『赤と黒~A First Chant~』

グループ SNEさん発行のTRPG『赤と黒』の自作シナリオをキャンペーン形式にして纏めました。


導入

__貴方が目を覚ますと、そこは広い空間。
荘厳な柱、白亜の壁。まるで中世の建築様式をそのまま真新しく再現した教会のような、法廷のような。そんな厳かな空間です。
高い高い天井に星空を切り取る丸い天窓。
そこから差し込む白銀の光の真下には、巨大な地球儀のような球体が円形や四角形、様々な形状の物差しの中央にふわふわと浮かび、淡い青色を発しています。

周りには数人の変な格好をした人たちが、背が異様に高い_それでいて些か豪奢に過ぎる_椅子に腰掛けて同じくキョロキョロとあたりを不安そうに見回しています。
さっきまで、貴方は普段の日常を過ごしていたはずなのに、ふと気がついたらここにいました。
現実味もなく貴方の胸はただ混乱と不安でいっぱいになるでしょう。

「ようこそ、新米魔法使い、魔女の皆様方。」

天に浮かぶ大きな球体から声が聞こえてきました。
それは機械的な合成音声なのに、どこか明るい女性の声。

「魔法界の社交場にして魔法界の未来を担う我ら『コトワリ機関』の入会説明会を行います。
進行は私、コトワリ機関の要でもあり母体である魔力量子演算装置『コトワリシステム』が行います。」

呆気に取られ、みな一様に口を開けてその球体に目を向けます。

「『なんのことだ?』って顔をしてらっしゃいますね。
あらあら……現界構造魔術式、間違えていらっしゃいません?
よもやご自身が人間界のくだらない存在だと思っていらっしゃいます?
【みなさまは魔術師。人ならざる世界に存在する魔法使い、魔女であらせられますよ?】

最後の一文は、ひどく重みのあるように響きました。
紛う事なく、それが真実であるのだと知らしめる響き。
そして驚くことに、重みある真実の言の葉はその真実を誇示するかの如く
実際に【黒い文字】になって空中に浮かんでいました。

「ふむ……まだピンときていないご様子。これはまた重度な術式エラーですね。
では『コトワリ機関』についてもやはり覚えていらっしゃらない?」

呆然とする面々。
球体、つまりコトワリシステムは呆れたように続けます。

「……あー。結構です。大丈夫です。私がご説明差し上げましょう。」

コトワリシステムから光線が発せられ、
宙空プロジェクターのように様々な怪物が3Dホログラムとして映し出されます。

「この世界にはたくさんの未解決事件があります。
そしてそれらは全てこれら“イツワリ“と呼ばれる怪異の仕業です。
“魔が差す“という言葉がありますね?この“魔“とは“イツワリ“に他なりません。
人の殺意や嫉妬などの負の感情を魔力、つまり餌にすることが多いイツワリたちは、それら負の感情を発生させた人を楔として寄生し、現世に顕現します。そしてその宿主が活動でき得る範囲で人間を殺害したり捕食するのです。」

「“イツワリ“は即ちこの世の害悪です。捨て置けば大量虐殺や要人殺害等、人間界はもちろん我々魔法世界にも甚大な被害を及ぼします。
ですが“イツワリ“は消滅時、大量の魔力を放出しますので我々の魔法界の資源難を救う一つのリソースでもあります。それを有効活用するために人材を育成しイツワリを狩りリソースを分配していくのが我々『コトワリ機関』です。
ただ困ったことに“イツワリ“は人間界の兵器はもちろん、魔法界のいかなる術式でもってしても完全に消滅させることができません。これを否定するには『存在そのものを否定』する必要があります。」

「我々魔法世界の住人は『存在』が非常に不安定です。
“どこにでもいて、どこにもいない“が故に“存在そのものを否定される“というのは致命傷です。
それはイツワリも同じです。

