形のないものを提供してお金を得るという事、そして正しい行為でお金を得るというい事

私が鍼灸マッサージ業界に入ったのは1997年(に日本の鍼灸マッサージ学校に入学)のこと。当時は「どんな病気や痛みも鍼一本で治してやるぞ!」という意気込みで日々勉強と治療院での修行に励んだものです。

しかし2015年あたりから鍼灸マッサージが病気や痛みの治療に効果があるかどうかのエビデンスが様々なSNSでシェアされ目に入ってくるようになり(私は英語で読んでいるからです。日本語では私のブログ以外はほぼそういう情報は出回っていません)、そして自分が過去治療に携わった患者さん(という言い方は私は医者ではないので本当はふさわしくありませんが)の治療後の経過を注意深く観察(★)するようになってからは、「よっしゃ!ワシがあんたの病気や痛みを治したる!」という態度は一切止め、あくまでも痛みの科学や治療のエビデンスに基づいたアドバイスと、気持ちのいいマッサーの提供を心がけてここ数年はやってきました。(★鍼灸マッサージ師整体師達は自身が施術した患者さんがその後どうなったのかを深く観察していないので、自分が治した!と悦に浸っているのです。この事に関しては別のブログで取り上げています。)

鍼の治療効果がほぼゼロというのは過去のブログで紹介していますが、マッサージ業界に蔓延る数々の嘘情報はこのサイトで簡潔にまとめられています。ちなみにその嘘情報の一部を紹介すると

・マッサージは血流をよくする
・マッサージは免疫力を上げる
・マッサージはデトックスになる
・マッサージは遅発性筋肉痛(DOMS)の治りを早くする
・マッサージは凝っている筋肉をほぐせる

などです。どれもあなたがかかっている鍼灸マッサージ整体の先生の口から聞いたことがあるでしょう(笑)。

ぜーんぶ嘘です。


他にも鍼灸師、マッサージ師、そしてとくに整体師が言いがちなのことが

・体(関節)の歪みやズレが痛みや病気を引き起こす

です。そしてそれらを治すがごとく施術をしますが、

それも全く根拠のない嘘です。


詳しい情報は数多くの論文やサイトで紹介されていますが、代表的なものとしてこのサイトがあります。またyoutubeで「代替医療の嘘」を徹底的に追求しているDr. Hallのレクチャーがあります。お時間のある方は見てみるといいでしょう。


上のような事を口にする治療師がいたら、勉強不足か、知っててやっている詐○師のようなものです。注意しましょう。(多分99%が前者だと思われます。)



ということを書いてきましたが、実際に来る患者さんたちは何かしら「筋肉が硬い、凝っている」「関節が歪んでいる」ということを言われたがっているように思えて仕方ありません。そして「どれだけ通えば治るのかが知りたくて、どれだけ通ったらいいかを言ってほしい」と思っておられる方々がほとんどのように感じています。(この事についても過去のブログで触れています。)


私は自分にも患者さんにも嘘はつきたくないので、正しい情報だけを伝えていますが、そうするとどうも患者さんのリピート率がよくない(笑)。

っていうかリピートしなくていいように、患者さん自身が自分の痛みを管理していけるような情報を伝えてはいますし、それとともに純粋にマッサージを楽しんでもらえるためのサービスの提供のつもりではいるのですが。


しかしマッサージという「形のないもの」にお金を使ってもらえることがどれだけ大変なことか、ということをここ数年感じています。もしそのマッサージが「医学的治療」とも呼べるようなものならいざしらず、そうではないからです。極論すると、「ただ単に気持ちよく揉んでもらってスッキリした」ということだけのためにお金を頂戴しているのです。


5年位前からロンドンのビューティークリニックの一室を借りて施術も行っています。そのビューティークリニックにはネイルをやるスタッフもおり、お客さんとしてはネイルという「形として残るもの」にお金は喜んで払える。レーザーや超音波やセルライト取りのようなとても高価な機械を使ったサービス(これも形=脱毛、セルライト取り、シワとりなどとおいう形に現れます)にもお金を払える。


しかしマッサージのような揉んでもらって気持ちいい、リラックスした、軽くなった!という”だけ”のサービスにマニキュア・ペディキュアと同等か、もしくはそれ以上のお代金を求める、ということに非常に責任を感じている今日この頃でもあります。


もう一度繰り返しますが、この業界(鍼灸・整体・マッサージ)は医療サービスの一部として、つまり医学的、科学的エビデンスに基づいた施術とアドバイスというものに裏付けされていると「思われていたからこそ」、数多くの治療師が存在し、お金を稼いでいっているわけです。


しかし近年欧米で盛んに見直されてきた「科学的エビデンス」とそれに基づく治療という観点からすると、それら鍼灸・整体・マッサージ業の方々はエビデンスで完全に否定されている事柄を用いて、謳い文句に使ってお金を稼いできているわけです。


私は残念ながら(笑)、そういうことに他の治療師(これは日本人だけでなく全世界の治療師も含む)にいち早く気づいてしまったのです。


ところで先日FBの某グループで上にあげたブログをシェアしました。するとあるマッサージ師が「そのブログで言われているマッサージ業界に蔓延る数々の嘘情報が本当かどうかは別として、私の患者さんは皆満足しているから、その情報が嘘かどうかには興味がない」と書いていました。私はそれに反論はしませんでしたが、反吐が出るようなコメントだと感じました。例えば、ある医者が処方していた薬が実は副作用があるとわかった、または中身が違う薬だった、と後日わかったとして、それでも患者さんたちには効いているから処方し続けるかというと、おそらく99%の医者は処方しないでしょう。


そのマッサージ師は自分が患者さんに言ってきた事、行ってきた事が嘘だとわかれば、以後そういう発言をすることは慎むべきです。少なくとも私はそう思います。


いつも通ってきてくださるクライアントの方々には感謝しかありません。また過去に一度きり来てくださった方々へも同様です。


少なくとも他の鍼灸マッサージ師達とはあらゆる意味でレベルの違うことを行っているという自負はあり、これからも精進していくつもりです。マッサージという「形のないもの」にお金を使って頂いて本当にありがたく思っています。

これからもよろしくおねがいします。






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