見出し画像

化粧品に関する薬機法広告表現の“基本的”な考え方

薬機法広告表現の取り締まりが厳しくなる中、関連するライティングについてのお問い合わせが私のようなフリーランス宛にも増加傾向にあります。

化粧品に関する企業、雑誌の公式WEBメディア掲載用のコラム記事、健康機器誌面掲載用広告などさまざまな案件を承りご評価を賜り知見が深まってまいりましたので、需要の高い「化粧品」に関する薬事法表現の「基本的な考え方」についてまとめました。

「薬機法ライティングを勉強しています」というだけで、案件が増えるよ(たぶん)。

★注意
※この記事はいちライターの覚書です。薬機法や法律に関する資格を保有している者ではありません。
※具体的かつ最新情報は日本化粧品工業連合会にて公開されている最新版「化粧品等の適正広告ガイドライン」PDFを参照してください。
※この記事に書いてあることは「化粧品」に関する薬機法表現の「基本的な考え方」であり「要約」であり、すべてではありません。ここに書いてあることを覚えておくと、よくあるNG表現を回避できる&「あれ、これってもしやNG表現では?」と気付いて調べられるようになります。
※問題点あればご指摘ください。
※2021年8月時点での情報です。改定される可能性があります。

【前提】とりあえずこれを覚えておいたらある程度NG表現に気付けるポイント3

①「効果が確約されていない」から「化粧品」であることを忘れてはならない。

②化粧品の役割は「フラット(ゼロ)」を「プラス」にすること。「問題ない生活」が「より良い生活」になる。

③「消費者を守るため」に表現の規制が厳しくなりました。読者の気持ちを考えて、「こんなことを書いたら嫌な思いさせちゃうかもな」と思ったらやめておきましょう。

1.不安や恐怖を煽る「ネガティブ訴求」はNG

・「このまま放置すると恐ろしいことになります」といった不安を煽るような表現はNG。

2.虚偽・誇張・誹謗表現はもちろんNG

・当然ながら「虚偽(ウソ)」はNG。

・「他社製品をけなす」といった誹謗表現もNG。単なる比較であってもやめておきましょう。(同じ会社の製品同士、許可を得ている場合ならOK)

・誇張表現もNG。「最高」「理想的」「最先端」「1番」といった表現はうっかり使ってしまいがちなので、使わないようにしてください。

・「最高だと証明できるデータがある」場合は誇張ではないのでOK。ただし、データについての情報も付記してください。
・その場合でも、臨床データ・実験例といった「一般読者が理解しづらいデータ」はミスリード要因になるので基本的にNG。利用する場合、誰が読んでもわかりやすいように説明してください。

・「ミスリード狙い」も禁止。どれだけ懇切丁寧に説明してもミスリードされることはありますが、こちらから狙いにいってはなりません。

・「確実な情報をわかりやすく書く」。これを意識するだけで、この項目はクリアです。

3.「効果効能」「安心安全」は保証してはならない

・「効果が確約できないから化粧品」です。確約できる物は医薬品になります。絶対に効果がある、絶対に安心な化粧品はこの世に存在しません。

4.「骨・内臓・皮膚・神経などの働き、細胞の生成の促進」は「身体機能回復をあらわす表現」としてNG

・代表的な例として「ストレス」「ターンオーバー」などについて後述しますが、「働きが鈍っている骨・内臓・皮膚・神経、細胞の生成の働きを促進する」効果の標ぼうはすべてNGと心得てください。

5.「基本的にNG」ワードは目立つ部分に書かない

・後述する「基本的にNG」ワードは、目立つ場所には記載NG。目立てば目立つほど、読者に誤解を与える可能性が高くなります。

・例えば、記事タイトルに「ターンオーバー」と書くと、そこに紹介されている化粧品が「ターンオーバー促進に効果がある」と読み取られる可能性が高くなります。

・そのため、以下の部分では絶対に使わないようにしてください。それ以外の部分でも「目立つか目立たないか」は常に意識してください。

「基本的NGワード」を書かないほうがいい場所
・記事の場合:タイトル・h1~h2タグ
・広告の場合:メインコピー

6.「ストレス」は「病状をあらわす表現」としてNG

・少し大げさに書きましたが、実際には「医学的表現としてのストレス」がNGなだけで、「物理的(外的)ストレスを受けないようにする」であればOK。

・しかし、汎用性の高いワードなので、うっかり「医学的表現としての使用」をしてしまう可能性が大。慣れないと判別も難しいので、「基本的NG」と考えて使わないようにしてください。

