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ウクライナ戦争を理解する歴史知識5  軍事侵攻以前から続くロシアとの紛争     政治混乱と汚職・寡頭支配で不安定   ウ経済はソ連時代の6割に縮小     32年間政治・経済体制の移行に失敗  ウクライナ戦争に関する私見18/概観  2023年1月20日現在

今回は1991年にソビエト連邦が崩壊、ウクライナが主権国家として独立してから、2022年2月にロシアが軍事侵攻するまでの話をする。

日本人の大半は、2022年2月24日にロシアの軍事侵攻が始まって初めて、ウクライナという国に注意を向けるようになった。「戦争が始まるまで、ウクライナはどんな国だったのか」を深くは知らない。その空白を埋めようというのが本稿の狙いだ。

前編では、まず独立後ウクライナのOverall View=全体像を俯瞰していく。いわば「概観」「概論」である。後編で各論に入り、時系列に従って詳述したいと思う。

なお、本文中では、2014年に始まるロシアのクリミア半島併合と東部2州への軍事介入を「第一次ウクライナ戦争」、2022年に始まる軍事侵攻を「第二次ウクライナ戦争」と記す。2014年にはすでにロシアのウクライナ領内への軍事介入が始まっていて、2022年はその軍事エスカレーションと筆者は考えているからだ。

(冒頭写真は2014年の『マイダン革命』。Mstyslav Chernov/Unframe)

●世界で116番目の一人当たりGDP


結論を先に言ってしまうと、2021年のウクライナは「欧州でもっとも貧しい国」である。いやそれどころか、世界でも真ん中より下の貧しい国に属する。世界銀行の統計によると

ウクライナの国民一人あたりGDP:4836ドル (2021年)

これはスリナム、ナミビアについで世界180カ国中116位。イラク、フィジー、モンゴル、エルサルバドル、トンガの上である。EU加盟国平均の20%でしかない。

比較のために例示すると、日本の国民一人あたりGDPは「失われた30年」の後でも3万9313ドルである。ウクライナの約8倍金持ちだ。アメリカは7万0249ドルで約14倍。

反対にいうと、ウクライナは日本の8分の1、アメリカの14分の1貧乏だということになる。


●実質GDPはソ連時代の60%以下に縮小

独立後31年間のウクライナはずっと「社会主義から資本主義・民主主義体制への移行の失敗」が続いている。たいへん残念ながら、そう言わざるを得ない。同時期に「ヨーイドン」で一斉にスタートした旧ソ連構成国や東欧国と比べても遅れている。

次の表は、1989年=100とした場合の旧ソ連・東欧諸国の実質経済成長率である。ウクライナは旧ソ連はもちろん、東欧諸国すべて合わせても最下位。ソ連時代の6割以下に経済が縮小してしまった。これほど経済が後退した国は他にない。

つまり経済に関する限りウクライナは「社会主義時代の方がマシだった」ということになる。

ウクライナで暮らす人々の生活実感はどうなのだろう。

●ポーランドに出稼ぎに行くと収入が5倍に増える

次の2018年のフランスのテレビ局"France 24"のニュースでは、キエフのトラック運転手ボバ・ババクが、隣国ポーランドに出稼ぎに行く様子が記録されている。

本欄でも何度か述べたとおり、ポーランドは文化的にも近いし、言語も似ている。障壁にならないという話が出てくる。陸続きの隣国で、EU加盟国だ。ウクライナ労働者にとってもっとも身近な出稼ぎ先である(EUとウクライナの連合協定は2016年に発効。ただしまだ加盟国扱いではない)。

「ウクライナでは賃金が低すぎて生活ができない」とババクはいう。ウクライナではトラック運転手の収入が月300〜400ユーロ(4万2000〜5万6000円)だが、ポーランドでは1500〜2000ユーロ(21万〜28万円)になる。夜行バスで12時間かけてポーランドに行って免許を取り、トラックのハンドルを握る。

実は、ポーランド人労働者はより高い賃金を求めてイギリス(当時はまだEUを脱退していない)やフランスに出稼ぎに行く。ウクライナ労働者は、ポーランドの労働力不足を補っている側面がある。

