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#3 場が沈黙してしまった時のファシリテーション

ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私はワークショップを面白いと思ってくださる方がもっと増えることを意図して、ワークショップデザインやファシリテーションのコツなどについてブログやラジオでお届けしています! ワークショップ仲間が増えたら嬉しいです。

先日はワークショップラジオで「意見が出ず沈黙した時のファシリテーションのコツ」というテーマについてお話しさせていただきました。この記事では、ラジオで話したことを要約してお伝えします。


オープニングトーク

■皆様いかがお過ごしでしょうか。私は先日、国土交通省様からご依頼をいただきまして、「訓練教官養成特別研修」という研修でファシリテーションについて3時間ほど講義をさせていただきました。

日本の空の安全を日々守ってくださっている方々ですので、私がお話ししたことが何か少しでも日々の業務にお役に立てるといいなと、そんな風に思った1日でした。

社会に貢献できている実感手触りがあるお仕事は、ご依頼自体が本当に嬉しいですね。これからも世の中に貢献できるようなお仕事をたくさんご依頼いただけるよう頑張りたいです。

今日は研修の中でお話しさせていただいた内容から一部を抜粋して、参加者から意見が出ないというときのファシリテーションのコツについてお話してみようと思います。


場が沈黙してしまった時に犯しやすい3つの失敗

ファシリテーションをしていると、どうしても場が沈黙してしまう瞬間は必ずありますよね。誰も意見を言ってくれないとか、全員が下を向いて「私には絶対に当てないでください…」みたいなオーラを出されたりとか。

場が静まり返ってしまった時って、ファシリテーターはすごく焦ってしまいがちなので、なんとかしなきゃとバタバタしてみる方が結構多いですね。

でもそのバタバタが、マイナスの作用を生んでしまうことがあるんですよ。中でもやりがちな失敗が3つあるので、ご紹介します。

質問を矢継ぎ早に重ねる

よくある失敗の一つ目は、沈黙に耐えられずに、次々と質問を重ねてしまうファシリテーション です。

もしかしたら今の話題だと話しづらい辛いのかな、自分がお渡しした問いが分かりづらかったのかな? と疑心暗鬼になってしまい、質問をいくつも重ねてしまうんですね。

質問を切り替えるって、参加者が本当に考え辛い話題に直面している時や、どうしても答えが浮かんでない時には有効なんですけれど、参加者が真剣に考え中だったため発話に至っていなかった、というパターンには極めて逆効果になってしまうんです。

というのも「何かを考えていてまだ整理がついていないから言葉にできていない」という時に新しい質問を次々に投げかけられたら、もともと考えていたこともまとまらなくなりますし、新しい質問にも思考が分散してしまって、私は何を考えたらいいんだ…!? と参加者を混乱させてしまいがちなんですね。

なので沈黙が起こっている時ほど、新しい質問を重ねてみるというファシリテーションをやりたくなる気持ちはすごくわかるんですけれども、参加者は今いろんなことを考えてくれていて、もう少しで誰かが話してくれはずだ、と信じて待ち続けることもとても重要です。

ファシリテーターには、参加者が困り果てて思考が止まっているのか、真剣に思考中で発話が生まれていないのか、を見極める目が欠かせないのです。


ファシリテーターが意見を言いすぎる

よくある失敗の二つ目は、沈黙を打破しようと自分が意見を言いすぎてしまうファシリテーション です。

ファシリテーターにとって、ワークショップの場、対話の場がしーんと静まり返っている状況は、とても居心地が悪いんですよね。

なのでその居心地の悪さを打破しようと自らが口を開く、という挙動を取りたくなることには共感しかありません。かく言う私もですね、昔は沈黙が起こるたびに、自分が何かを言わなきゃという思考が湧いて、あれこれと意見をたくさん言ってしまう、という残念ファシリテーションを常態化させてしまっていたなぁ…と反省しかありません。

これやりすぎちゃうと、ファシリテーターの意見に場が引っ張られて、「ファシリテーターがこう言ったから、こっちの方向でいいんじゃない?」みたい妥協が生まれたりですとか、思考を放棄しちゃう方が現れたりするんですね。

そうすると本来中立なはずのファシリテーターが中立な立場ではなくなってしまいますし、参加者の自主性まで消えてしまいますので、あんまりワークショップの場や対話の場にとって良いことが起こらないんです。

なので沈黙が続いても、自分で意見を言って打破したくなる気持ちってはグッと抑えて、次の会話の呼び水になるような意見だけを、短く端的にご提供して、そのトピックスから参加者に自主的にですね話を広げていただく、というファシリテーションに徹することがとても大切だと思います。