わかりづらい?ならわかりよく言いましょう。

「お前なんかいなくてもこの事件は起きていたし、【お前じゃなくて“誰が““何故““どうやって“この犯罪を成立させた!」という定理が通れば「イツワリなんかいなかった」という話にできるのです。】

コトワリシステムの宙空に浮かび上がった黒い真実の言葉たちが蛇のようにうねり、ホログラムの怪物達に巻き付いたと思うと、そのまま締め潰しコミカルに爆散します。

「『存在しない』と『論理的に』断じられるのは魔法世界の存在に対しては致命的な毒を動脈に直接注射されるのと同じように作用します。
そして存在否定されたイツワリはイツワリではなく“ただの魔力の塊“ですので、
我々はそれを有効利用するといった寸法です。

裏手を返せば「人間には不可能な犯罪だ」と皆様が認めてしまった時点でゲームオーバー、
イツワリの存在強度はより高まり我々魔法世界にも悪影響を及ぼしてしまうでしょう。」

皆突然のことに頭が追いつきません。
怪物を理論的にやっつける?でもそんなことどうやってやればいいんだ?
ただ狼狽えるばかりです。

「難しく感じますか?
確かに人間界にあるような小説や漫画の"探偵"になり切るのは難しいでしょう。
指紋を取ったり、足跡を科学的に検視したり?私もやり方をご教授するほど暇ではありません。ですが皆様は魔法使いです。魔法を使えばいいのです。

証言を取れるのは人だけではありません。
殺害現場に残された鏡に"証言を聞けばいい"のです。
写っていた内容は鏡が教えてくれるでしょう?」

さも当然のことのように言うコトワリシステム。
ですが確かになるほど、きっとそれが"魔法"なのでしょう。
相変わらず狼狽えはすれどじっと傾聴する貴方達に感心したのか、コトワリシステムはより饒舌に語ります。

「証拠がない?動機の証明が難しい?
なら殺害現場に魔法でダイイングメッセージをでっちあげればいい。
凶器を残してしまえばいい。足跡を残してしまいましょう?
これも我々が魔法使いだからこそできること。

推理が間違ってたらどうなるって?
冤罪であれなんであれかまいません。
ニンゲンのような低次元の存在が困ろうと知ったことではありません。
何はともあれ、イツワリさえ存在否定できればいいのですから。」

コトワリシステムの声色が変わってきました。
先ほどまでの事務的な、機械的な声はどこへやら。
それはさながら好きなものを熱く語る好事家のそれでした。

「イツワリ狩りは我々魔法貴族の楽しい知的ゲームであり嗜みだと思いましょう。
イツワリによる犯罪の濡れ衣を着せられた人間が現世で苦しむ様を見るのも我々永遠を生きる魔法使いや魔女の楽しみ!お酒のおつまみ、紅茶のクッキーのようなものでしょう?
ほら、この間の事件で冤罪をかけられた日本の大学生、首を吊ったそうですよ??
遺書に書いてあった文言、お聞きになられました?『ほんとに僕じゃないのに、誰も信じてくれない。僕が彼女を殺すわけがないのに、あんなに好きだったのに、愛していたのに。僕にしかできないからお前が犯人だってみんな言う。もう嫌だ。せめてあの子のところにはやく行きたい。』ですって!ぷーくすすすすっッツ!!!!」

……それは本当に愉快そうな声。
そう、彼女(?)は人の不幸を娯楽にしている。
目の前で、人が惨めに死んでいくのを指さし笑いながら見ている。
貴方はつい、不快感をあらわにしてしまいました。

「…………?なんです?その目は?
やだやだ、変な正義感のようなものに目覚めてしまいましたか?
縛りプレイもほどほどにしなくてはいけませんよ?

