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「サピエンス全史(上巻)」を読んで

昨年あたり話題になったサピエンス全史(上巻)を読了。

非常に読み応えのある内容で、「人間という生物の特異性」を理解する上で非常に面白い示唆を与えてくれる一冊。

特に、人間だけが持つ「想像上の秩序」という概念は非常に興味深い。

一般的に人間社会という集団において「見ず知らずの他人」との協力が必要不可欠であり、信頼関係のない相手とのコミュニケーションにおいて、想像上の秩序がいかに大きな働きをしているか、については目から鱗だった。


普段私たちにとって当たり前と思えるものの、実は大きな役割を果たしている、そんな気づきを与えてくれる良書である。

今回は上巻のみだが、下巻についても読了次第アップしたい。

以下読書メモである。


第 1部 認知革命

第 1章 唯一生き延びた人類種

  • 約200万年前から10万年前までの地球には、少なくとも6つの異なるヒトの種が暮らしていた。ホモサピエンスという私たちの種だけがいたわけではない。

  • 脳は思考力を与える代わりに、エネルギー消費や大きな頭蓋骨に入れなければならないという代償がある。また、二足歩行によって腰痛や肩こりなどの弊害も生まれた。

  • また、女性に至っては二足歩行によって出産のリスクが高まり、子供をある程度未熟な状態で出産することになる、結果的に赤ん坊を何年もかけて養育しなければならなくなった。

  • 未熟な状態の子供を守るため、人類には社会というつながりが必要になった。

  • もともとサピエンスは生態系の中でトップにいたわけではなく、進化によって突然トップに躍り出た。そのため、生態系の中で順応が追いつかず、ライオンのように無駄に多くを食べない、という本能から逸脱してしまっている。

  • 火を使えるようになったことで、調理の概念が生まれ、短時間かつ様々な食物を摂取できるようになったことは大きな進化。

  • いくつかの異なる人類種が共存する世界では、文化や社会はどうなっていただろうか。 過去 1万年間にホモサピエンスは唯一の人類種であることにすっかり慣れてしまったが。


第2章 虚構が協力を可能にした

  • 人間の言語が持つ真に比類ない特徴は、全く存在しないものについての情報を伝達する能力。

虚構、つまり架空の事物について語るこの能力こそが、サピエンスの言語の特徴。

  • 虚構のせいで人は判断を誤ったりすることもあるが、物事を他人と一緒に想像することができるようになった。これはつまり、赤の他人と著しく柔軟な形で協力できるということ。

これにより一般的な猿の群れが50匹が限界とされている一方、原始人類の集団は150名、そして街のような大きな社会を築くようになった。

  • 会社という概念も、人類の虚構が生み出しているものであり、法的虚構である。例えば企業が倒産した際に、オーナーそのものが弁済義務を負わないのがその一例。

  • もし本当に存在するものしか人間が話すことができなかったら、国家や教会、法制度を創立するのは難しかっただろう。

  • 私たちのチンパンジーとの最大の違いは、多数の個体や家族、集団を結びつける神話という名の接着剤の存在。


第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし

  • 現代の私たちの社会的特徴や心理的特徴の多くは、農耕以前のこの長い時代に形成されたと言われている。食習慣や争い、性行動は全て起因していると言われている。

例えば高カロリーの食品を好むのは狩猟採集民の時代の食糧不足によるもの。

  • 当初の集団は、家畜などは存在しない人類のみの集団だった。そこに最初に入った家畜は犬で、狩猟に使われていた。

  • 実は当時の人類の脳の大きさは現代人より大きかったとされており、これは住む場所場所に関する情報や知識が非常に多かったと推察されている。一方で、現代人は生き延びるために他者の技能に頼れるようになったため、相対的に凡庸な遺伝子でも次の世代に伝えることができるようになった。

  • 狩猟採集民の食生活は多様なものにはあふれており、現代の農耕民よりも健康的だったと言われている。また、旱魃などの被害も比較的少なく、災難に関しては農耕社会よりも楽に対処ができた。

  • 戦争は農耕社会になったことによって持つもの持たざるものが生まれたことが発生源とする説とそうでない説に分かれている。


第4章 史上最も危険な種

  • 海という障壁は、人類だけでなく、あらゆる動植物の多くが外界に行くのを妨げていた。そのため、地球上の生態系はいくつか別個に分かれ、特有の動植物群から成立していた。

  • その分割状態に終止符を打ったのが、ホモサピエンス。航海技術もままならない中で様々な島へ移住をしていった。

  • これまでの動植物は、特定の場所に行き着きそこに順応することはあった。しかしホモサピエンスは、移動した先の生息環境を劇的に変えてしまうことが他との違い。

  • 人類が外界の新たな部分に住み着くたびに、大絶滅が起こっている。

  • また、オーストラリアの次に進出したアメリカ大陸では、シベリアを渡るにあたってホモさぴえんすは寒さを克服した。それは衣服や狩猟技術の進化によるもの。

  • 様々な研究の結果、ホモサピエンスの進出によって多くの動物が絶滅したという結論は避け難い。

  • 狩猟採集民の拡がりに伴う絶滅の第一波が起き、農耕民の拡がりに伴う第二波が起こった。そして今日の産業活動が引き起こしている第三波と続く。


第2部 農業革命

第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇

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