こうして外国へ出稼ぎに出ているウクライナ人の総数は400〜600万人にものぼるとみられる。独立当時5100万人いた人口は4300万人程度に減少した。

減少分には欧米に移住してウクライナに戻らない労働者も含まれる。一般に、外国に留学できる、あるいは学歴の高いウクライナ人ほど、そのまま欧米で就職、定住して戻らないことが多い。いわゆる「頭脳流出」である。

賃金が低くて生活ができない、ということは「賃金が不当に低い」または「物価が不当に高い」あるいはその両方である。

●400ドルの家賃が払えず片道1時間半通勤

ウクライナ人を妻に持つイタリア人漫画家イゴルトは、グラフィック・ノベル「ウクライナ・ノート」の中で、ウクライナ東部の工業都市ドニプロ市の住宅事情と通勤の様子を次のように書いている。2010〜11年の話だ。

月400ドル(5万1000円)の家賃が庶民には払えない、という。前述のトラック運転手・ババクの話と符合する。

服も食べ物も安いのに、どうして家賃だけは月600とか1000とか、1500ドルもするのかな?別に豪華な家じゃない、ごく普通のワンルームで。

答えは簡単だ。私が見てきたマンションは、ウクライナ人向けの住居ではない。ウクライナ人は、中心市街から1時間の距離にある、うらびれた果てのない郊外に暮らしている。不動産業はマフィアが牛耳っているらしい。界隈で幅をきかすふたつの「ファミリー」が家賃を設定し、何十万という市井の人びとを締め出している。

こうして、都市を縦横に走る小型バス交通網が誕生した。

12人が着席し、5、6人は立って乗車する。この「マルシルトタクシー」が、エキゾチックな名前の途方もなく遠い郊外まで走っている。

仕事のために月400ドルのワンルームを借りる余裕など誰もない。仕事が終われば、苦痛に満ちた長い待ち時間が始まる。

ときには、家に帰るために、80、90人が列を作ることもある。
1時間半待って、1時間半バスに乗る。

これでは実質、仕事のために生きているようなものだ。

「ウクライナ・ノート」より

ここですでに(2)〜(6)で後述するウクライナ社会の諸問題がいくつか顔を出している。

  • 2大マフィアが不動産業界を支配=寡占支配。

  • 住宅価格が市場原理やフェアな競争で決まらない。寡頭支配者が不当に値段を高く設定している

  • 法律や司法はそれを取り締まらない=「法の支配」が機能していない。

  • 地元民は家賃が高くて都心部に住めない。

  • 郊外の安い家賃の家から片道1時間半かけてバス通勤。

  • 鉄道、地下鉄など社会資本が未整備。バスの待ち時間が1時間半。

●1990年代はソ連時代の4割にまで低迷


次のグラフはソ連時代末期の1990年を100とした時のウクライナの実質GDPの推移。一度もソ連時代を回復できないまま、4〜6割を低迷している。

「ウクライナを知るための65章」(明石書店)掲載の数値より作成。

●信用格付はずっと「投資不適格」

「ムーディーズ」「スタンダード&プアーズ」などの格付け会社は世界各国の信用格付(クレジット・レーティング)を公表している。「ムーディーズ」の場合、1年以上の長期投資のレーティングは最低「C」から最高「Aaa」まで21段階がある。

ここでもウクライナへの評価は厳しい。1998年から2022年に至るまで、ウクライナの信用格付はずっと21段階中、下から3〜8番目を推移している。一度も「投資適格」(上位10番まで)に入ったことがない(下は2022年の3社レーティング)。

