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当事者じゃないから、わかること

以前の記事でも書いたのだが、5月6日に東京ドームで行われたボクシング興行・井上尚弥VSルイス・ネリの試合を観戦した。

いや、東京ドームに行ったわけではなく、Amazon primeでの配信を見ただけなのだが、それでもすごいものを目撃したな、と。

井上尚弥の試合をリアルタイムに見たのはこれで4試合目だが、それ以前の過去の試合も含めて、一番すごい試合だったなと思う。たぶんこのnoteを読んでいる人はほぼ興味がない話題だと思うのだが(笑)、少し思ったところをまとめてみたい。

井上尚弥は全世界で現役最高のボクサーともいわれており、海外での評価も非常に高い。なので、基本的には対戦相手はその階級における最強のボクサーになりがちである。

しかし、そういった「最強の相手」をも基本的にはKOでなぎ倒していくので、すさまじさがわかる。井上尚弥相手に正面から突っ込んでいくのはハイリスクすぎるので、試合前はいろいろ挑発的なことを言っていた選手も、いざ試合となると結構慎重になる。

今回、対戦相手のルイス・ネリは「命をかけて勝負に挑む」という宣言通り、序盤から好戦的に突っ込んできて、なんと井上のプロ・アマでのキャリア初のダウンを奪った。なんというか、見た瞬間、目の前の光景が信じられず、真っ白になったような気がした。

しかし、その後はいつもの冷静な状態に戻り、6ラウンドでKO、井上の勝利に終わった。しかし、勇敢に闘ったネリにも賞賛の声が寄せられる結果となった。

試合が終わったので、いろいろと解説動画を見あさっている。たいてい、試合自体は夜の九時ぐらいからはじまることが多く、その日の深夜に格闘家やYouTuberなどが軽い解説動画をアップする。

ただ、それは技術的な解説というよりは、所感というか、感想レベルに近い。あの瞬間すごかったよね、みたいな温度感である。

試合から数日経つと、もっと細かく解析した動画がたくさん出てくる。解説動画の中には、試合中の映像をくまなく使ったものもあり、場合によっては権利関係が原因で消されてしまうこともある。

なので、毎日張り付いて、上がったらすぐに見なければならない。ボクシングの場合、試合が終わってからもこの作業があるのだ。

YouTubeの再生数的にはプロ格闘家の発信している「感想動画」はそれなりに数字を稼いでいるのだが、やっぱり感想レベルにとどまるため、見てもそれほど収穫はなかったりする。やっぱり映像をじっくり解析した動画のほうが見ごたえがある、ということだ。制作に時間と労力がかかっているとも言えるが。

どういう人がそういった細かい解析動画を作っているのだろう。もちろん格闘技をやっている人なのかもしれないけれど、なかには解析が専門のマニアな人もいるのではないだろうか。

特によくできているな、と感じる動画は、「実体験」からくる「印象」ではなく、「映像」から「読み取れる」ものをベースにしている。主観ではなく、映像から読み取れるものを解説しているので、非常に客観的である。なので、勉強になるなとつくづく思う。

ビジネスの世界では、成功した経営者が自分のノウハウについて自伝的に振り返る、というタイプの本がよく出版されたりする。しかし、実際に自分は会社を経営していない経営戦略の専門家なども存在する。

後者について「自分で経営していないやつが言う経営戦略など無意味だ」という人もいるのだが、むしろ自分でやってないからこそわかることもあるのではないか、と思った。

当事者じゃないからこそわかることがある。それこそが「観察」ということだろう。自らを含むものを観察することはできない。当事者ではない、ということが深い分析につながることもあるということだ。

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