自己の薄っぺらい正義に則って協調性をなくす……本当にまるで人間のよう。
……本当に貴方が人間ならば、我等が魔法界には不要な存在ですし、即刻お引き取り願いたいのですが。」

コトワリシステムが紅く光る。
すると貴方の身体中にこれまた真っ赤なレーザーサイトが大量に当たります。
その紅線の元には、きっと人の命など簡単に奪えるようなものが口を開けていることでしょう。
それでも貴方は、いえ“貴方達は“コトワリシステムへの視線を逸らしません。
その目は何よりも正義の炎に燃えていました。

錯覚ではない、火薬の匂いがただ静かに漂います。

「………ふふっ」

かなりの間をおいて、
コトワリシステムは愉快そうに笑うとその色を赤から先ほどまでと同じ淡青の色を示します。
レーザーサイトもまた同じようにフツフツと消えていきました。

「なーんて?ふふふ……少しあなた達を図ってしまいました。戯れをお許しくださいな?」

少し茶目っけのある明るい声。
先ほどの事務的なものでも、硝煙纏うそれでもなく
人を焚き付け、勇気づけるような声でした。

「嫌ですよね?罪もない人の人生がぐちゃぐちゃになってしまうのは。
 嫌ですよね?本当に罪のある存在がのうのうと他者を犠牲に過ごすのは。

 ならば、解いてみるがいい。
 他ならぬ魔法で紐解くミステリー。
 安楽椅子の上でこそ俯瞰できる何かがあるはずです。
 平行思考と想像力があなた達の唯一の武器ですとも。

 今宵、この時が知的かつ優雅な一瞬となることを、
 永遠を生きる我ら魔法世界の民を殺す唯一の毒“退屈“を
 忘れる一時となることを、
 心の底から望んでいます。」

貴方がどうしてここに来たのか?
それは終ぞわからぬまま、
魔法の魔の字も知りはしないし、
トリックだってわからない。

わからなくても“その志“が貴方の胸に燃えたから。
貴方の、正義の魔法使いとしての物語が、ここから幕を開けるのです
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Case.1 『愛憎の寺葉荘』

シェアハウス「寺葉荘」で起きた密室殺人事件。
密室、停電、アリバイ。これは果たして不可能犯罪か否か。

[迷宮構築深度C-]
『人間界の警察が現場検証する程度の反魔法毒素で自然淘汰される存在ですが
皆様新米の魔法使いには肩慣らしとしては充分でしょう。
まずは「自分にできること」そして「何をすべきか」を学んでいただくのには
充分な現場かと思います。』

«討伐対象»
虚言級:邪淫のココン
後述する淫蕩のデカダモスの幼体で見た目はバランスボール大の白い球体、繭のイツワリ。
知能が低く、簡易的な密室殺人しか構築ができない。
活動する際には繭状の体表に無数の亀裂を作りそこから多数の眼を開くことで殺害対象を確認。繭から糸を伸ばして絞殺する。

虚像級:淫蕩のデカダモス
ココンの成体。蝿と蛾と蝉を複合させたような醜悪な姿をした昆虫型のイツワリ。
毒の鱗粉、人の聴覚をうばう羽音等、大量殺人にも繋がるほどの被害を及ぼすが
大抵の場合幼体時点に人間界の警察による現場検証程度の反魔法毒素で消失する為討伐対象に上がることが少ない。

※作者コメント
CPチュートリアルとして20分程度で作りましたので粗があるのはご愛嬌。
トリックも“密室トリックの王道“で行きましょう。
まずはシンプルに……『さぁ、犯人はだぁれ?』

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Case.2 『小原座の殺人』

某大学の演劇部が毎年合宿に使っている
劇場併設の洋館「小原座」で起きた密室殺人。
墜ちたる豪奢が劈くは嘘か真か友情か……。

[迷宮構築深度B+]
成体のイツワリの討伐命令が下りました。
ありふれたイツワリですがその実力は折り紙付き。
ミステリーの基本骨子「ハウダニット」(どのように)から紐解けば、
おのずと寄生対象はわかるはずです。
古典的トリックによる様式美を重んじたイツワリ狩りを期待します。