"Trading Economics"  Ukraine Credit Rating

上記記述は "Trading Economics"  Ukraine Credit Rating に依拠。

●32年間続くロシアとの紛争・政治の混乱

なぜウクライナ経済は低迷を続けているのか。独立後のウクライナを悩ませ続ける問題点を列挙してみよう。

  1. エネルギー輸入をロシアに依存している。

  2. 農業・鉄鋼・石炭など主要産品に国際競争力がない。

  3. 政治・政府の混乱が続いて政情が不安定。

  4. 不安定さゆえに外国資本が投資を忌避した。

  5. 政府・行政・官僚の腐敗。

  6. 少数の富裕な経営者(オルガルヒ)が産業と富を独占。

1)エネルギー輸入の大半をロシアに依存。
→天然ガス、石油などエネルギー源をロシアに依存してきた。
→そのロシアと「脱露入欧」路線をめぐり対立・紛争。
→2014年の第一次ウクライナ戦争(『クリミア半島危機』)以後はロシア産エネルギーから離脱を図る。
→ロシアはウクライナを迂回して欧州にガスを売るパイプライン「ノードストリーム1」を建設。
→パイプライン産業収入の約25億ユーロ=3519億円を失いウクライナ経済に打撃。

そもそも、石油や天然ガスといったエネルギー資源がなければ、電気が起こせない。鉄鉱石が埋蔵されていても、電気やガスがなければ、製鉄炉や鉄鋼プラントが動かない。製品にできなければ、輸出してお金(外貨=ドル)を貯めることもできない。ウクライナに限らず、一国の経済が立ち行かなくなる。石油やガスが国の存亡にかかわる「戦略資源」「戦略物資」と呼ばれる所以である。

ウクライナ国内でも石油・天然ガスは出る。しかし石油は国内需要の37%、
天然ガスは33%しかまかなえない。第一次ウクライナ戦争前まで、ウクライナは需要の70%以上をロシアから輸入していた(2013年12月 ATOMICA)

ソ連時代は、ロシアもウクライナも同じ「ソ連国内」である。国内(ロシア他)で生産されるガスがパイプラインで安価に支給された。しかしソ連が崩壊しロシアは「外国」になった。ガスもお金を払って「買う」ことになった。ロシアも「国内価格」ではなく「国際市場価格」に値上げを求めた。

<ロシア産天然ガスの価格例>
2005年4月の契約更改交渉でロシア側はウクライナ政府に

現行50.0ドル

160.0ドル・さらに230.0ドル

へ値上げを要求。後述する「第一次ガス紛争」と呼ばれる紛糾の末、2006年1月に95ドルで決着。
(1000立法メートル当たり).

→2021年7月12日 国際環境経済研究所「欧州ガスパイプラインの歴史的背景その3」三好 範英より。

ややこしいのは、ロシアが欧州に天然ガスを輸出するパイプラインの動脈がウクライナを通っていることだ。ロシア産の対欧州ガス供給のうち、約80%がウクライナを経由していた。ロシアが払う「パイプラインの使用料」がウクライナの大きな収入源だった。

ウクライナのGDP
農業:12% 工業:28% サービス産業:60% (2018年)


ロシアがウクライナに支払うパイプライン使用料=パイプライン運営産業の収入は「サービス産業」に入る。
アレクサンドラ・グージョン「ウクライナ現代史」河出新書より。

●IMFなど海外からの融資や援助で息をつく

 ここまで述べただけでもウクライナ経済がヨレヨレであることは如実にわかる。それでも「国家破綻」(デフォルト宣言)を回避できてきたのは、IMF(国際通貨基金)はじめ海外からの融資や政府間援助などの注入があったからだ。大きなIMFの融資は次の通り。

2008年 サブプライムローン危機:
IMFに援助を依頼。164億ドルの融資受入。
2014年 第一次ウクライナ戦争:通貨価値下落。
再びIMFに融資を依頼。4年間で175億ドル支援を受ける。アメリカ・EUも数十ユーロを融資。世界銀行や欧州の銀行からも支援。
2020年 コロナウイルス流行:
IMFの緊急支援。18カ月間で55億ドル。

しかし融資とはつまり「借金」である。債務が膨れ上がってGDP(一国の生産能力)の8割にまで迫った。「危険水位」であることはいうまでもない。

2008〜2020年のIMF融資の3回合計額は394億ドルである。1997年に経済危機に陥った韓国へのIMF融資額が195億ドル(2001年に全額を返済)だったことと比較しても、いかに巨額かわかる。

●借金がGDPの約8割に

次のグラフは、ウクライナのGDPに占める債務の割合だ。2014年の第一次ウクライナ戦争以後、収入(GDP)に対する借金(債務)の割合が約80%に急増している。理由は次の通りだ。

