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火花が散るように……。

いま注目されているボクシング・井上尚弥選手の次の試合が近づいてきた。

5月6日に東京ドームで、メキシコのルイス・ネリとの試合が予定されている。ネリは無冠で、これはスーパーバンタム級の4本のベルトを保持している井上尚弥の世界防衛戦ということになる。

東京ドームでのボクシング興行試合は、マイク・タイソン以来とのことだ。いつも配信はLEMINOというNTTの謎の配信サービスで行われるのだが、今回はAmazon Primeでの配信となるらしい。会場の大きさに加えて、配信もグローバルである。いつも以上に大きなお金が動いているのだろう。

試合はリングで行われるので、どれだけ広い会場であろうと個人的にはあまり関係がない。が、やっぱり会場が大きいとそれだけ盛り上がるし、当然ながらファイトマネーも高額になる。

それは業界全体にとってもいいことだと思うし、「そういう選手」だからこそ、相手をする選手に不足しない、ということはあるだろう。要は、相手からしたら勝っても負けても巨額のファイトマネーを得られるわけだからだ。まぐれフロックでも一発入れることができれば大金星なわけで、試合が成立する可能性が高い。

ここ最近はずっと日本で試合をしているのだが、ボクシングの軽量級は井上尚弥の活躍もあってか、日本が本場になりつつある。アメリカでは軽量級はそこまで注目されておらず、やはりそれなりに体重のある選手の試合のほうが注目されている。前回戦ったタパレスはフィリピンからだが、今回のネリはメキシコから来ているわけで、ほぼ地球の裏側だ。

ボクシングの試合は世界戦なら年2〜3試合が普通で、そこまで試合数が多いわけではないので、けっこう個人的にはメリハリになっている。「楽しみは多いほどいい」というのが一般的な感覚だが、「特定の日を楽しみに過ごす」のもまたいいものだ。いよいよ、という感じなので、個人的にもかなり気分があがっている。

実は井上尚弥選手のファンになってから、それほど日が経っているわけではない。リアルタイムで見たのはたったの3試合だ。それ以前の試合は動画などで見た。いずれにしても会場に行ったりすることはなく、配信で見ているので、同じことといえば同じことである。

最近は非常に注目されている選手だが、プロになってから全戦全勝しているのが注目されている主要因である。なんといってもハードパンチャーで、ほとんどの試合をKO勝ちしている点がすごい。パワーだけでなく非常にテクニカルで、スピードも速く、すべてのレベルが「圧倒的に」高いのである。

これまで格闘技にはあまり関心がなく、格闘技を題材にした漫画などを読んだことはあるが、試合を見たりしたことはなかった。が、井上尚弥というすごい選手がいるらしいということで、動画などをみてみると、確かにすごいなと思った。

素人ながら特にすごいと思ったのは、フィリピンのノニト・ドネア選手(2回目)の試合である。

相手もピークを超えているとはいえ、偉大な選手なのだが、わずか2ラウンドで圧勝している。すごい。

が、素人目には何がすごいのかがわかりにくい。スピードが速すぎて、起きていることがわからないのだ。しかし、YouTubeなどで技術的な解説を見たり、スロー再生してみたりすると、また違うものが見えてくる。

本当に一瞬の駆け引き。たったの1秒ほどのあいだで、高度な駆け引きが行われている。

井上尚弥のボクシングは「将棋のように」と評されることがあり、本人もそう表現していたことがある。数手先を読んで、的確に、目にも見えないほど速く対応する。詳しい人の解説がないと意味がわからないのだが、奥が深いスポーツだなと感心してしまう。

ボクシングはあくまでスポーツなので、試合をどう組み立てるか、ということにも作戦がある。ボクシングは相手をKOするか、ポイントを多く取ることで勝利することができる。

そのときに焦点になるのが、インファイト(接近して戦うこと)とアウトボクシング(距離をとって戦うこと)だ。相手に近づけばKOできる可能性は高まるが、KOされる可能性も高まる。距離をとれば、どちらも可能性は下がる。

これは選手それぞれのタイプで得意とするスタイルは異なるが、試合の進行に合わせて絶えず変化する。細かいことをいうと、構えやガードも状況によって変化していく。

井上尚弥はKO勝利を目指しているので、前半でなるべくたくさんポイントを取り、後半は相手が前に出てこざるを得ないように誘導する。そのうえで、相手が出てきたところを仕留める。基本的にはそういう作戦である。

しかし、前回のタパレスは、パンチの軌道が見えにくいことで有名で、細かいテクニックはさておき、ハードパンチャーとして知られていたので、試合内容で圧倒していてもビッグ・パンチをもらってしまい、負けてしまう可能性はあった。そういう駆け引きが見ていて面白い。

主催側からしたら是非会場に来てほしいと思うのかもしれないけれど、今後もしばらくは自宅で楽しむ予定。申し訳ないけど……。

配信はLEMINOよりはAmazonのほうが回線落ちしないと思うので、その点は安心である。

ボクシングはハードなスポーツなので、選手生命も短い。試合も火花が散るように儚いものだけれど、試合総数もそこまで多いわけではない。井上尚弥は35歳で引退することを公言しているため、試合が見られるのはあと4年ほどということになる。

なるべくリアルタイムで見ていきたい、と思っている。


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