«討伐対象»
虚像級:傀儡のファントマラーネア
大蜘蛛型のイツワリ。腹の上部にファントムマスクのような模様があるのが特徴。
腹から出した糸を器用に手繰り、人の死体でできた人形を操る。密室という巣を作り出した後で対象を人形を使っていたぶり殺し捕食する。蟲系統でありながら人形を使って会話が可能な程の知能があるようで、残虐性も持ち、罠にかかった人が恐怖することそのものも楽しんでいる節がある。人間としては一番襲われたくないイツワリである。
__『チュぎ、ドヤって、コロす? コロっず?』

※作者コメント
トリック自体は中学生の時に読んだものから着想を得ました。
リファインにリファインを重ねて少し難しく。
皆様のレベルを確認するのにちょうど良いかと。
ミステリー好きの方でさえご満足していただけるであろう古典に則った出来でございますので、
甘いものを傍にご用意いただいてお楽しみくださいませ。
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Case.3 『溺れた人魚の哭く夜に』

とある高校の屋内プールで自殺と思われる男子高校生の水死体が発見された。だがしかし、奇妙でしかないその自殺方法と自殺理由のなさから「何かに惑わされたのではないか?」と実しやかに囁かれるようになる……。“ねぇねぇ知ってる?プールで泣いてる『人魚』の話…。“

[迷宮構築深度C+]
新種のイツワリが発見されました。
自殺にしか思われない状況を作り出すほどの高い知性を持つイツワリであると思われます。
返し手に用心しながらホワイダニットから切り崩しましょう。

«討伐対象»
虚像級(暫定等級):誘惑のジェリーゴーラウンド
クラゲ型のイツワリ。
悲しげな表情をたたえたフランス人形のような本体を持つが、半透明のスカート部分が肥大したその様はエチゼンクラゲにも見える。触手を対象が望むものに擬態させることができ、擬態に誘き寄せられた対象をスカート内に閉じ込め窒息させた後、魔力や生命力を根こそぎ吸い上げるようだ。
外傷がないこと、水死体に偽装ができるという点でこのイツワリによる殺害の発覚が難しく、今まで報告に上がらなかったと思われる。
____『ああ、苦シぃの。クル死ぃ。』

※作者コメント
大学生の時分に作り上げたお話の“if“として殺人事件を起こしたものです。
トリックも純正品。犯人のこと、責めてあげてくださいね。
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Case.4 『春紫苑の花束を貴方に』

とある民家、とある一家。
そこで起きた殺人事件。被害者は認知症を患った高齢女性。
第一発見者でもある家族は言った「わたしが殺しました。」
警察が介入するも第一発見者が犯人であるということで結論づけられたこの事件。
動機も十分で、状況証拠やアリバイ調査の結果彼以外に犯行はありえない。
なんの変哲もない、現代社会と介護疲れが生んだ悲しい殺人事件……。

だがコトワリシステムはアラートともに告げた。
“イツワリ反応検知、各員領主ニ告グ。至急討伐サレタシ”

[迷宮構築深度B]
これは驚きました……。行動原理ロジックエラーを主張することで存在確立するだなんて……わかりやすく言いましょうか。「被告が殺したのは私がそう唆したからだ」と主張しているのです。つまり今回現実世界で犯人だと言われている人物は犯人ではなく、それ以外の者での犯罪立証に加えて「嘘の自白をした理由」を解き明かさねば存在否定できません。これはイツワリ狩りではなく、裁判の弁護のようなもの。調べれば調べるほどに、被告はクロです。度重なる真実を前に、あなたは人を信じられますか?

