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写真展で写真を買った話

写真展で、展示してある写真を買った。
初めて「額装するような作品を買う」という行為をしたら、自分にとってものすごいブレイクスルーになったので、文章にしておこうと思った。

原宿で大好きなヒップホップグループ、舐達麻の写真展がやるというので「見に行く」という気持ちだけを持って行った。フォトグラファーのYuji Kanekoさんが1年間撮りためてきたグループの写真の展示。
いくつも見たことがあった彼の撮った舐達麻の「"サグい"かっこよさ」が時にひとさじのファニーさを加えてコントラスト強く切り取られている写真はどれもめちゃくちゃかっこよくて、白黒ときどきカラー、という展示の色味のバランスの良さも美しかった。

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額装された写真やプリントをそのまま壁に貼っている写真、たくさんの写真を眺めていたらふと「これは、買えるものだ」と気がついた。

こういった、展示してあるアートピースは私にとって「見るもの」であって、アートに造詣の深い人やイケてる人しか買ってはいけないのではないか?という思い込みをして生きてきた。でも、そんなことなくない?買う理由「好きだから」で良くない?私が買ってはいけない理由はひとつもないのでは?

置いてあるプライスリストを手に取って、展示してある作品と見比べる。大きい作品は10万円を超えていた。小さいものは6万円くらいから。私にとっては安いとは言い難い。プライスリストを握りしめ、写真を真剣に見比べて、ひとつひとつに集中して「これは、単体で見た時に"欲しい"と強く思うくらい好きか?」と自分に問うていく作業。いつのまにか緊張して口がカラカラに乾いていた。
同行していた彼氏が「買わせようとしているわけじゃないけど、こういうのって最終日にドッと売れたりするものだから」というような事を言っていて益々口がカラカラになってきた。
一旦持ち帰って検討しよう、とギャラリーを出て少し落ち着いたところで「やっぱり、欲しい」と思った。私も買っていいんだ!という発見と、とても好きな、大きな写真にまだ売約済みのシールが貼られていなかったことを思い出して。

ギャラリーに戻ってUGさんにおそるおそる「額装を、買いたい」という内容のことを伝えた(作品の買い方、わからなかった!)。何故か皆スルーする作品だが、彼もとても気に入っている作品で、撮影場所はもうなくなってしまったクラブなので似たものを撮ることはもうできないとの事だった。
名前や連絡先を紙に書く手が少し震えた。

カード払いも可能と聞いてカードを出そうとしたが、ふと「現金一括払いでドンといってみたい!!!!」という欲望のようなものが発動したため、その旨を伝える。それを聞いた彼氏が「ECDも同じような事を言っていた」というような話をしていて、石田さんと似た発想をするのは嬉しいな、と思った。

ギャラリーを出てATMを探す。足取りが軽い、ふわふわしている。テンパっていたらしい。「やったことのなかったこと」は30年以上生きているとやっぱりどんどん減っていくので、すごく新鮮な気持ち。暗証番号を間違えそうになるくらいにはドキドキした。

戻ってフロアのど真ん中でUGさんに現金ドン!をする。調子に乗ってこんな写真を撮ってもらうなどする。私のイキリ具合がひどい。

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私はそう遠くない場所に住んでいるため、少し経ったあと直接届けていただけるとのことで、作品を大切にされている方だな、と嬉しくなる。

神宮前の交差点、横断歩道をスキップで渡って帰るくらいにはとても晴れやかな気持ちで街をあとにした。大人の階段ってこういう種類のもあるのか!!!本当に好きになって欲しいと思った作品を買えるということか!!!人は自由!!!大人は最高!!!などとはしゃぎながら。

帰ってからもなんとなくSNSで展示の画像を見る。私が買った作品の端っこに赤くてまるいシールがついているのを見つけて嬉しくなる。私も、まるいシールをつけてもいいんだ!というのはものすごい「発見」だった。

「『すこし頑張れば買える好きな作品』を買える自由さ」はとても心をかろやかにしてくれる、ということを知ったので仕事、頑張ろう。と思った。

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