見出し画像

五月書房新社・出版妨害事件      第一回口頭弁論が東京地裁で開かれた 被告・佐藤章らは出廷せず        烏賀陽の提訴の棄却を求め争う答弁書

You Tube番組「一月万冊」主催者の清水有高と、その常連出演者・佐藤章ほかによる出版・言論妨害事件で、烏賀陽が彼らを被告に東京地裁に提訴した民事訴訟のうち、五月書房新社事件(一月万冊事件とは分離して審理)の第一回口頭弁論が2024年3月4日午後、東京地裁民事32部504号法廷(遠藤貴子裁判官・単独)で開かれました。開廷時間はおよそ20分。傍聴席には6人の一月万冊読者の方々がお見えでした。

(文中敬称略。冒頭の写真は2023年12月26日、提訴時の東京地裁司法記者クラブでの会見の様子。右が山下弁護士)

<要するに>


・佐藤ら被告側は弁護士だけが出廷し、被告はいませんでした。
・被告側は「烏賀陽の訴えの棄却」を求め、争う姿勢を書面で出しました。
・被告側の代理人は、
西脇亨輔弁護士(元テレビ朝日アナウンサー、同社法務部長)お一人でした。
・裁判官の許可を得て、3分間烏賀陽が意見を述べました(下にその趣旨)。
・次回はクローズドの弁論準備があり、裁判所に双方が集まって争点を整理します。傍聴可能な法廷が開かれる時はまたお知らせします。
・一月万冊事件の第一回口頭弁論は2024年4月15日月曜日午後1時半から、東京地裁民事部403号法廷で開かれます。清水被告が出廷するかどうか注目されます。


<原告・烏賀陽の意見陳述>


裁判の始まりにあたって、裁判官各位のひごろの司法へのご献身に心からの敬意を表したいと思います。また小生の意見を法廷で述べる機会を頂戴し、心からの御礼を申し上げます。

最初に強く述べておきたいことは、この事件の本質です。それは5点あります。

1)この事件は単なる「出版の契約を果たさなかった」という契約不履行の責任を問うものではありません。言論と出版の自由の侵害を問う事件です。
2)私のツイッター上での発言を封じようとした言論妨害事件である。
3)自宅に無断でおしかけ「ツイッターの発言をやめないと私の著作の出版を中止する」と怒声で脅した強要事件である。
4)出版の可否に関して力の弱い立場にある書き手を、出版社の権限を使って脅迫・強要したパワー・ハラスメントである。
5)その脅迫・強要は五月書房にとって何ら関係のない非合理な理由による。

五月書房新社は出版社です。「言論・出版の自由」という権利・自由が保証されてはじめて、営業し本を売り利益を得ることができます。

特に、五月書房新社取締役・佐藤は元朝日新聞社記者であり、出版・言論の自由という権利については、30年以上の職業人生の間ずっとその利益を享受し、誰よりもその重要性について知っているはずです。五月書房新社という出版社のオーナー・編集長を自称する杉原修も、マスメディア運営者という点では同じです。

彼らは「言論・出版の自由」の利益を最も享受する立場にあります。そしてその自由を誰よりも尊重すべき立場にあります。

その佐藤、杉原らが私の出版を妨害し、ネット上の言論の自由を妨害し、侵害するとは、自らが生きる自由・権利を自分が破壊するという、最もあってはならない悪質な事態です。マスメディア運営者・公的発言者としての資格を欠いていると言わざるを得ません。

しかも、それは私にとって我が子同然に重要な「拙著の出版」を材料に私の発言を封じようというものでした。これは「出版社・書き手」の力の差を背景に、意志に反した行為を強要する「ハラスメント」に他なりません。

同社取締役・佐藤章は、私が朝日新聞社在籍時代「AERA」編集部で机を並べた先輩でした。朝日新聞時代の私の敬意と期待は完全に裏切られました。佐藤には幻滅したとしか言いようがありません。極めて落胆しています。

出版を約束し、テキスト・写真原稿の入稿も済ませ、ゲラの点検まで進んでいた拙著を、別の主体である「一月万冊」に関するネット上の発言をすべて削除することを条件に、一方的に破棄する。これは、どう考えても正当な理由に当たりません。

言うまでもないことですが、一月万冊と五月書房新社はまったく別の主体です。烏賀陽と一月万冊・清水の紛争に、五月書房新社が介入する正当な理由はまったくありません。なぜ私と一月万冊・清水との紛争にわざわざ五月書房新社が介入し、出版の契約を破棄までしなければならないのか、正当な理由が私にはまったく見いだせません。

一月万冊と五月書房新社の唯一の接点は、五月書房新社取締役・編集委員会委員長の佐藤章が一月万冊の常連出演者であることだけです。すなわち、佐藤章が一月万冊というYou Tube番組にレギュラーとして主演し、報酬を得ていることだけが接点です。

予告なしに烏賀陽のプライベートな自宅に押しかけ、無理やり上がり込んだうえに「出版を中止する」と長時間怒声で恫喝したり、その後も執拗に電話をしてくるなど、佐藤・杉原の行動は、私にきわめて強い恐怖と不快を植え付けました。

また、本の出版を取引材料に、理不尽かつ自社に無関係な要求を強いる行為は、出版社と書き手の力の差を悪用したハラスメントとしか言いようがありません。

その結果佐藤、杉原らは、私が我が子同然に思い、長年福島第一原発事故の現場に自腹で通い続けて書き上げた「福島第一原発事故10年の現実」の出版を中止し、読者がこれを読む機会を奪いました。

私の被害者感情がいかに強いかは、とてもここでは書き尽くせません。
以上、長々と失礼しました。

どうぞ念頭に置いていただき、ご賢明なご審理とご判断をいただきますよう切にお願い申し上げます。

2024年3月4日
烏賀陽弘道


<一月万冊事件の第一回口頭弁論は4月15日>


一月万冊事件の第一回口頭弁論は2024年4月15日午後1時半から、東京地裁民事部403号法廷で開かれます。

清水の住民票が東京都内には見つからず、訴状の送達ができなかったため、期日が1ヶ月遅れました。職権で調査したいただいたところ、関西地方のある都市の貸オフィスが最新の清水の住民票記載地でした。

<お問い合わせ先>


原告・烏賀陽の代理人弁護士は
山下幸夫弁護士(新宿さきがけ法律事務所)です。

(2024年3月4日記)


私は読者のみなさんの購入と寄付でフクシマ取材の旅費など経費をまかないます。サポートしてくだると取材にさらに出かけることができます。どうぞサポートしてください。