①鉄鋼・石炭など輸出品の産地である東部・ドンバス2州の分離独立にロシアが軍事介入し、ウクライナ政府がドンバスの支配を失った。石炭・鉄鋼産業を喪失。
②ウクライナ政府がドンバスを経済封鎖した。貿易途絶。
③経済制裁と報復の応酬でロシアとの貿易が急減した。

(Stastica; Ukraine: national debt in relation to gross domestic product GDP from 2005 to 2021)

 2020年のコロナ流行をIMF融資で乗り切り、2021年にようやく債務が約48%に減ったと思ったら、今度は2022年2月24日にロシアが軍事侵攻(第二次ウクライナ戦争)してきた。

1997年にIMF管理化に入ってから、2001年に全額を返済するまでの韓国では、GDP額に占める政府総債務残高の比率は14〜17%である。ウクライナの50〜80%という数字がいかに危険であるかわかる。

●格付けはずっと「投資不適格」

格付け機関「スタンダード&プアーズ」は同年7月、ウクライナ国債の格付けを「CCC+」から「CC」に引き下げ「事実上のデフォルト」と評価した。

ウクライナに対する債権者は同年8月、戦争を理由に債務200億ドルの2年間凍結を宣言。かろうじてデフォルト宣言は免れた。しかしウクライナ経済は実質的には破綻状態だ。

●IMFやEUは市場開放や汚職撲滅など国内改革を要求


IMFは融資の条件として、ウクライナの政治・法律・経済構造の改革を要求している。例えば

  • ガス産業や農業の市場開放

  • 汚職撲滅

  • 法体制の改革

など。これは次に記述する(2)〜(6)の改善を求めたものだ。これに応じてウクライナが実行した改正は次の通り。

・「農地市場法」:農地の売買を禁止する法律を終了=農地売買の自由化。
・「銀行法」:国有化された銀行を元の所有者が買い戻せないよう禁止。オ  ルガルヒの金融支配を防ぐ。
・エネルギーへの政府助成金引き下げ=ガス代急騰し国民生活を直撃。

 なぜIMFはこうした「国内改革」を要求するのか。経済にワイロ・コネ主義やオルガル匕支配がはびこり、放置されたままでは、いくら資金を融資しても、またいつか経済成長が止まり、財政が破綻するのは明白だからだ。

これはEUが加盟条件として加盟準備国に要求する基準とほぼ同じである1993年にコペンハーゲンで開催された欧州理事会で示された加盟基準なので「コペンハーゲン基準」という。

1)政治的基準:民主主義、法の支配、人権、少数民族の尊重と保護を保障する安定した制度を有する。
2)経済的基準:機能する市場経済と、EU内での競争圧力と市場の力に対処できる能力を有する。
3)EU法体系 全体を受容する。

現在はさらに次の2項目が追加された。

4)新規加盟国としての義務を完全に履行できる行政能力を有する。
5) EUが効率的に機能し発展できる能力を維持する。

反対にいえば、こうしたIMFやEUが求める国内改革を達成しない限り、ウクライナ念願のEU加盟はいつまでたっても実現できないことになる。

2)農業・鉄鋼・石炭など主要産品に国際競争力がない。
→もともと、鉄鋼・化学肥料などの付加価値が低い製品がウクライナ経済の主力産品である。加えて、ソ連時代から生産施設や流通がほとんどアップデートされていない。社会主義時代の需要に合わせた工業製品が時代遅れになった。輸出しても価格が低い。

第二次世界大戦のころ、ウクライナはその豊かな穀物生産で「ヨーロッパのパン籠」と呼ばれた。今も小麦、砂糖大根、ヒマワリなどの産地である。

しかし、近年は欧米日はウクライナの小麦をほとんど買っていない。買っても家畜用飼料に使われる。欧米日で食用に供するには小麦のグレードが低いからだ。現在、ウクライナ小麦の輸出先上位は①エジプト②インドネシア③バングラデシュである。

BBC 'Ukraine war: Four more grain ships leave Ukraine as hopes grow for export stability,'
7 August 2022)

