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いま読むしかない三島~『春の雪』(豊饒の海)5月の読書記録

これまでの人生で、他の人に三島由紀夫の本をすすめられたことが3回あります。

最初の出会いは、高校生のとき。
クラスメイトが三島由紀夫の『春の雪』が面白い、とすすめてくれました。頭脳明晰な彼女がおすすめする本、是非読んでみたい…と思って図書室へ向かったのですが、あまりの分厚さに恐れをなして、結局手に付けずじまいでした。だって、これ、これだけで1巻目でしょう?無理無理!って思っちゃいました。

2回目の出会いは、社会人になってから。
底抜けに明るい、カラッとした湿度のない春の日のような性格をした同僚と本の話になったとき。「一番好きなのは三島由紀夫。実は私、卒論も三島だったんだよね~!」とあっけらかんと話す彼女と三島のイメージが結びつかず、興味は持ちましたが、結局その時も読まずじまいで…。

3回目は、このnoteで。
nakazumiさんのこちらの記事を読んで「読んでみようかな?」と、やっと背中を押されました。(nakazumiさんありがとうございます!)

こちらの記事に触発されて、他の方も『春の雪』について書かれていた記事があったので、本を読む前にそちらの記事も読ませていただきました。
(記事を引用することはしませんでしたが、どれも素敵な記事で「私もこんな感想文が書きたい~!」と思いました。)

『春の雪』は、侯爵家の息子松枝清顕と、伯爵家の令嬢である綾倉聡子の禁断の恋、そして、その破滅的な結末を描いています。

とにかく三島由紀夫の表現が美しいです。

正直、見慣れない熟語も結構出てくるので読みはじめは辞書を引きながら読んでいたのですが、もう、その時間すらも惜しいと思うくらい面白く、そして美しく、この世界観に身を委ねるべしと思ったので、辞書を引くのは途中からやめにしました。

個人的に、清顕は自己中でナルシストで器の小さい男だと思いますし、聡子も聡子で、こんな清顕になぜ惹かれるのか…何がいいのか…といち読者としては思ってしまいます。途中まで聡子の使用人である老女、蓼科への扱いがあまりに不憫で同情を禁じえなかったのですが、なんというか全然、同情すべきキャラクターではありませんでしたね。開き直ってるし。びっくりした。そりゃ『咲いたあとで花弁を引きちぎるためにだけ、丹念に花を育てようとする人間のいることを、清顕は学んだ。(『春の雪』より引用)』ってなるわ。
2人の若者の結末を聞いて、蓼科はどう思ったんだろう。

緻密な筆致でじわじわと破滅に向かっていく感じ、読んでいてぞくぞくしました。

文庫本の解説によると、『春の雪』は『豊饒の海』四部作の一番最初の巻で、これ以降『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』と続き、『春の雪』で登場した清顕の学友である本多重邦が最後まで登場するとか。主人公である清顕が、姿を変えて(転生して)登場するようなので、続きも読んでみたいと思います。

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