世紀/冷戦/我が愛

遠目に見つめるエレガンスは天空。地上を這いつくばることによって私の美学はようやく成立するのだと信号機の真下でその混沌は言った。家のテレビの大画面でYouTubeを観る。出来れば20代の頃の貴女に会っておきたかった。人生において最ももったいなかったことの一つだ。最近は久しぶりに新幹線で遠くまで出掛けて野球を見て自然遺産で海鮮丼を食べたりパフェを食べたりした。吊り革にだらしなくぶら下がる男。永い修羅を過ぎ。安い洋酒を傾ける青褪めた吟遊詩人の憂鬱など君には一生わからなくていい。神経症。理性には限界があると零した唇の色。あれはぼくのマグダラ。時空を曲げて微笑むユリゲラー。なんの感情もなく愛してると囁く君のその何も見ていない瞳。睡蓮。もういないひとのポートレート。核弾頭発射のシーンを見て想い出すもの。彼にはその昔Don CaballeroとArt Blakeyの CDを貸したが返ってくる気配はない。タコベルの次は作り立てのピザをホテルの一室に持ち帰る。楽でいい。関係はないがそれなりに高いジャケットを購入した。正装。少しずつ作業を進めていく際のその過程が豊かだとまず思う。東京という街は素晴らしい。だって私がどこの誰だか誰にも分からないもの。雑踏に投げ捨てられたならば雑踏で飼われたい。幾重にも重なるメタファーは秒針と思考が鈍く進む間にまた出口を隠す。とりわけ好きな一文を小説から探し出すときの多幸感。今夜下水道に流れされていく無数のワンナイトの体液。黒いフードへと身を隠す。百貨店の地下に寄って買ったバゲットが青いリュックサックから顔を出している。そして券売機から吐き出される特急券。深夜に拙く揺れるハモンドオルガンの調べ。流し目で祭りの気配を見送る。たとえば掘り下げて体現するヒップホップは限界を知らず。姪の1歳の誕生日にあげるプレゼントを選びに近隣のトイザらスへ。巨大なショッピングモールの清潔な匂い。可愛いテディベアとレゴブロックをあげた。再開発が進む郊外のビーチバレー場で若い女性がボールに飛び込む様子を電車の窓から見ていた。あなたとわたしの間にある壁。それって平和のための?更に内側へと。ぼくにはそれは分からないという憎しみに似たあの感覚が起こる瞬間の滲み出るような貴重な恍惚をなぜかとても幸せに思う。それにしてもディケンズは偉大だ。話自体が摩訶不思議で複雑な分厚い層みたいだから。察した妙な気配は常に明るく。煙草を燻らせながらじっくりとその時を待つ。二人だけの国の幻想を実際に何年も続けた自分のことを誇りに思う。その繊細なパスタの茹で方と午後の日差しに揺れる枝葉の影。エスプレッソマシンの振動音とその哀しみ。何をするにもひたすらついて回る意味性について。悲喜交々。ねぇ巻き付く樹海の蔓はどんな肌触りがするの?他者を攻撃することで彼らは能動性を高めエネルギーを生み出しているんだと書いた手紙。正確に盛った毒の量。タイムラインは1秒ごとに真偽不明のあらゆる歴史修正主義的発想で更新され上書きされそして未来は生成されていく。云々。貴女の口は嘘だらけ。正しくはないけれど、とあえて前置きすることに何の意味が。空虚。隣の部屋からは最新型のWindowsのPCをカタカタといじる音が毎夜聴こえて何故かそれが私を安心させるのだ。バイオリズムの解析とその意図的操作について。並行世界とはつまり非同期のことではなかったか。想像力。無化されない今日が未来永劫続いていく。神の顔によく似てると口元の煙草を奪っては微笑む貴女。魂はずっと高貴なままで。それを誰かが永遠と呼んだよ。その秘密を何も掴めないようにとあの秘境の砂嵐はそっと君の存在を隠すだろう。ただひどく優しい人だけを集めたシェルターがあればいい。これは私だけの発案。洗面台でバファリン錠を飲み干して目頭を抑えて眠る君についての歌のこととか。久しぶりに街で見かけた彼女はカフェでA5用紙を捲って細いボールペンで線を引いていた。タートルネックの白いセーターが良く似合う。心の中でそっと「じゃあね」と呟けば横断歩道を渡りぼくは颯爽とホテルへと戻りスタンドライトの灯る部屋で妙に甘ったるくそれなりに美味しいコーヒーを啜った。君のくだらない愛の話。気分がいい。取り寄せたフルアコで慎ましく鳴らす9thのテンションコード。選ぶ弦はいつもリチャードココ。何故か優しい感じがするから。色んな人との関係性がトムとジェリーみたいになってて一人で笑った。ちなみに僕は後者派。デパートの書店で買った徹底的な非暴力主義についての本をだだっ広いダブルベッドで捲る夜。百万ドルの夜景をその瞳孔に揺らして。着々と準備を進める。ワイドショーの途中で唐突に入るニュース速報を確認すればそれが全ての合図だと知った。キリストとニーチェの両極の狭間で揺れる。天体の回る周期で閉じては開くを繰り返す魂の扉。アパートの3階の窓に揺れる朧げな満月の余韻。鬱血。夜は僕が守って見張って優しくそっと照らしてあげるね。隣り合って二人の相性を占えば吉と出た。愛、それだけ。祖父母の家から持ち帰った日本文学全集を読み漁る。物事の考え方の尺度のずれに相変わらず辟易したり笑ったり。

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