特定の人に話を振り続ける

3つ目の失敗は、特定の人に話を振り続けてしまうというファシリテーション です。

ワークショップの場って、明るい方とか、物怖じせず意見を言ってくださる方が必ずどこかにいらっしゃるので、ファシリテーターが困った時どうしても頼りがちになってしまうんですよね。自分で沈黙を破るよりは、参加者からの発話があった方が、場が動いている感じがするので。

でもこれも頻繁にやりすぎてしまうと、ワークショップにとっては逆効果になりがちです。というのも、周りの参加者の気持ちが引いてしまうんですよ。

(またあの人が話してくれるから自分はあんまり話さなくても大丈夫そう)
(ずっとあの人ばっかり喋ってて、あの人とだけ対話したらいいじゃない)

みたいな思いを抱いてしまう方が必ずいて。

一度こういう気持ちを持った方々って、手抜きモードになってしまいがちです。これってワークショップや対話の場にとって、ものすごく損失が大きいんですよね。

なので意見たくさん言ってくださる方に頼りたくなる気持ちは分かるんですが 、頼りすぎは注意です。用法・用量を守って頼りましょう!

参加者を信じてじっくり待つ

場に沈黙が起こっているときのファシリテーション では、私は以下の3つを意識しています。

まずは「参加者は真剣に考えてくださっていると信じて待つ」ということです。沈黙の中で発話を待つって勇気がいるんですけれども、参加者の皆さんは今いろんなことを考えてくださっていて、機が熟したら発言が生まれるはずだ! と信じて待っているとですね、どこかのタイミングで考えがまとまった方がすっと手を挙げてくださって、意見を共有してくださり、そこから堰を切ったように対話が流れ出す、という変化ってよく起こるんですね。

なので基本のスタンスは、参加者を信じてじっくり待つ、に尽きると思っています。


現在の状況を問う質問を使う

次にシンプルな質問の活用です。私は沈黙の際に投げかける質問を2つ用意していて、このうちのどちらかをお尋ねすることを通じて、参加者の思考の整理を促しています。

具体的には、
①今どんなことを考えていましたか? 
②何か難しいことはありますか?
という質問です。

こうやってお尋ねすると「今◯◯ということまでは考えが整理できたんですが、ちょっとその先に自信がなかったんでもう少しまとまってからお話ししようと思ってたんですよ」といった感じで、参加者の現在の思考状況をお話ししてくれるんです。

こうするとなぜ沈黙されていたのかがお互いに理解し合えるので、ファシリテーターとしての介入が容易になるんですよね。

この質問形式ですと、それまでに考えていただいたことも無駄にならないですし、新しい観点を入れて混乱を生んでしまうことも防いでくれるので、ぜひ常に使えるように持ち歩いて欲しいなと思います!


対話の人数構成を最小にする

最後は対話の人数構成についてです。参加者全体に何かを問いかけたけれど、沈黙してしまっているという場の活性化には、少人数グループでの対話がよく効きます。

私は対話の場に沈黙の嫌〜な空気が流れている時は、ペアでの対話、トリオでの対話といった形で、小人数グループにブレイクしています。

これがかなり有効で、全体ではなかなか話せなかったことも、構成人数が少なくなると言いやすくなるんですよね。

と言うのも、ワークショップの参加者は基本的に、目の前に問いやテーマについて必ず何かは思考しているはずなんです。それが全体を前にすると沈黙してしまうのは、自分の思考に自信がなかったりとか、悪目立ちしたくないとか、様々な心情が作用した結果です。これらの発話を抑制する心情の多くは、構成人数を少なくすることで解消されるのです。

また、ペアやトリオだと、参加者それぞれが黙っているわけにもいきませんから、場を紡ぐため、前向きに意見交換をしてくださる方が多数になります。

この少人数での対話が終わってから、「今お二人で話したことを少し教えてもらえませんか?」とか「3人で話されたことってどんな内容でした?」といお尋ねしすると、最初の沈黙が嘘かのように、いろんな意見が出てくるんですよ!

なので全体で話していてもなかなか進行できなさそう、このまま沈黙が続いてしまうかもしれないと危機を覚えた時には、この技を使ってみていただきたいのです。


まとめ

ということで、今日は参加者から意見が出ない時、場が沈黙してしまった時のファシリテーションのコツについてお話しさせていただきました。

もし、これ試してみてもいいな! と思うものがあればぜひご参考いただけると嬉しいです。

ワークショップデザイナー
相内 洋輔

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