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「戦略質問」を読んで


企業における課題形成から戦略立案、実行までのプロセスをわかりやすい形で理解できる本。
タイトルの通り、経営者への「質問」から様々な課題や戦略を炙り出していくスタイル。同じトピックでも、質問というスタイルにすることで、別の角度から企業や組織を見ることができるため、確かに面白い。
筆者は直接経営者と相対する立場のコンサルタントのため、経営者向けた質問で構成されているが、大企業のマネージャーなどでも同じような質問は活用できると思う。
特に、最後に書いてある「10のセントラルクエスチョン」は定期的に自問自答することで思考を整理できると思う。

以下読書メモである。

第1章 戦略立案には本当に3か月かかるのか

• 今や何かと「戦略」という言葉が使われる、日常茶飯事の言葉となった。
• 戦略立案の御作法が書籍で様々紹介されるようになる、戦略立案の工業化が進んだ。また、ネットの勃興により、様々な戦略が簡単にアクセスできることで、同質化も進んだ。
• 戦略や計画がいくら論理的によくできていたとしても、組織の底辺には複雑な感情が流れている。論理を超えた感情の理論がそこにある。
• 戦略の実行力を担保するものは、内容や明確性だけではなく、戦略の理解+当事者のワクワク感。具体的に言えば、その戦略がいったい社員や自分自身にとってどんな恩恵をもたらすか。
• 机上で勝てない戦略は、実行で勝てることはない。勝ったとしてもそれは運頼みのゲームでしかない。
• また、戦略という基準(仮説)があるからこそ、負けた時にその理由が分かり、それが知見として蓄積される効果がある。
• 会社の組織の「あるべき姿」は何ですか?から考えるのではなく、「あなた個人の野望は何ですか?」と問うと、生々しい話が生まれ、あるべき姿を捉えるヒントが生まれる。(○○社を何としても叩きのめしたい、等)
• 戦略立案のプロジェクトをしていると、各部署から集められた代表者が、その部門の利益代表のようになってしまい、なかなか全社最適な判断ができないことがある。
• 大企業の戦略立案には3ヶ月ほどかかることが多いが、多くは社内調整。人間は変化を嫌う生き物であり、その排除しようとする心を変えるのに時間がかかってしまう。また、丁寧に時間をかけることで、かえって戦略性を削いでしまう。
• 欧米では、WarRoomと呼ばれる、少数で戦略を一気に練り上げる手法が取られる。

第2章 ウォールーム 少人数、短期間で実施

• 戦略立案の優劣は、権限を受けた少人数のタスクチームでの超短期、真剣勝負の議論、つまりは検討形態で差がつく。
• 昔のコンサルタントに求められる価値は、情報収集。だがネットの勃興で今は、社内調整の役割に変わってきている。(外部に言われると弱い大企業ならでは感あり)
• 一方、中堅企業であれば、勝つための発想出しを求められることが多い。
• ウォールームが成立する前提条件は、参加者がそれなりの種類と数の打ち手を持っていること。互いの引き出しを披露して議論していくことが必要。
• ウォールームが持っておくべき4つのアングルは、
①ズームアウト(大局から見てみる)
②チェンジアングル(タブーを破って考えてみる)
③ディープダイブ(DX等、緊急性が低く置き去り問題を一気に解決)
④インサイドアウト(暗黙知を形にしてみる)
• 変革の6つのレバー(下記)を意識し、どのレバーを変えたり追加すればいいのか考える。
①マネジメント
②組織
③市場・顧客
④プロセス・IT
⑤人材
⑥商品・サービス
• 発想のスタートがひらめきであるのはいうまでもない。そのために、いかに相手の脳に非日常性を与えるかが重要。そのためには問いかけが大事。
(例 ポストコロナのビジネスは?のような抽象的な質問だと相手は模範解答しか返してこないが、コロナによって失ってしまう顧客は?といった具体的な質問であれば、相手の思考スイッチが入る)
• 組織の課題が全て解決できたら、何が実現できるのか?
という問いかけから、最後に行き着く姿、肝心となる戦略の魂が見えてくる。もし見えないのであれば、何かが抜けている可能性がある。
• もし今の会社が突然なくなったら、誰が悲しむでしょうか。という質問は、その会社のビジョンが今も正しく機能しているか、を確認するためのもの。
もし会社がなくなっても他の会社に顧客が頼るだけなのであれば、まずい状況。

第3章 ビジョンの意外な戦略性を知る

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