«討伐対象»
虚像級:教唆のクーピアス
コラージュでできた天使のような姿のイツワリ。臀部に毒袋を持つその様はまるで蜂のようでもある。自身では絶対に手を下さず、人間に『魔』を刺して洗脳し殺させる性質を持つ。
人間による立証だけではその殺人方程式を崩すことができない為、
その存在否定の難易度、つまり存在強度が非常に高い。
ごく稀に魔力を持たない人間にも見えてしまうほどであり、これが諺に転じたとか……。
__『殺したっていいんだよ…人は、殺せるようにできてるんだから。』

※作者コメント
ただ真相解明や捏造するのも面白くない……なくない?
ということで作らせていただきました“犯人弁護型”。

動機捏造、別の人間の犯行説etc……遊びがない中でいかに遊びを見出せるか?
そんな限界に挑んでいただければと思います。

……とまぁ最初はそんな感じで作ってましたが、
思った以上に筆が乗ってしまいまして……。
もしも、真摯に謎に挑んで頂けたなら…
それはもう望外の喜びでございます。
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Case.5 『至高の褒美が消えたワケ』

家族みんながそれを虎視眈々と狙っていた。
人の目を盗み、我こそがそれを得ようとしていた。
そう。冷蔵庫には至高のご褒美が入ってる。。はずだった。

「誰よ!!!私のプリン食べたのはァァァァァァァァァァぁ!!!!!!!!」

[迷宮構築深度C]
はぁ。。ふざけたイツワリもいたものです。
おやつを食べるだけで存在を主張するイツワリなぞ、図々しいにもほどが……。
……いやなんですこの存在強度数値???プリン食べただけでC????
私、もしかして壊れてます?いやそんなことは……。
と、とにかく!これから先はきっとより難易度の高い討伐対象を要求されるはず。
箸休めに【人の死なない物語】など、いかがです?

«討伐対象»
虚言級:泣呑のポポトード
シルクハットを被り、ピチピチのスパイスーツをきたカエルのようなイツワリ。
目の下に涙型の模様がある。
カメレオンのように自身の色を変えたり、舌を伸ばしてアクロバティックに移動して
誰かが大事に置いておいた食物を誰にも知られずに盗み食いするというとても迷惑なイツワリ。飢饉の起きている場所等に発生するでもない限り人の生き死にには関わらない為、別段討伐してもしなくても不便はないが、魔力リソースの塊としては非常に優秀なので討伐に組み込まれることが多い。ただ、貯めに貯めた魔力はさらに強大なイツワリを誘き寄せることもあり、やはり『討伐するに越したことはない』と断じられる可哀想なイツワリ。………ごく稀に、人を誤呑してしまうこともあるとか、ないとか。
ーーー『僕はちゃんとここにいるケロ!目に見えなくてもここにいるケロ!!』

※作者コメント
さて、たまにはこういうのもいいだろうと。
捏造のルールを再確認するためにもと思いご用意させていただきましたシナリオです。
ただ……もちろんこちらも性格の悪い梨子木印の純正ミステリー。
気づいてしまえばあとは簡単ですが………。ええ、私、嘘はつきませんので。
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Case.6 『木ノ花昨夜血ニ濡ルヤ』

とある農業高校の同窓会。
深夜、大型温室の中に埋めたタイムカプセルを掘り起こす青年達は
懐かしさに心躍らせる。

しかして掘り起こされたのは絶望の種。
その夜、疑心の芽は芽吹き、惨劇が花開く。

そして……誰もいなくなった。

[迷宮構築深度A+]
過去討伐に失敗しているイツワリが再出現いたしました。
皆様方におかれましては初の“大量“殺人現場です。
登場人物全員が死亡しているこの事件。
犯人は誰?動機は?どうやって?
皆様が魔法使いだからこそ
真相に至れる謎があるということを改めてご堪能くださいませ。

«討伐対象»
虚構級:殺意のシロツミクサ
イツワリでありながら植物。多種多様色とりどりの花が咲く一本の低木樹のような形状を持つが、葉の一部が四葉に別れていて目のような模様がついているのが特徴。

人間の殺害方法は
蔓を自在に操ることによる絞殺。
鋭利な根や枝を突出させての刺殺。
刃物のように鋭い葉を用いての裂殺。
カズラのようなものに封じ強酸性の液体をふりかけて溶殺。
毒性のある花粉をふり撒くことによる毒殺。
種を銃のように飛ばすことによる射殺etc.

