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パイロットになるのは大変・・・その理由は?

空間識失調くうかんしきしっちょうとは
空間の中での上下や水平などの感覚や
自分の身体との位置関係
運動方向などを失う状態が継続し
把握が困難になる症状です。

航空機事故の原因として・・・

グルグルバットの経験はありますか?

おでこバットをつけて一点を軸に
ぐるぐる回ると・・・
足がもつれ頭がふらふらして・・・
真っすぐ進めなくなります。

平衡感覚と自分の正しい位置関係が
一致しなくなる
その誤差で生じると状態です。

人間が本来体感できる重力や感覚の
「オーバースペック」
によって生じると考えられています。

現在の高度な航空医学をもってしても
正確にその理由を特定・再現できないため
正しい原因分析が確立していません。

めまいや惑乱などの症状が現れるという事実は
解っています・・・
なぜその症状が発生するのか
現代科学でも解明できないのです。

経験豊富なパイロットでも

飛行中に視覚や聴覚などに
異常をきたす可能性はあります。
自機の姿勢や動き
地表との相対的な位置関係を
実際の状態とちがう思い込みが生じ
当然混乱を来たします。

計器は正しい数値を表示しているのに・・・
「計器が壊れた」と誤認識し
自機の正しい状態への判断が不能になり
上昇しているのか・・・
降下しているのか・・・
傾いているのか・・・
水平なのか・・・
分からなくなる状態です。

空間識失調はバーティゴ

(Vertigo)と呼ばれます
航空機事故の原因ひとつです。

科学的に未も解明です・・・
発生を予防することは非常に難しい。
自分自身が
「空間識失調に陥っている」
ことを認識できません。

自動車も昔は

「運転助手」が存在しました。
さすがに自動車が普遍的な現代では
運転助手を雇えるのは・・・
豊田章夫さんを含め
ごく少数のお金持ちだけでしょう。

航空機はどんなに自動化されても
パイロットワンマン体制になるのは
限られた飛行機だけです。

たくさんの乗客を乗せる旅客機や
多くの搭乗員を搭載する軍用機も
カンタンにはワンマン化できません。
一人より二人が安全な理由は・・・
説明不要でしょう。

戦闘機は例外です。

航空自衛隊でも・・・
戦闘機のパイロットだけは幾重にも張り巡らされた
フィルターによって選抜されます
理由は・・・
本来複数で安全性を高めるべきなのに・・・
一名で操縦するためです・・・
その能力がある特別な人を
選りすぐる必要性が高いからでしょう。

人間も動物である以上錯覚を生じます。

自分の身体が動いていないのに
動いたように感じることは現実に起こります。
電車に乗っているとき
向かい側の電車が動いたのに・・・
自分の乗った電車が動いたように感じるのは
まさしく誤認識の感覚です。
この感覚がベクションです。

海上自衛隊にも千名以上のパイロットが・・・
いるはずです。

彼らは同僚や自分の命を軽視しない
プロフェッショナルです。

シミュレータや実機で
何度も何度も繰り返し繰り返し
自身がベクションに陥ったと想定し

どうやって認識するか?
いかにして正常に戻るか

そのために日夜様々な訓練を実施します。

飛行機やヘリコプタのシミュレーターは
モーションを起こさなくても
外視界(外の景色)が変化するだけで
まさに自分が動いている感覚になります。

眼から入る情報の変化だけで

実際に身体にはまったく力がかかっていないのに
揺れていない機体が揺れているように感じます。

3D映画やディズニーランドのアトラクションで
酔ってしまう理由は・・・
人間にとって視覚情報の優先順位が
どれほど高いのか物語っているのです。

人間の視野角は180度から200度前後です。

眼球の網様体が受光する光の量や角度変化が大きい
左右の視覚限界付近は
本当ははっきりとは見えていません。
その部分の視覚を周辺視といいます。

ただし人間の感覚はその不足を補うため
ものの動きを感じる閾値を高めています。

自分の真横より後ろで動いているものが
感じられる・・・
その感覚こそが
人間の隠された能力です・・・

眼球の構造上・・・

本来認識できない視界の限界域で
ものの動きがとらえられるのは・・・

人間は本来「弱い動物」だからでしょう。
その弱さを補強していたのが
「生きる知恵・能力」
かもしれません。

パイロットになるのは大変です。

たくさんの乗客乗員の命を預かり・・・
高額な機体や
会社や集団の信用を背負って
様々な危険を瞬時に判断できる能力が
要求されます。

スーパーマン
であることを常に求められるのです。

身体的な特性と
強靭な精神

両方を備えていなければ・・・
勤まらないのが操縦士です。

航空機の事故は・・・
根絶できません。
人間が操縦する限り・・・

残念ながら事故はゼロにはなりません。

乗物と事故は不可分の関係です。

自動車の事故はそれほど珍しい事ではありません。
もしも飛行機のパイロットと同じような能力を
クルマの運転者求めたら・・・

クルマの事故は地上から絶滅状態となるでしょう。

パイロットに求めている能力は・・・
クルマを運転し一生事故を起こさないほど厳密です。

特別な技量を求めているのです。
「あ!ちょっとこすっちゃた!」
では済まされない・・・
事故と隔絶された厳密な世界・・・

精神がどれほどタフでも・・・
肉体が強靭でも・・・

それでも・・・
口では言えない・・・
当然noteに書けないほど大変な世界です。

毎日安全に運航を続ける世界中のパイロット諸氏の
安全を心から願います。
ご安全に。


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