・どうしても使用したい場合、「物理的ストレス(外的ストレス)から身体を保護」という意味合いでしか使わないようにしてください。

「物理的ストレス(外的ストレス)から身体保護」の具体例
・肌を保護する役割の化粧品であれば、「紫外線」という物理的(外的)ストレスをカットできます。
・パンチングマシンであれば、「鬱憤」という物理的(外的)ストレスを解消できます。

7.「ターンオーバー」は「皮膚機能回復をあらわす表現」としてNG

・よくある「ターンオーバーを促進」、これも「肌の機能を回復」という効果の標ぼうになるため、NG。

・ただし、「肌が乾燥する=ターンオーバーが乱れる」といった「肌の働きの説明」であればOK。

「保湿機能のあるクリーム」紹介記事でターンオーバーの話をする場合
・リード文など「商品説明とは全く関係のない段落」で、「冬は乾燥しやすい」こと、「乾燥によってターンオーバーが乱れて肌がくすんだ印象になる」といった「乾燥によって起こる肌トラブル」としてターンオーバーを解説。
・商品説明では「保湿機能」についての説明しかしない。

※「乾燥によってターンオーバーが乱れる」ことは事実なので記述OK。信頼できるサイトから情報を引用し、引用元を書くとなおよし。
※この書き方は「今は見逃されている」書き方です。今後「NG表現」として扱われる可能性があります。要注意。

※追記:「アンチエイジング」も同様の理由でNGです。

8.「美白」「トーンアップ」「肌を明るく」「シミ・そばかすを薄く」は「メラニン色素減少をあらわす表現」としてNG

・「肌のメラニン色素を減少」「肌の色を変える」は治療の範疇なので、NG。

OKなパターン
・薬用化粧品で美白効果の承認を受けている場合であればOK。
・洗顔料やピーリング剤で「汚れを落として」の「トーンアップ」「肌を明るく」ならOK。ただし、「美白」はNG。

・「透明感」というワードを使用する際は「美白効果がある」という誤解なきよう下記のように補足してください。

※透明感とは、つややかな肌の状態を指します
※透明感とは、肌の汚れを落とした状態を指します
(注意:「何を指す」かは、化粧品に合わせて適宜変えてください)

9.「浸透」を標ぼうしてOKなのは「角質層」まで

・「肌の奥に浸透」といった表現がよく見られますが、これはNG。

・化粧品の配合成分が浸透するのは厚さが0.02ミリしかない「角質層(角層)」までなので、「奥」「深く」まで浸透はしない考え方です。

・「角質層(角層)の奥」もNG。

・「肌の奥に浸透(※肌の奥とは角質層のことです)」といった表現もミスリード要因になるためNG。

10.「体験談」内では効果効能の標ぼうは一切NG

・体験談内では、後述する「許可されている56の効果効能」であっても標ぼうNG。「使用している最中の使用感」で留めて、「使用した結果」は一切書かないでください。

11.「医薬関係者からの推薦」はNG

・具体的には、下記のように定められています。該当する人物・団体などの推薦文は書かないでください。

医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局その他医薬品等の効能効果に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校または学会を含む団体が指定し、公認し、推薦し、指導し、または選用している等の広告は行ってはならない。
出典:厚生労働省

・それ以外の人物からの推薦は可能ですが、「医薬関係者と誤認させる」状態での推薦はNG。(白衣を着ている、「○○博士」といったそれっぽい肩書きを名乗るなど)

11.メイク用品は表現の自由度が高い(ただし、メイク機能のみ)