人を養分としているわけでもなく、ただただ殺すことに特化していることから非常に高い殺意、つまりは強大すぎるほどの負の魔力で形成されているものと思われる。
反魔法の毒素に大変強く数人程度の同時観測では消失しないという傾向上、人間界の警察官程度では否定できない為、事件風化に伴う魔力減衰否定法も不可。
よってコトワリ機関によって厳重監視体制、及び封印がなされていた。
__『花弁…占い。しま、ショウヨ。ほら、一枚、ずつ、優しく、ヤサシク。殺す、殺さない、殺す、殺さない、殺す、生かさない、殺す、死なす、殺す、殺す殺殺殺殺……。残念だけど占いだから、むゴク、くルシく、コロシマショウ…ネ?』

※作者コメント
正直純正ミステリー小説としては表現が難しく、
安楽椅子探偵モノとしても微妙。
赤と黒というゲームでようやっと光るミステリーだと言えます。
残虐描写マシマシ平行思考ゲームの詰め合わせとしてお考え頂ければ幸いです。
そしてこれもまた、貴方は犯人を否定できますでしょうか?
さぁ、あなたの望む物語はいかに?
推理はスカッと、物語はモヤっとしていただければ幸いです。
_________________________

Case.7 『セミラミスは海上に嘲笑う』

豪商、黒澤財閥が所有する豪華客船“クイーン・セミラミス号“
次期代表とも噂される双子の誕生日パーティーで凄惨な殺人事件が発生。
通信途絶。爆発する管制室。操舵不能。我先にと逃げ惑う乗客達。不幸にも逃げ遅れた乗客達による疑心暗鬼の極限状態の中、第二第三の殺人事件が!

双子が遺したダイイングメッセージ。
対照的な殺害方法、犯人は複数か単独か?
濃霧の中、黒煙を上げて海上を滑るその大きすぎる棺桶が行き着く先は??
今宵、古典にして最新の殺人事件を貴方に。

[迷宮構築深度S]
指名手配中のイツワリが出現しました。
二体で一組。必ず死体は偶数個。
殺しに"様式美という制約(ギアス)“を自ら設けるイツワリなだけに、
存在強度が異常なほど高くかつて討伐隊も組まれましたが皆返り討ちにあっています。
見た目に騙されず、相手のペースに飲まれることがございませんように。
洋館を擁した客船という広大な舞台で、できうる限りの力を尽くし
古典トリック、新気鋭トリック、全てを取り入れて取り組みましょう。

«討伐対象»
虚構級:狂笑道化ベルヘル=メルヘル
完全ヒト型で二人一組のイツワリ。仮面をつけた子供のピエロような容姿。
様式美に拘る節があり、かたや残忍な殺害方法、かたや安らかな殺害方法という対照的な殺人を全く同一のタイミングで行うことが特徴。

嘲笑のベルヘル
楽観的な話し方で人を馬鹿にするような戯けた動きをする子供のピエロ。
仮面はニヤニヤとした笑い顔。
「爆睡中の寝顔みたいな?馬鹿丸出しの死に顔を見るのが大々だ〜い好き」
という理由で綺麗な殺し方を心がけており、
急所刺殺もしくは狙撃、絞殺や毒殺等の遺体が綺麗に残る殺害を好む。
最近のマイブームはめっちゃ苦しみながら死ぬ毒を蠱毒で作ること。
余談だがメルヘルとは性別が異なる。

空笑のメルヘル
悲観的な話し方で人を過度に憐れむような戯けた動きをする子供のピエロ。
仮面は涙を流した泣き笑い顔。
「どうせ華のない人生、散り際くらいは派手な方がいいでしょ……?」
という理由で残忍な殺し方を心がけており、
顔面破損や腹部切開等の遺体がボロボロになるショッキングな殺害を好む。
最近のマイブームはマニアックな拷問道具をネットで取り寄せること。
余談だがベルヘルとは性別が異なる。