ウクライナの穀物は黒海を経由して船舶で輸出されていた。そのルートが第二次ウクライナ戦争でほとんど封鎖されてしまったため、欧州の陸路を使った輸出ルートを同国は作ろうとしている。

農産物にせよ工業製品にせよ、ウクライナ産品は「生産者→顧客」に製品を届ける「サプライ・チェーン」が未整備である。これも国際競争力の足を引っ張っている。

3)政治・政府の混乱が続いて政情が不安定。
→親露政権と脱露政権が入れ替わる。政策が4〜5年で二転三転する。
→国内世論が脱露地域と親露地域で正反対に分裂する。
→政党が乱立し離合集散を繰り返す。
→大統領と首相が対立する。
→政府が経済運営に注力できない。

4)不安定さや汚職を嫌う外国資本が投資をためらう(上記レーティング参照)。
→ 外国企業の資本や技術が入ってこない。
→経済成長をスタートさせる初期資本がない。
→経済のテイクオフができない。

5)政府・行政・官僚の腐敗
→病院や学校、役所、警察など行政機構の末端までワイロやコネが横行。
→司法はそれを取り締まらず放置。
→「法の支配」が機能していない。
→ワイロを払える金持ち、有力者にコネのある人が得をする。

政府の腐敗や汚職を監視する国際NGO”Transparency International"の調査によると、ウクライナ政府の透明度指数(Corruption Perceptions Index)は100点満点で32点。調査対象180国中で122位である。

6)少数の富裕な経営者(オルガルヒ)が産業と富を独占。
→経済力で政治に影響を及ぼす。
→自らも閣僚や大統領。首相になる。

次の表・グラフは「上位五十人の富裕者がGDPの何割の富を独占しているか」の割合だ。アメリカ:4%、ロシア:16%に対して、ウクライナでは46%にも及ぶ。

( Ukrainian Week 'A Plea for Change Transition from oligarch economy to EU membership for Ukraine,' October 8, 2014.)

●ソ連時代はロシアに次ぐ第2位

 ウクライナは、かつてはこうではなかった。1991年12月にソ連が崩壊、ウクライナが独立を達成した時点で、ウクライナは人口・工業・農業生産でロシアにつぐ旧ソ連内では第2位の存在だった。

1991年の時点でソ連の経済指標のうち、ウクライナが占める割合はこうだ。

  • 人口18.3%

  • GDP:14.5%

  • 鉱工業生産:16.7%

  • 農業生産:20.7%

本欄で何度も述べたように、ウクライナには穀物生産に適した肥沃な黒土に恵まれた広大な農地がある。石炭・鉄鉱石といった天然資源にも恵まれていた。帝政ロシア〜ソ連時代、ウクライナ東部には鉄鋼業を中心にした重工業地帯が築かれた。

冷戦時代は、ウクライナはソ連の軍需産業の拠点でもあった。

ドニプロペトロウシクは)ウクライナ東部にある人口120万人の都市だ。冷戦期、ソ連製のミサイルはすべてここで作られていた。通称「ロケット・シティ」。21世紀に入るまで、この都市に外国人は立ち入れなかった。

前出「ウクライナ・ノート」花伝社


ウクライナが ソ連を離れ、独立しても経済的に自立していく自信があったとしても不思議なことではない。

その夢と希望にあふれた独立がどうして暗転したのか。後編で時系列で見ていく。

(2023.1.23 東京にして記す)

<注1>今回も戦争という緊急事態であることと、公共性が高い内容なので、無料で公開することにした。しかし、私はフリー記者であり、サラリーマンではない。記事をお金に変えて生活費と取材経費を賄っている。記事を無料で公開することはそうした「収入」をリスクにさらしての冒険である。もし読了後お金を払う価値があると思われたら、noteのサポート機能または

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<注2>今回もこれまでと同様に「だからといって、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を正当化する理由にはまったくならないが」という前提で書いた。こんなことは特記するのもバカバカしいほど当たり前のことなのだが、現実にそういうバカな誤解がTwitter上に出てきたので、封じるために断っておく。





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