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39 かさぶた

傷を負っても時間が経てばかさぶたができて、剥がすと新しい皮膚ができていたり、まだ血が出てくることもある。

僕は今、そんな状態である。

3月3日に人生で初めて大きな怪我を経験してから2ヶ月が経過し、MRI検査を受けてきた。

骨挫傷の炎症もだいぶ良くなって、靭帯そのものの損傷の影もほとんど消えた。

先週から、階段や坂を走れるようになった。
まだ平面を全力で走ることは難しいが、ここからの経過はだいぶ早まることが予想される。

この2ヶ月、歩き方や重心の置き方に気をつけながら生活をしてきた。
それはまるで「かさぶた」を剥がさないようにするかのようだった。

しかしこれから、ジョギングし、ダッシュし、急ストップし、右足に全体重をかけていく。
それはどこか「かさぶた」を剥がす行為に似ている。

血が出てこないように、新しい皮膚が出来上がっているのかを確認しながら、慎重に剥がしていくような。

下手をすると、また血が出てきてこれまでの努力が無駄になったり、綺麗に治らなくなるかもしれない。

だから、できる限り丁寧に、でも迅速に、復帰に近づいていきたいと思っている。


怪我をした後、たくさんの手紙を頂いた。

どれも優しさとあたたかさが詰まっていて何度も励まされた。

ある日、便箋から手紙を取り出そうとすると、何かがポロッと足元に落ちた。

拾い上げるとそれは絆創膏だった。

何かの間違いで偶然便箋に入ってしまったものだと思っていた。

しかし、手紙を読んでみるとその絆創膏が意図的に入れられていたことがわかったのだ。

手紙には「はやく、なおりますように!」と幼い子どもの字で書かれていて、その下にはその子の親御さんが書いた文章も添えられていた。

どうやらあのアクシデントを見ていて、「はやく治るように絆創膏を送りたい!」という気持ちから、手紙と一緒に絆創膏を送って欲しいとお願いしてくれたそうである。

その絆創膏は、直接的には膝に効き目はないかもしれないが、間接的に大きな効き目があったことは間違いない。

この手紙を送ってくれた親子にこの文章が届くのかはわからないが、届いていたら伝えたい。

絆創膏のおかげで早く治りそうです。
ありがとうございます。


そして、これは皆さんへ。

この2ヶ月を振り返ってみると、みんなからの手紙やSNSでのメッセージ、応援の言葉は絆創膏のようでした。

怪我をしてから、痛みもあり不安な気持ちで溢れそうなとき、みんなの言葉が絆創膏のように、傷(怪我)を覆ってくれていました。

それが痛みからも、取り巻く衝撃からも守ってくれていたように思います。

たくさんの人に応援され、支えられた2ヶ月でした。

皆さんにも本当に感謝しています。


ここまで、怪我をしてからの2ヶ月間を思い出しながら書いていた。
かさぶたを剥がしたときに傷痕が残ったとしても、それは経験し乗り越えたという証明になると思うから、勇気を出してかさぶたを剥がしていきたい。

僕の場合は手術痕があるわけではないから、傷痕は見えない。

だが、この『  』~余白~で残した文章がその証明の代わりとなるはずだ。

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