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【コーリン鉛筆工場見学】タイの定番色鉛筆・COLLEEN PENCIL工場へ行ってきた

タイに行くたびに感じるのですが、タイという国はアートに対して非常に寛容です。

あちこちで若い子達がスケッチに励む姿を見たり、有名なアーティストが絵を描いた廃屋の壁が点在していたり、文房具店では画材系の占める割合が大きかったり。

そういった風土が生まれ育ってきた背景にはカラフルな南国の草花や寺院に囲まれていること、そして多色展開の色鉛筆に小さな頃から触れているからなのではないかなと思うようになりました。

お土産に持たせて下さった
72色セット

そこで、タイでは知らない人がいないほど有名な色鉛筆メーカー【コーリンペンシルタイランド】の工場へ行ってみたくて、アポを取って見学させて頂きました!(ちなみに会社とは全然関係なく自分の興味のためだけです笑

少し長文になりますが、ぜひ最後までお付き合いください。

コーリンペンシルって?

コーリンペンシルの前身は、かつて日本にあったコーリン鉛筆です。
鉛筆の需要が減り、東京の下町にあった鉛筆工場は次々と工場を畳み、コーリン鉛筆も例外ではありませんでした。

その後、従業員のひとり・井口さんが、タイのサムットプラカーンで色鉛筆を作る工場を立ち上げ【コーリンペンシルタイランド】を運営しています。(正確には井口さんは社長では無いのですがその説明は省きます)

今では、タイ国内の三大色鉛筆メーカーのひとつとなっています。

タイの大手文房具店では一面展開されているくらい、需要があり認知度が高いメーカーです。

側面全部がコーリン色鉛筆

色鉛筆は芯がキモ

こういうペン形の画材はその書き味の特徴を保ちつつ、その国の気候に合ったものでないといけません。

芯の素を作るライン

例えば、クレヨンはワックス量が多いので常夏のタイではちょっと外に置いておくだけでもドロドロになってしまいます。

芯の材料を混ぜる工程
3回繰り返し均一にします

色鉛筆も同様で小さな子どもでも描きやすい、折れにくくて柔らかい硬度、描いていて楽しくなる発色の鮮やかさを実現しつつ、ワックスと顔料の配合を考えなければならないのです。

そこがこのコーリン色鉛筆のすごいところだと思います。

どうやってできるか見てみよう!

色鉛筆を作る工程は、実は日本でもあまり変わりはありませんが、せっかくですから私と一緒に見学してみましょう!

まずは溝が入った板から始まります。

板は海外から仕入れているそうです

木工用ボンドを全面に塗った板に芯を入れていきます。

芯を入れた状態がこちら。

お菓子みたい

開いてみるとこんな風になっています。

ボンドが乾いたら、一本づつ切り離していき、表面を削り整えます。

次は一番外側の色を塗る前に下地を塗ります。

この写真のようにシリコンの穴を通しながら塗料を塗るのですが、通常は3回、木目地の状態によってもう少し多く塗布する時もあります。

おーなるほどーってなった

下地が塗れたら一番外の色を塗布します。

仕組みは下地を塗る時と同じ原理ですが、ここは暑さによってインクの出方が異なるので日々調整しながら塗るそうです。

塗り終わって乾いたら、色鉛筆の両端をカット。

工場を畳んだ日本の
鉛筆メーカーからやってきた機械

井口さんがカット前とカット後を並べて見せてくれました。
すごく良く分かりますね!

わかりやすい!

コーリン色鉛筆と言えば、一本に二色ついている色鉛筆も有名です。

並んでる画がいい

こちらは表面の色付けはUVプリントです。
機械の温度管理が難しいので冷房が効いた部屋で作業をします。

次にブランド名とカラー番号を箔押ししていきます。

多色展開のコーリンペンシルでは、色名ではなく番号で管理をしています。
なぜなら数字なら版代が少なくて済むから。

個人的には万国共通で色番管理ができるメリットもあるなと思いました。

これは408番色

色鉛筆本体製造としては最後のライン、色鉛筆の先を削ります。
コロコロと回転しながら、電動ヤスリを通って削れていく姿がなんだかかわいらしくて動画を撮ってしまいました。

実はこの間には芯を押し出してから、乾燥させる作業があるのですが、曲がらないように乾燥させる技術は社外秘のため写真はありません!
これなしでは、コーリンペンシルの品質の良さは語れない所なのです。

さてさて、ここから大詰めですよ。

これは色鉛筆の検品作業です。
この谷になっているところに良品を置いていくのですが、詰んだ高さによって本数が数えられるようになっています。

上にシールが貼ってあるのがかわいい!作業している人が貼ったのかな?

撮影するねとスマホを向けたら
台に置いてあったおやつのフルーツを
慌ててどけたのが愛らしかった

検品が済んだら箱詰め作業です。
ほぼ全ての商品が手詰めなんですよ。

ジャラっと色鉛筆が出てくる様子が虹が生まれるみたいで美しい!

2色の方も一箱づつ手で詰めていきます。

これは子供達が盛り上がる
色合いだなー

そして、出来上がった色鉛筆たちはタイ全土に運ばれていきます。

この写真に見えているものが全て一日で出荷されていきます。
文房具店だけでなく、学校などにも納品されていくのです。

すごいパレット数です

私自身色鉛筆の生産現場を見たことが無かったので、純粋に学びになったこともありますが、ラインを回りながら従業員の方へ気さくに声をかけている井口さんを見ながら、人のつながりをとても重要視してらっしゃるんだなと感じましたし、とても愛されているんだなと感じました。

様々な縁が繋がっていること

工場見学後、事務所に戻ってから今の会社に転職した経緯、タイがきっかけで仏教美術を学ぶために通信大学で学んでいることをお話ししました。

井口さんは上座部仏教にも詳しく、色んなことを教えて頂き、個人的な学びにもなりました。

そして、この近くに良い寺院があるから帰りに寄ってみては?との提案まで!

しかし、工場のある場所は公共交通機関で行くのが難しく、タクシーを往復チャーターして行ったので予定変更出来るか悩んでいたら、井口さんがドライバーさんと交渉してくださいました。

その後、その寺院で涙が出るくらい素晴らしい体験をしたのですが、それはまた次の機会に。

今の会社に転職したから文房具に興味を持ち、文房具をもっと知りたくて井口さんに連絡を取り、おすすめしてもらった寺院で仏教美術を学ぶ原点に立ち返る、という一連のご縁に感謝しかありません。

みなさんももしコーリン色鉛筆を見かけたら、こんな風に作られているんだなぁと思い出してくれたらうれしいです。

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