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ジャーナルクラブにClaude 3を使用してみたら・・・その言語処理能力がヤバい!!第8回 観察研究の論文要約


主な対象者

本記事では、ジャーナルクラブの準備でどうしたらいいだろう?と迷われたり、時間がない!と思われている医師(研修医や専攻医を含む)をサポートするプロンプトを紹介しています。
ノーコードで出来る内容を扱っています。
#ジャーナルクラブ #抄読会 #Claude #プロンプト #観察研究 #研修医 #EBM

本記事の画像はAdobe Fireflyを用いて生成しました。

はじめに——生成AIとジャーナルクラブ

2024年3月にClaude 3が公開され、その言語処理能力の高さが話題となりました。GPT-4を上回る性能と多くのWebサイトや動画で紹介されています。

臨床の現場でその高い言語処理能力を活用する領域として、ジャーナルクラブに注目しました。ジャーナルクラブは150年以上も前から存在する学習手法で、新しい情報を得る、双方向的な学習の機会となるなどのメリットが知られていますが、忙しい臨床現場では準備も大変だし、そもそもメンバーが集まるのも難しいことも多いです。

生成AI(ここでは、Perplexityを使用)に、生成AIがジャーナルクラブに与える影響について尋ねてみたところ、①論文の要約が強化され議論しやすくなる、②文献検索が自動化され質が改善する、③ディスカッションポイントを準備しより深い議論がしやすくなるなど、数多くのメリットが得られ、より効率的、対話的、有益なものになる可能性があるとの回答が得られました。

https://www.perplexity.ai/search/how-has-generative-UPh218GT42YLGWuiiuzQw

この連載の第1回において、介入研究(RCT)の論文要約のプロンプトを紹介しました。

今回は、このバリエーションとして観察研究の論文要約のプロンプトを紹介します。観察研究にはコホート研究、症例対照研究、横断研究などが含まれます。介入研究との違いは様々な交絡因子をコントロール出来ない点が多くなりエビデンスの質としては低下しますが、様々な理由で介入研究の実施が困難な場合に用いられます。例えば以下のような場合があります。

  • 有害事象への曝露など、介入として行うことが倫理的に不適切な場合。

  • アウトカムが極めて稀で、介入研究として行うと必要な追跡者数や追跡期間が大きくなり過ぎて実施不可能(コスト面も含む)な場合。

  • 定期的に実施する質問紙などを用いた低コストな方法で一定の水準の情報が得られる場合。

今回も、無料版のSonnetモデルの使用を想定しています。

プロンプトの前に  ファイルの添付

ファイルの添付はプロンプトを書く前でも後でも良いですが、その際の注意点です。
添付できるファイルにはサイズの上限があり、1個あたり10Mbまで(あるいは20万トークンまで)ですが、余程図の多いものでなければ大丈夫でしょう。ファイル名が長過ぎたり、ファイル名にセミコロン(;)が付いていても添付できないようです。ファイル名をバンクーバー方式(PubMedで記載されている「ジャーナル名.出版年巻(号):ページ」の方式)で保存している方は変更して添付する必要があります。

以下、数段階に分けたプロンプトを紹介します。

プロンプト① 役割付与と導入

(ここから)
#あなたは臨床経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。論文査読にも優れています。
#添付したファイルの内容を、教育効果を最大化する目的でまとめてください。
#以下の指示を実行して下さい。

  1. タイトルと抄録を日本語に翻訳してください。

  2. この論文のPECOを簡潔にまとめてください。P:対象、E:曝露、C:比較対象、O:アウトカムを示します。

(ここまで)

まずはAIに役割を与えます。ここでは「臨床経験豊富で教育能力にも優れた専門医」で「論文査読にも優れてい」ると規定します。こうすることで頼れる専門医として振る舞ってくれます。

タイトルと抄録の日本語訳は定番ですね。
他の内容は第1回とほぼ同様です。PICO(またはPECO)を、PECOに変えた程度です。

プロンプト② 内容の中核に踏み込む

(ここから)
#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 論文のテーマについて、以下の内容を要約して下さい。

  • これまでに分かっていること

  • この論文が付け加えたこと

  • 将来への示唆

  • 方法の要点

  • この論文の対象や方法に関する強み

  • この論文の対象や方法に関する限界

  • 交絡因子への対処方法

  1. 私の施設でこの結果を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の(都市部, 郊外, 農村部, 離島 etc.)にある(高度急性期, 一般急性期, 亜急性期・回復期, 慢性期, etc.)を担当する(大学病院, 市中病院, 診療所, etc.)で、(自施設や診療科の特徴、多い患者層など)です。

(括弧内には、当てはまる医療機関の特徴を入力する)
(ここまで)

ここも第1回のRCTの論文要約とほぼ同じです。

2つめの1.の括弧内には、当てはまる医療機関の特徴を入力します。
この部分は、EBMの5つのステップの4番目である「この情報を自分の患者に適用できるか?」を踏まえたもので、医療機関のセッティングにより代用しています。
例えば私の勤務先だと以下のような形が考えられます。
「私の施設でこの内容を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の都市部にある400床の一般急性期〜亜急性期を担当する市中病院で、入院患者の大多数が75歳以上の高齢者です。」
1.が2つ続いてしまっていますが、誤作動などは起きないので大丈夫です。

これまでにも書いた注意点について繰り返しますが、生成AIには一般的に個人情報や企業情報をそのまま入力すると学習材料として利用されてしまう恐れがあります。生成AIによっては学習しないよう指示する方法もありますが、Claude 3では利用されるかどうかは明示されていません。上記のような一般的な表現に留めた方が良いでしょう。

この次に、第4回で紹介した表や図についての解説を求めても良いでしょう。

プロンプト③ Take Home Messageを得る

(ここから)
#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 特に持ち帰るべき学びのポイントを3,4個の箇条書きにまとめてください。

  2. この論文のキーワードを5つ、ハッシュタグをつけて提示してください。

  3. 更に学びたい人へ、引用文献の中でおすすめの論文を3~5個挙げてください。挙げた論文一つひとつに対して、特徴を一文で記載してください。半分以上の論文を、本論文の発表から5年以内のものから選択してください。バンクーバー方式でお願いします。

  4. この論文は、診療ガイドラインの推奨を変える可能性がありますか?GRADEシステムに基づいて検討してください。

  5. この論文をデータベースに保存したいです。バンクーバー方式で記載してください。

(ここまで)

この部分は、第1回のRCTの論文要約の時と同じです。
結局、このジャーナルから何を学べるのか?更に学びたい人におすすめの引用文献はどれか?次の診療ガイドラインにはこの論文の内容が反映される可能性はどうか?そして、ジャーナルクラブで用いた論文をデータベースに登録するフォーマットを作成したい、という訳です。

これで終わると第1回のコピペ同然ですので、以下を追加します。

おまけ——用語の意味を聞きたい時のプロンプト

抄録でも内容の要約でも、分からない単語が出てくることも多いと思います。言葉の意味と用法について尋ねるプロンプトも作成しました。

(ここから)
#以下の言葉の意味がよく分からないので、私を医療系専門学校の1年生だと思って教えてください。
(ここにキーワードを入れる)

教えてほしい内容は
・言葉の定義
・言葉の英訳
・言葉が用いられる主な文脈
・言葉の同義語、類義語、対義語と、その英訳
・本論文における意味
・本論文を解釈するにあたって重要なポイント
です。
(ここまで)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。
本連載はまだまだ継続する予定です。

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