・ここまで書いてきたNG表現のほとんどは「スキンケア用品」に関連する表現です。スキンケア用品は「使用者の肌質を変化させる」役割を担っているため、医薬品のような表現をしてしまいがちだからです。

・メイク用品は「塗っている間だけ見た目を変える」といった一時的な効果であり、誰でも同じ効果が得られやすいため、自由度が高めです。

例えば、スキンケア用品では使うのが難しい「透明感アップ」もOK。ただし、「塗っている間はそう見える」という意味合いでのみ。

・ただし、メイク用品でも「スキンケア機能」の説明は、スキンケア用品同様。

12.一般化粧品で標ぼうが許可されている56の効果効能範囲一覧

 日本化粧品工業連合会にて公開されている「化粧品等の適正広告ガイドライン」PDFより引用、カテゴライズのために順番を変えた一覧です。

平成23年に56番が追加されたように、これからも追加される可能性があります。くどいようですが、最新版は公式にてご確認ください。

全般

38.芳香を与える。

ネイル

39.爪を保護する。
40.爪を健やかに保つ。
41.爪にうるおいを与える。

リップ

42.口唇の荒れを防ぐ。
43.口唇のキメを整える。
44.口唇にうるおいを与える。
45.口唇を健やかにする。
46.口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
47.口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
48.口唇を滑らかにする。

歯磨き

49.ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
50.歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
51.歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
52.口中を浄化する(歯みがき類)。
53.口臭を防ぐ(歯みがき類)
54.歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
55.歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。

頭髪

1.頭皮、毛髪を清浄にする。
2.香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
3.頭皮、毛髪を健やかに保つ。
4.毛髪にはり、こしを与える。
5.頭皮、毛髪にうるおいを与える。
6.頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
7.毛髪をしなやかにする。
8.クシどおりをよくする。
9.毛髪のツヤを保つ。
10.毛髪にツヤを与える。
11.フケ、カユミがとれる。
12.フケ、カユミを抑える。
13.毛髪の水分、油分を補い保つ。
14.裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
15.髪型を整え、保持する。
16.毛髪の帯電を防止する。

髭剃り

33.ひげを剃りやすくする。
34.ひげ剃り後の肌を整える。

顔・スキンケア

17.(汚れを落とすことにより)皮膚を清浄にする。
18.(清浄により)にきび、あせもを防ぐ(洗顔料)。
19.肌を整える。
20.肌のキメを整える。
21.皮膚を健やかに保つ。
22.肌荒れを防ぐ。
23.肌をひきしめる。
24.皮膚にうるおいを与える。
25.皮膚の水分、油分を補い保つ。
26.皮膚の柔軟性を保つ。
27.皮膚を保護する。
28.皮膚の乾燥を防ぐ。
29.肌を柔らげる。
30.肌にはりを与える。
31.肌にツヤを与える。
32.肌を滑らかにする。
35.あせもを防ぐ(打粉)。
36.日やけを防ぐ。
37.日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
56.乾燥による小ジワを目立たなくする。(H23追加)

注意書き

注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
注3)(  )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。
注4)(56)については、日本香粧品学会の「化粧品機能評価ガイドライン」に基づく試験等を行い、その効果を確認した場合に限る。

【最後に大前提】消費者に誤解されないために「薬機法NG表現」があります

薬機法表現の取り締まりが厳しくなる以前は「期待できる」程度の効果を「絶対に効果がある」と読み取れるように書かれたり、不安を煽って消費を促したりといった記載がなされていました。

そうやって「苦しい出費」をして苦しんだ消費者が多数実在することから、取り締まりが強化されました。

「うちの商品は本当に効果的ですばらしいのに」「それを禁止されたら何も書けない」といった憂いも理解できますが、だからこそ、より誤解のないライティングに努め、消費者からの信頼を獲得していきましょう。信頼してもらえたら、すべての説明は蛇足になりますから。

誰しも生きていれば「苦しい出費」をしなければならない機会はたくさんあります。だからこそ、それ以外の出費ができる限り「楽しい出費」になるように心がけることがライターの勤めだと心得て、がんばりましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?