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#16 ワークショップで使う言葉は「参加者目線」で選択!

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私はこれまで、小学生から70代までの広範な年齢層・バックグラウンドを持つ方々に向けて、毎年様々なワークショップをご提供してきました。

参加者してくださる方々にワークショップを最大限楽しんでいただくため、大切にしているポイントは山のようにあります。

その中でも今日は、ファシリテーション中の言葉づかいについてご紹介したいと思います。

参加者にフィットする言葉づかいによって、ワークショップの場はより楽しく、実り多い時間になります。

「説明を正しく理解してもらう力」がワークショップの成否を左右する

ワークショップにおける情報伝達は大別すると、投影資料による文章での指示と、ファシリテーターからの口頭指示の2つに分かれています。

投影資料にビッシリと指示を書くのは美しくないですし、かえって混乱を招くこともあるので、最小限に止めるに限ります。

つまり口頭での説明は、円滑なワークショップ進行においてとても重要なのです。

実際の投影資料の例

場合によっては、投影資料を用いないスタイルの方もいらっしゃると思います。そうなると尚更、口頭で伝達する情報の価値が高まります。

そこで意識すべき点が「ワークショップ中に使用する言葉は参加者に合わせる」ということです。

参加者はファシリテーターが提示する言葉をトリガーにして、内省を深めたり、アイデアを創造し始めるものです。そのため、伝達が曖昧になってしまったり、意図を違えてしまった場合は、参加者の思考の質が大幅に低下します。

そのためファシリテーターは、参加者に違和感を与えたり、理解を妨げたりするような説明を避けなければなりません。

素の瞬間は自分本位の言葉づかいが先行しがち

ところが、私たちはついつい自分を起点とした言葉づかいをしてしまいがちです。特に緊張している時や、焦っている時は、普段使っている言葉がモロに出やすいものです。

当たり前ですが、小学生に適した言葉、新入社員にフィットする言葉、役員に馴染む言葉、高齢者に理解いただきやすい言葉は、それぞれ違います。

例えば「リスケ」や「サマリー」などは多くのビジネスパーソンが使っている言葉ですが、小学生や、高齢者にとってはどうでしょう。大学生でも即座に理解いただけるか、やや怪しいところです。

こうした言葉と参加者とのミスマッチが起こらないようにするためには、当日の観察と、日頃からの備えが欠かせません。

当日は「参加者にフィットする言葉」を観察する

まずは当日の観察です。ワークショップでファシリテーションをする際は、参加者が受付をされている時から、それとなく話している内容や雰囲気をつかんでおくとGoodです。

齋藤孝さんは『語彙力こそが教養である』の文中で、

ほんの1分間でもプレゼンを聞けば、その人が持っている語彙や言葉の密度が、手に取るように把握できる。

語彙力こそが教養である

とおっしゃっているのですが、ここまで高精度のセンサーを備えていなくても、参加者のリアルな様子からはたくさんの情報が収集できるはずです。それによって、今日使う言葉の範囲を仮決めしましょう。ここまでが第一段階となります。

こうしてある程度あたりをつけられたら、今度はファシリテーションをしながら言葉づかいを調整していきます。自分が話している言葉に対して、参加者がどんな反応を浮かべているのかを観るのです。反応の良い言葉は残し、疑問そうにしている言葉は遠ざけていきます。こうして言葉の取捨選別をするのが第二段階。

第三段階では、会が進んでいくについて、参加者がグループワーク中や発表で使っている言葉をファシリテーションに取り入れていきます。一心同体と言えば大袈裟かもしれませんが、お互いに使う言葉が揃っていくと、より深い相互理解や、感動の共有が容易になるんですよね。こうなったら言葉のチューニングは完了です。


普段から類語に慣れ親しんでおくと瞬発力が高まる

次に普段からの備えですが、言い換えのトレーニングを日常的に行うことがオススメです。普段よく見聞きする言葉を言い換えてみる習慣を持つと、ファシリテーションの瞬発力が高まります。

例えば先ほど例にあげた「サマリー」という言葉に接した時には、これを小学生にも分かるように言い換えるには? 高齢者に伝わりやすい表現にするには? などと考えてみるんですね。

そうして「まとめ」とか「要約」などの、類似の言葉と出会っておくのです。ポイントは言葉の質を違えず、表現だけを変えること。意味が違う言葉に置き換えてはしまうのはダメです。


語彙の増加も進行力に直結

もう一つは語彙の増加です。上述した言い換えともリンクしますが、語彙力はファシリテーターの力量に直結します。

再び『語彙力こそが教養である』から引用をさせていただききます。

より多くの語彙を身につけることは、手持ちの絵の具が増えるようなものです。8色の絵の具で描かれた絵画と、200色の絵の具で描かれた絵画。どちらの絵が色彩豊かで美しいか? いわずもがな、200色のほうでしょう。語彙力を身につけることは、いままで8色でしか表現できなかった世界が、200色で表現できるようになるということなのです。

語彙力こそが教養である

ファシリテーターの語彙力が豊かであれば、難しい言葉を分かりやすい言葉に言い直すことができたり、参加者が言葉にできていない葛藤や期待などにラベルをつけて、みんなの前に提示することだってできるようになります。

これらの工夫や方向づけが、参加者どうしの円滑なコミュニケーションを促進し、ワークショップ全体の質を向上させるのです。

語彙は一朝一夕では獲得できませんので、毎日の地道なインプットを続けましょう。私も毎日本を読み、形容詞や副詞の辞書、ネーミング辞典や季節の言葉、ことわざや故事の実用書などに触れ続けていますが、まだまだ言葉の世界の奥行きに手が届いていません。

臨機応変な言葉づかいで素晴らしいワークショップを!

ワークショップは参加者ありきの活動なので、どんな成果が出るかはその日次第なところもあります。

こうした性質の中でも毎回ワークショップの質を担保するためには、ファシリテーターが参加者とのコミュニケーションを大切にし、臨機応変に言葉を選ぶことです。

参加者に刺さる言葉をチョイスし続けることができれば、ワークショップの実りは自然と深まっていくでしょう。

そして、こうした言葉の選択に意識を向けられるかどうかは、初心者と中級者の分水嶺でもあります。

ここまでを意識できるようになったら、ワークショップの面白さが倍以上に感じられるようになっていると思いますよ!

ワークショップデザイナー
相内 洋輔

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