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アートの探索読者の皆様にお知らせ

アートの探索をご購読いただいた皆様。いつも拙文を読んでいただき、ありがとうございます。

今日はこちらで、「アートの探索」マガジンの廃刊をお知らせさせていただきます。2024年1月をもって、本マガジンを停止させていただきたいと思います。これまでご購読いただいた皆様に感謝と、廃刊に至った心の経緯を書かせていただきたいと思います。

この一年の経緯

このマガジンで日々の出来事や考えを書き出し、それを誰かに読んでもらえることは、ぼくの生活を励まし、日々変化する仕事に挑む勇気になっていました。好きではじめたマガジンであり、ご購読いただいている皆様の暮らしや仕事に少しでもいい風が吹けばと思いながら日々キーボードを叩いていました。

しかしながら、昨年5月から体調に変化があり、主にメンタル面で苦しい日々が続いています。マガジンを読んでいただいた方には伝わっていたかもしれませんが、育児に対して強く苛立ってしまうのです。苛立ちは睡眠にも響きます。メンタルクリニックにも通いながら、その苛立ちを家庭や育児への軽い適応障害によるものだと仮定しています。パートナーとも相談をしながら、さまざまな工夫とうまくいかなさのなかで毎日を過ごしています。

もちろん良い状態のときもあります。しかし、体調がよい日も、眠れない日も、苛立ちが体を突き抜けることが度々あります。予測ができません。そんなメンタル状態のなかで、このマガジンを続けることが難しいことは薄々気づいていました。

毎週金曜日もしくは土日にnoteを更新する。日記を日々したため、ときにまとめて数日分書き下し、タイトル、画像、ヘッダーを作って更新する。それだけのルーティンでした。ですが、その作業のことを耳と目の奥にしまいこんだまま、休日の家事や育児をどうにか区切りをつけ、慌ててパソコンの前に辿り着き、更新作業を進めようとする。このことが生活に少なからぬ影響を与えていました。

子どもたちも、5歳と3歳になり、自分たちで遊んでくれます。仲のいい姉弟でありがたいと日々思っています。しかしながら、まだ目を離した隙に喧嘩が起こり、やれ目に指が入っただの、箪笥の角に頭をぶつけただの、そんな日々はあと2~3年と続きそうです。そんななかで、どうにかこうにか折り合いをつけて毎週更新を続けてきたのですが、その作業はぼくにとって重たいものになってきてしまったのだとふと気がついたのです。

きっかけ その1

いつも焦ってnote更新の作業をし、同時に育児を煩わしいものだと感じていたことに気づいたのは、年末年始の冬休みでした。

ふと、デジタルデトックスをしてみようと思い、大晦日と三ヶ日はSNSの更新を控えてみました。見ることもやめました。noteの更新も断念しました。震災や飛行機事故のニュースはもちろん気になっていましたが、ブラウザで情報を取得していました。

そのような状態のなかで、子どもと関われる状態に、身体が変わるのを感じました。身体の前面に大きな余白がうまれ、そこで起こる子どもとの遊びの渦とも、取っ組み合いの喧騒とも、うまく踊れるようになったのです。

新しくクリスマスに買ったデュプロじゃない方の小さなLEGOで一緒に乗り物をつくったり、バラを折る方法を娘に教わりながら、折り目をつけて輪郭が目立つように折り紙をしたりしました。子どもたちも嬉しそうでした。そして同時にぼくも、ああできるんだこんなふうに、という自分の知らなかった姿を知ることができました。

この状態を簡単に維持することはできないと思います。noteのマガジンをやめたとしても苛立ちはまた襲ってくるでしょう。しかし、ひとつでも自分の目や耳の奥に詰め込まれたタスクを軽くすることで、目の前の子どもやパートナーとうまく踊れるのなら、今はその状態を目指した方が良いと判断しました。ご購読いただいていたみなさまには、勝手な判断であることを申し訳なく思っています。

きっかけ その2

もうひとつ止めることを決意したきかっけがあります。それは新しい連載を始めたことです。

「同じモノを見る」というタイトルで始めたマガジンは、ぼくのアート教育事業の経験、赤ちゃんの本を執筆した経験、組織づくりや人材育成の経験、対話型鑑賞の経験、それらすべてを一つのテーマに集約できると感じ、はじめたものです。このマガジンに力を注いでいくためにも、今までやってきたことをひとつ止める必要があると感じていました。

このアートの探索マガジンは、2019年6月に開始し、今年で4年以上続けたことになります。4年という月日は簡単に重ねられるものではなく、その間に「対話型鑑賞イベント」を軸にしたこともありましたし、日記を軸にしたこともあり、運営方針をあれこれ変えながら続けてきました。その日々の記録を読み返すと、自分自身「面白いこと言ってるじゃん」と、励ましてやりたくなる気分になることもあります。

このマガジンをやめることに躊躇がなかったわけではありません。広く読まれることがない制限のついた空間は、普段は人に見せない絵を描いて見せるような恥ずかしさの少ない空間でした。その自由がぼくをこの4年ずっと励ましていたことは事実です。

ふりかえればこの4年は、組織づくりを実践しながら学ぶことで、子ども向けのアート教育の専門家から、子どもと大人に関わらず学習と創発のコミュニティをつくる専門家へとアイデンティティを変容させてきた4年間でした。その間、ずっと煮え切らない経験と思考の断片を、このマガジンのなかに置き続けてきました。

そのような生煮えの断片が、星座のように線を結び、「同じモノを見る」という一つのテーマにおぼろげに集約されたのは昨年の年末のことでした。

「同じモノを見る」マガジンに寄せて

「同じモノを見る」だなんて、自分でもなんて平凡な言葉なんだろうと思います。書いていることだって、誰にとっても当たり前で退屈なマガジンなんじゃないかと思います。エピソードで惹きつける色気もなければ、仕事や生活にすぐに役立つ実用性も乏しいように思える時もあります。ですが、ぼくは今このテーマについて書き抜くことで、自分をふくむ誰かの生を善きものにできると思っています。

この「同じモノを見る」という営みは、人間の認知や社会の課題の至るところに埋め込まれています。そして美術や演劇、文学の歴史と結びついています。この営みを仕事のなかでも生活のなかでも見出すことができ、学習や創発の技法を用いてこねくり回せるにオモチャになると思います。少しでも、日々の認知や人間関係の葛藤を以て遊べるようになるんじゃないかと、勝手な希望を持っているのです。

なによりそれは、子育てやパートナーシップに翻弄され葛藤のさなかにいる、自分自身に対して諦められない希望なのかもしれません。

だから、今年からはこのテーマにしばらく注力し、一度出し切って、書き切って、生煮えを煮尽くしてみたいと思うのです。そのためにこのマガジンを廃刊すること、わがままをどうかお許しください。

1月の連載予定

今月で最後になるために、このマガジンでは、4年間を大まかに振り返る投稿をしていきたいと思います。2019年から2020年、2021から2022年、そして2023年をふりかえる記事を書くつもりです。

未来に寄せた想いは、本日の記事に書かせていただきました。最後までお付き合いいただきありがとうございます。

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