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インゴ・スワン「リアル・ストーリー」(7)

第1部:始まり 1919 ~ 1971年

第 1 章 私たちが巻き込まれた「状況」

私は、この本をどのように始めるか、そしてこの章を哲学的なテーマ、つまり私たちが巻き込まれた「状況 Circumstasnces」と、そのために私たちがどのような人生を生きるのかという説明から始めるかどうかについて、長い間熟考した。

これは一見してリモートビューイングの話からは遠く離れているように見えるテーマである。しかし、このテーマは今後の話にとって重要なものだ。

私たちは「状況」を当たり前のことだと思っているため、あまり深く考えることがない。一般にほとんどの人は、状況は自分とは別のものであり、状況を制御し管理できるかどうかは個人次第であると信じている。しかし、状況の力学を研究すると、状況には多くのレベルまたは階層があり、「ローカル(局在的)な」状況と「非ローカル(局在的)な」状況があることがわかる。

また、誕生した世代を超え、何百万もの人々をその影響に引き込む状況の連続性が存在することも示すことができる。これはほんの一例にすぎないが、何百万もの人々が巻き込まれる戦争の場合、その大半の人々は戦争に参加したくないし、戦争の影響で苦しむことを望んでいないだろう。

つまり、各個人は周囲の状況に関係なく自分の人生を自ら方向づける力を持っていると一般に信じられているにもかかわらず、その時代の状況に巻き込まれることは明らかである。これらの状況は人類の誕生以来ずっと影を落としており、恒久的な解決策はまだ見つかっていない。

多くの人が「状況」の中に吸い込まれ、自分の認識や反応の思考をそれに適応させてしまう。 ほとんどの人々は、自分で作ったわけではない環境に生まれ、何らかの形でその状況に適応することを学んでいく。

そして人々は意識的にも無意識的にも、自分よりも大きな状況の中にはまり込む。重要なことは、それがなぜどのように発生するのか、どのようにしてなぜさまざまな形式をとるのか、そしてなぜ人々がそのような状況に巻き込まれるのかを誰も知らないということである。

ここには大きな知識の欠落があり、研究する価値のある多くのことがある。 私自身、この「状況の性質」を精査し研究しようした人がいるかどうかを発見するために多大な努力を払ってきたが、この方向に沿った取り組みはこれまでほとんど行われていない。

これがリモートビューイングの話とどのような関係があるのかと疑問に思う人もいるだろう。しかし、この先の物語でわかるように、「リモートビューイング」はある特定の状況が生じたために生まれたものである。それらの状況が生じていなかったら、「リモートビューイング」も発生しなかっただろう。

したがって、このテーマを省略すると、リモートビューイングの実際のストーリーにとって重要な多くの基本的な背景が失われることになる。このテーマを扱わなければ、関係する状況やその中のプレイヤーという点で、物語はより「ローカル(局在的)」なものになってしまう。

「ローカル」な意味における物語は、メディアが「心霊研究」や「超能力スパイ」と揶揄するものに諜報機関が関与した1970年代に始まった。この状況は 1970 年代に特有のものであり、ある意味で不条理でバカげているように思われる。

リモートビューイングの重要な問題の一つは、諜報機関がなぜ超常現象に関与したのかということである。

アメリカの諜報機関のような社会の最も中枢的な機関が、なぜ現代の観点からは非主流的な事象に関与したのか。言い換えれば、なぜ諜報機関が現代の笑い者になる危険を冒したのかということが、リモートビューイングの核心にある問題なのである。

この疑問に対する答えは 1 つしかない。

状況、つまり一連の特定の環境の影響により、その関心が高まったためである。その状況が切羽詰まっていたため、通常は笑い飛ばされるような問題について、諜報機関が懸念を抱くようになった。さらに言えば、諜報機関は明らかにその存在を望んでいなかった「驚くべき事象」に巻き込まれたのである。

超能力の存在は、少なくとも西洋近代主義においては、非合理的で非科学的であるとしていとも簡単に隅に追いやられた。そのためそれについてはほとんど知られておらず、その存在は疑問視されていた。

しかしその後、西側のアナリストによって何かが次第に明らかになってきた。 彼らのほぼ全員が驚いたことに、二つの超大国のうちの一方が、「人間のバイオマインド」に関する真剣な研究を行っていることが判明したのである。考えうる唯一の目的は、それらを「実践的に利用する」ことであった。

ここで三つの状況が生じたのである。すなわち:
(1) 人類という種における超能力の存在
(2) ソ連がそれを研究していたこと
(3) これに対するアメリカ諜報機関の反応

アメリカの諜報機関は世界で最も強力な機関であり、私の知る限り、国家を防衛する義務を非常に真剣に受け止めている。もしソビエト連邦(またはその他の国)が何らかの形で「超常現象」の研究開発を進展させていたとすれば、彼らの為すべきことは明らかである。

この章で私が言いたいのは、諜報機関は自らが作り出したものではない一連の状況に対応したということである。この場合「対応した」とは「巻き込まれた」という言い方に等しい。

ある意味では、ソ連がこの状況を引き起こしたとも言える。だが一方で、人間のバイオマインドの超能力の存在に対する真剣な興味も存在したのである。

定義として、バイオマインドの超能力とは、目に見える時間と空間、物質とエネルギーを超越する、私たちの種に固有の認知能力を指す。

超能力の存在は近代以前の社会ではほとんど否定されていなかった。現代社会の超能力一般に対する拒否反応は、それ以前の時代の特殊な反動にすぎないようにも思われる。




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