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BABYMETALが売れるまでの話

さくら学院重音部として「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のPVがyoutubeにアップされたのが2011年10月12日。女の子がメタルをやっていること自体に珍しさは感じなかったけども、メタルらしいベタな中毒性となによりPVが良かったことがあって、当時ハマっていた。

「さくら学院」は「成長期限定ユニット」と銘打ち活動しているアイドルグループ。学校をモチーフにしていて、BABYMETALも当初はさくら学院の「重音部」という扱いでデビューした期間限定ユニットだった。

なぜさくら学院をチェックしていたのかと言うと、TVアニメ「絶対可憐チルドレン」とタイアップして活動していた「可憐Girl's」の「Over The Furure」という曲が大好きだったからだ。

活動していた当時は「Perfumeの妹分」として話題だった可憐Girl'sは、絶対可憐チルドレンの放送終了とともに活動を終了する。この解散を受けて発足されたのがさくら学院。SU-METALこと中元すず香も可憐Girl'sのメンバーだった。

「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の最初の収録も2011年4月27日に発売されたさくら学院のコンピレーションアルバム「2010年度 〜message〜」だ。この音源がリリースされた当時は元Cymbalsの沖井礼二が作詞作曲した「Dear Mr.Socrates」のほうが話題になっていたように思う。

可憐Girl'sやさくら学院をチェックしていたせいでBABYMETALを周囲に勧めて回っても「また子どもにハマッている」という扱いしか受けなかった。

BABYMETALの話に戻ろう。

「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のアップロードから一週間が経過した頃、PVが海外でバズりはじめた。残念ながら記憶しか頼りにできるものがないけども、はじめは東南アジア圏で注目されはじめたように記憶している。しかし、それも数日間の話で、すぐに言語の壁を飛び越えた壮大なバズへと拡散されていく。

今ではほとんどリンク切れになっている個人のブログやtumblerから始まって、10月27日に海外の大手ネタ系ニュースの「Laughing Squid」に掲載される。

この頃はまだキワモノ扱いだったように思うが、なかなか熱を入れて紹介されている。

そして2011年10月28日には、老舗インディー系メタルニュースサイト「MetalUnderground」への掲載。

極めつけが同じく10月28日、メタルニュースサイト「blabbermouth」への掲載だったと思う。当時のblabbermouthはロードランナーレコーズにホスティングされていた。

この拡散を受けたBABYMETALサイドの動きは速く、アップロードされた時点では日本語の説明文しかなかったyoutubeの概要欄には、ほどなくして英語、フランス語、中国語、スペイン語が加えられた。

また、10月24日にはfacebookページが開設、海外ファンの情報交換を促していた。公式コミュニティが出来たと思って覗きに行ったら、日本語がほとんどなかった時の衝撃は覚えている。

そして2012年2月24日が「いいね!(Edit ver.)」がアップロードされる。なぜ唐突に「いいね!」だったのか、この流れを知らないと理解できないだろう。また「いいね!」がメタルとEDMとラップという異常な楽曲になっているのは、海外への意識があったと思えば納得できる。

でんぱ組 inc、きゃりーぱみゅぱみゅの例を出すまでもなく海外マーケティングにはオリエンタリズムが取り入れられる。BABYMETALはメロイック・サインとお稲荷さんを融合させた。

しかし「いいね!」を初めて聴いた時、素直に「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の路線がよかったと感じた私の気持ちが多数派だったのかどうか定かではないが、BABYMETALはメタルに回帰していく。

これは「イイネ!」告知PVだが、すでに動画中のテキストは英文である。

(余談だが、BABYMETALが切り離した「イイネ!」のエレクトロ要素は「科学究明機構ロヂカ?」が回収するはずだったのではないか、と思っている)

臨終懺悔、COALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKI、THE MAD CAPSULE MARKETSの上田を巻き込んで、メタルとして妥協のない楽曲を提供しながらも、最初にYoutubeから海外へ広がったこともあり、BABYMETALのPVと映像演出への意識は高く維持され続けている。

それは現在でもライブに反映されていて、言語の壁を超えるためにナレーションとビジュアル演出を多様して、メンバーは無理に英語を話さずに kawaii を通してファンとコミュニケーションしている。

一時期「BABYMETALはなぜ海外で成功したのか」という問いに対して、楽曲のクオリティやパフォーマンス、メタル、アイドル、ポップカルチャーなどのバズワードを散りばめたテキストが散見されたけども、一番の理由は今、目の前にいるファンを見ていた。ただそれだけのことだと思う。

「海外にファンがいるなら英語で情報を発信しよう」

「海外ユーザーの多いfacebookにコミュニティを作ろう」

「Youtubeやfacebookで知ってくれた人にもアピールしよう」

求めている人がいるのなら、国際対応した立派なウェブを作るよりも、海外のメディアへ展開するよりも、Youtubeの概要欄だろうがfacebookページだろうが、いま手元にある、すぐに使えるものを使って対応する。そんな D.I.Y の素早いフィードバックを重ねた結果が、BABYMETALの現在なのではないだろうか。


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