__『楽しいねぇ!楽しいねぇメルヘルぅ!こんなにおもちゃがいっぱいだよ!』
  『悲しいねぇ、悲しいねぇベルヘル……今日、全部壊れちゃうんだもの……。』
  『『ひひっ、あは、あはっぎゃはははははははハハハハハハハハ!!!!』』

※作者コメント
某アンチミステリー作品に影響を受けたイツワリのキャラクターが先にできてしまい、それが犯す殺人はどんなのがいいだろう?トリックはどんな風なのがいいだろう?被害者はどんな風がいいだろう?ってことは動機はこうしよう……とあれやこれや考えるうちに「劇場版名探偵コ○ン風」の作品が出来上がってしまいました。読み物としてまとめたとしても意外と骨のある作品になると思いますので是非ともふるって挑戦下さい。
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Case.8 『死人にクチナシ』

奥多摩山中にある旧家「神崎家」。
古より続くその家系が土着信仰として毎年行う
「朽無祀(クチナシマツリ)」という儀式。
不信心者によって破綻した儀式は惨劇という祟りを生んだ。

殺害不可能領域。
残忍に過ぎる殺害方法。
合わない死亡推定時刻。
童歌に準えた予告殺人。
環状密室。全員の完璧なアリバイ保証。
数多の祟りが一人、また一人と殺していく。

これは謎解きではない、
だって神は否定できないのだから。

これはホラーではない、
だってそこに確かにあるのだから。

これはスプラッターではない、
だって死ぬのはヒトデナシなのだから。

そう、これはミステリーではない。
祟りを否定する“神殺し“。

[迷宮構築深度EX]
完全新種のイツワリが発見されました。
計測された魔力は全項目異常数値、測定不能。
イツワリ最上位種『虚無級』の降臨です。

「誰が」「何故」「どのように」
その全てが存在保護障壁に守られている上に
自律否定論理術式も全て無効。
これほどまでの存在数値は魔法史上でも類稀でしょう。
存在を許してしまえば、魔法界はもちろん人間界においても
人的被害は大規模の天災を上回ることは間違いないです。

故に難易度は「最上級」
果たして神は、存在するのか?しないのか?

今までの経験を下に、真実に至ってください。
数万人の命が、あなたにかかっています!

«討伐対象»
虚無級:静神 クチナシ
完全なるヒト型。神崎家によって信仰されていた神で静寂を尊び、死人を安らかな御山の秘境へ導くとされる。背に生える六枚の翅で空中戦闘も可能な他、手は猛禽や恐竜のそれを思わせるような肌質で鋭利な鉤爪を持っているため、接近もまた大変危険。

「黙」という紋がついた一枚布で顔を覆っている為、その表情は読み取れない。
己以外が音を発することを許さず、異音に関しては異常なまでの敵意を持つ。人差し指を口の前に立てるだけで何か音が鳴ると音源を自動的に真空の刃で切り刻む結界術式を構築する。また、腕の長さが体長倍以上もあるミイラのような怪異を無尽蔵に生み出し眷属として使役することができる。それら眷属一体一体が虚像級程度の魔力を持つため並の魔術師には対処不可能。
___『人間(ざつおん)は……聞くに耐えぬ。』

※作者コメント
これは、私の原初の志。
動機、トリックは基本純正作者原案です。
数度のテストプレイを重ねてきましたが、
一度たりとも真実に辿り着けた方がいらっしゃいません。
ですが、こればかりは、この作品だけは絶対に私は手を抜きません。

卑怯だなんて言わないで。
すごいだなんて言わないで。
なぜならそれは、無意識に神を認めているだけなのだから。

遊び、容赦は一切なし。
解けるものなら解くがいい。
神をも殺して見せるがいい。
魔法はこの世にあることを、どうか証明してくださいませ。

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