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「宗教2世問題」について|第7回宗教マイノリティ理解増進勉強会【上】

4月27日に「宗教二世」をテーマに「第7回宗教マイノリティ理解増進勉強会」を東京都内で行いました。(宗教二世とは、特定の信仰や信念をもつ親・家族の元で育った世代のこと)

家庭連合(旧統一教会)からは「信者の人権を守る二世の会」の4人と大学生、青年、壮年、婦人ら計25人が参加、主の羊クリスチャン教会の中川晴久牧師、他の新宗教からご夫婦での参加も頂きました。

はじめに「二世の会」と私から「宗教二世問題」についてまとめた内容を発表。その後、参加者全員で意見交換をしました。

以下は「二世の会」の発表内容の要旨です。

「二世の会」の発表要旨

宗教二世問題とされる事柄

A男さん(二世の会、青年)
「宗教二世問題」と言っても、複雑でいろんな側面があり、大きく①精神的苦痛②経済的困難③社会的制約、の三点でまとめてみました。

「二世の会」がまとめた資料

精神的苦痛は、教義や信仰を強要されたとか、宗教的な虐待を受けて、ひどい場合には身体的な虐待になる場合もあるということです。あとは家族の悩みとか、相談できる場所や人がいない孤独感とかがあったりします。

経済的困難は、家庭連合の報道の中でよく言われてきた内容だと思いますが、多額の献金で家庭が貧しくて、進学や就職が制限されてしまったという声があったりします。

社会的制約は、飲酒、喫煙や輸血ができないとか、恋愛や結婚の制限、宗教活動をしていることで、他の活動ができないというようなことがあります。

この三つの中で最も大きいと言われてるのが、一番上の精神的苦痛にあたります。

ただ、精神的苦痛といっても、実際には信仰の強制や宗教的虐待などの悩みより、家族関係の悩みや人間関係の悩み、漠然としたメンタルの不調などが原因としては大きいと言われています。

「陽だまり宗教2世支援センター」のYouTubeチャンネルから

今回の資料をまとめるうえで、「陽だまり宗教2世支援センター」というエホバの証人の元信者の方が立ち上げた団体が、宗教の問題に対してしっかりとまとめて作ってくださってるので、そのYouTubeの動画を参考にさせて頂きました。

「陽だまり」の活動相談の割合として、半分ぐらいがエホバの証人(48%)からで、16%が創価学会。家庭連合は6%ということです。

「陽だまり宗教2世支援センター」のYouTubeチャンネルから

同じく「陽だまり」で行った別の調査では、アンケート1,131人が答えたうち428人が創価学会、170人ぐらいがエホバの証人で、家庭連合が47人ということです。

この団体自体が元エホバの証人の方が立ち上げたということもあるんでしょうけど、エホバの証人と創価学会からの相談が、宗教二世の相談の半数以上を占めているというところが、一つ特徴かなと思いました。

「陽だまり宗教2世支援センター」のYouTubeチャンネルから

「宗教二世問題は世代的に20代~40代が6割を占める」とありますが、20代は10%ぐらいなので、30代、40代で半数と見た方がいいのかなと思いました。

宗教二世のイメージとして、多額の献金によって家庭崩壊した、家庭連合の10代や20代の若い人たちが多く苦しんでいる、というのがあると思いますけど、実際は、宗教ゆえに親や社会と良好な人間関係を結べなかったエホバの証人とか、創価学会の30代、40代の2世たちがメンタルの不調を抱えているという相談内容が多いのではないかなと思いました。

だからといって、家庭連合が全く宗教二世問題の原因ではないとは言えないですが、問題を解決するには、問題がどういうところにあるかを正しく判断していくことは不可欠ではないかと思います。

10代から20代の宗教二世は、「相談しないし、相談できない」から「相談の件数に現れない」という考えもあると思いますが、未成年や成人直後の悩みは、宗教問題というより家庭問題とか親子問題として扱うべきものではないのかなと個人的には考えてます。

宗教二世問題解決に必要な視点

「陽だまり」が宗教二世問題の解決に向けて、色々相談に乗って支援していますが、そこで必要な視点として挙げているのを大きく五つまとめてみました。

「二世の会」がまとめた資料

一つは理解してあげる。悩みを誰にも言えなかった、言っても宗教の悩みを理解してもらえなかったから、それを理解してあげることがまず大切ということです。

二つ目が高度な中立性。相談者の中には、もう全然信じていない人もいれば、信じている人、どうしようかと揺れ動いている人たちもいるので、宗教や親を悪く言うと、その本人自身が傷つくということもあるので、高い中立性が求められるということが挙げられていました。

三番目は、過去を否定しない。たとえ宗教的な悩みや葛藤を抱えた人生であっても、その人の大切な人生であるので、過去の経験を捨て去るような圧力をかけてはいけない。

四番目は、絶望の言葉をかけない。「宗教二世は一生消えない呪縛」だとか、「マインドコントロールが一生続く」とか、そういう言葉をかけてはいけない。

五番目に、信仰や複雑な思いへの配慮。答えのないモヤモヤとした葛藤や、家族関係なども単純に親が悪いとは言い切れない。特殊で個別性の高い経験をしているので、そういうところにしっかり配慮してあげないといけない、ということがあります。

