止まぬ論争          ウクライナ戦争に関する私見17   2022年12月6日現在

今回は第二次世界大戦時代のウクライナの話をする。 1941年6月22日、ナチス・ドイツがソ連に攻め込んだ。ドイツ側では「バルバロッサ作戦」という。 1939年にナチスがポーランドに侵攻して英仏が宣戦布告、第二次世界大戦が始まって2年が経っていた。 当時、ウクライナはソ連の「一地方自治体」になっていた。1922年にウクライナをソ連に併合する内戦は終結し「ソビエト・ウクライナ」になっていた。そこにナチス・ドイツが攻め込んできたのである(下の地図の赤いエリアがソ連。ポーランド