「裏金」反映後の政治資金収支報告書は特別監査すべき

国会議員関係政治団体に義務付けられている政治資金監査では、支出の妥当性の判断は行わないし、領収証やそれに代わる書類がなくてもその旨が監査報告書に記載されるのみ。また、残高・繰越額の確認もないし、そもそも収入は監査対象外。かつ収支報告書の訂正について監査は推奨されるが義務ではない。

だから、裏金が不記載だった収支報告書を訂正したと言っても、その訂正が妥当なものであるか、本当に適正に使われたのか、雑所得に当たらないのかは、政治資金に係る制度上はチェックされない。税務署が目を付けて調査に入るしかない訳。

政治資金監査で使途の妥当性判断をしないのは、政治活動への過度の制約にならないよう、公開を通じて、支出が妥当であるかの有権者のチェックに晒すという建前があるから。でもそれでは今回のような場合、結局は個々の議員に関して税務署が動くかどうか次第になってしまう。

例えば、妥当性が疑われる支出については、監査人がその旨の意見を監査報告書で表明するというところまでは踏み込んでいいのではないかと考えるし、収入の監査も行いその実体があるのかの確認は最低限必要ではないか。残高確認も同じ。

そして裏金議員の政治団体については、それを先取りした特別監査を自民党の責任において実施し(監査人は同じく弁護士、公認会計士又は税理士)、監査人が疑義を表明した支出に相当する金額については雑所得としての申告・納税を総裁が指示又は勧告するぐらいの踏み込みが必要。

そうでないと、裏金に係る納税の是非についていつまでも「個々の議員の責任において適切に判断」という話に終始し、忘れられた頃に一部の議員に対して税務調査が入ったというぐらいのことにしかならない。

「岸田総理は、派閥からの資金を個人で受け取った議員は確認されていないので、課税対象となる議員はおらず『納税は促していない』と説明」 。裏金の経緯解明、責任追及はもちろん重要なのだが、同等に重要なのがその裏金の行方。自己申告ベースで幕引きは許されない。上で書いた通り、党として特別監査をして勧告をすべき

政治資金の透明化は政治家が不明朗な形で利得したり利益提供をしていないかを有権者がチェックできるようにするもので、使途の妥当性の判断は有権者が行い投票行動に反映される建前。裏金問題は未だ経緯の判明しないお金が収支報告書に記載されていなかった問題。記載して後は判断してくれでは不十分。

政治資金は所得とみなされず、政治資金パーティーはそのようなお金を集める、政治家ならではの手段。しかも今回は派閥というものが乗っかって、不明瞭な資金の流れがあった問題。そして、政治資金報告書は公開等の措置があるとは言え、企業の財務諸表・会計帳簿よりはるかに簡易なもの。

企業ならば、経費に当たるのか報酬・給料とみなすべきなのか、監査でも税務署でもチェックを受けるし、しばしば争いとなる。政治資金は、政治資金監査が入る場合でもそこは見ない。税務署が入り得るとは言え、基本的には有権者の目に晒して政治的な責任が問われるもの。裏金がその建前でいいのか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?