宗教的問題を解決しても宗教二世問題は解決されない

「陽だまり宗教2世支援センター」のYouTubeチャンネルから

図の縦軸が効果性が高いか低いかで、横軸が時間がかかるか、かからないかということでまとめています。これをを見ると、効果が高い項目は、孤独とか職業とか健康とか学歴とか人間関係とかです。

一方で、上部のマインドコントロールを解くとか、脱会させるとか、宗教団体を変えるとか、という側面での効果は低いと見られていて、脱会とか洗脳を解くいうのは、時間はかからないけど、悩みを解決する意味では効果が低いと分析しています。

ここから分かることは、上側が宗教的な問題で、下側が人間関係の問題で、そうすると宗教的問題を解決したとしても、宗教二世問題は解決されないということです。

「陽だまり宗教2世支援センター」のYouTubeチャンネルから

また、相談者には、信仰を持っている人や信仰が揺れ動いている人たちもいる中で、信仰を捨てたという前提がある元信者が、相談にしっかり乗ることができるのだろうか、という点を慎重に検討していかないといけないと思いました。

元信者が宗教二世問題を扱う限界

「二世の会」がまとめた資料

元信者の方が宗教二世問題を扱う限界ということで、 一番目としては、宗教やめたり脱会するということは、必ずしも宗教二世の精神的苦痛を軽減させる要因とはならない、むしろ過去の自分の否定であるので、不安を増大させる可能性もあるということです。

二番目には、信仰をやめた立場からの支援になってしまうので、どうしても信仰をやめさせることが一つのゴールになってしまうのではないかということです。

三つ目が、相談者の三分の一は、信仰がないとは言い切れない中で、どれくらいそういう人たちの声を尊重できるだろうかということです。

四つ目には、一世信者は脱会することで、親がその宗教の信者でなければ、親と宗教的確執はなくなるかもしれませんが、二世信者の脱会は、宗教ゆえに親とも縁を切るということにも繋がりかねないので、脱会という視点においては慎重に扱わないといけないということです。

ただ、完全に二世信者の方が宗教団体を脱会したいとか脱会した、という場合においては、親との関係や教会との関係が断たれている場合もあるので、元信者による支援やサポートが大切になる場合もあると思っています。

他者尊重と自己尊重、対話が大切

「二世の会」がまとめた資料

二世の会として、現役信者として、宗教二世問題にどのような姿勢を持ったら良いだろうかと何点かポイントを書きました。

一つ目は、宗教問題というよりは、親子問題とか家族問題とか、そういうところをしっかりと見ていかないといけないということです。ただし、親子問題は、各家庭ごとに全く異なるため、一括りにして解決されるものではありません。個々の事例や家庭状況に丁寧に寄り添う姿勢が大前提として必要です。

二つ目は、他者尊重と自己尊重と書きましたが、「宗教に問題がある」という括りで、苦痛を受けてる人たちというのは、自分自身のアイデンティティが確立されていないというか、自分自身に自信がないというか、そういう人たちが多いのかなと思っていて、それは宗教の背景ゆえなのかもしれないですが、大切なことは、自分自身のアイデンティティを受け入れる、自分がそういう宗教的な背景を持っているということを率直に受け入れて自己尊重する、そうした過去を持つ自分を赦してあげる、ということが大切だと思います。それは宗教の信仰とかの有無に関わらず、一人の人間として尊重する姿勢が大事なんじゃないかなという意味で、このように書きました。

三点目には、親子間、世代間、宗教間、社会との対話が大切と書きましたけど、異なる価値観でも、一人の人間として尊重することが大切じゃないかなと思っています。

次に、家庭連合に多い二世問題というのは、少し特殊なところもあると思っていて、それは経済面の要因、祝福結婚に対する葛藤が大きいのかなという状況です。

「二世の会」がまとめた資料

元信者の方からよく聞く声が、「教会は信仰しない自由を認めてくれないのか」とか、「元信者に対するアプローチをしてくれないのか」というものです。

これは非常に難しいもので、教会は信者のためだけに存在するとまでは言わないんですけど、やはり普段教会に来る人にしか基本的にアプローチすることはできないので、教会に来ていない方たちに、どうアプローチしていくかというのは、難しい問題だなと個人的には考えています。私からは以上です。

第三者の人たちが巻き起こしている問題も

小嶌希晶さん
「二世の会」の代表をしてます小嶌です。この二世の会のみんなで話し合っていた時から、宗教二世問題にはいろいろな切り口があるので、どれに絞って資料を作るかというところで、経済問題、精神的な苦痛、人間関係に絞りました。やろうと思えば、どこからでも切り口はあるというか、一人の人生の流れで起きていることなので、かなり絞っても、膨大というか、複雑な内容だ、ということをあらためて実感します。

元2世だったり、現役信者だったり、さまざまいるんですけど、一例を挙げると、信仰があればあるほど、職場の人にも信仰を証してカミングアウトして、教会のいいところを共有したいという思いがあります。

それで職場の信頼できる人たちだけには証していたケースが信仰があればあるほど多くて、それが今回の報道(2022年7月以降)で一転したというか、評価がガラッと変わったので、いじめられるようになって、職場での居場所がなくなったというケースがあります。

宗教二世の問題を語る上で、宗教を云々ではなく、結局、人間関係の修復が大事だというところはあるんですが、もう一つ、報道とか、第三者の人たちが巻き起こしている問題という観点も、ご意見お伺いできたらなと思っています。

※次回は、私の発表内容の要旨です。

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