調子が悪いときほど「アドバイスしたい欲」が高まる

よく「女性の悩み相談に対して、具体的な解決策を提示すると怒られる。なぜなら、女性はアドバイスより共感を求めているからだ」という言説を耳にする。

けれど、本当にそうだろうか?

私は本当に困っているとき、ただ「そうだね、大変だね」と言われるのと有益なアドバイスであれば、後者のほうが嬉しい。

ただし、ここに注意点があって。

どんなアドバイスでもいいわけじゃなく、そのアドバイスが本当に有益なものである場合に限るのだ。

つまり、嬉しい順にランキング付けするならこんな感じ。

1位・有益なアドバイス
2位・共感



ワースト1位・無益なアドバイス

女性にアドバイスをしたら機嫌を損ねられた場合、相手が「アドバイスより共感を求めていたから」という可能性はもちろんある。

けれど、「有益なアドバイスを期待してたのに、無益なアドバイスをされたから」ということもありえると思う。

私は(性別問わず)人から相談されることが多いけど、だいたい、アドバイスをしない。

それは、「相手が共感を求めているから」ではない。

私ができるアドバイスなんて無益だろう、と思うからだ。

けれど、私も若い頃は友達に対して「求められてもいない無益なアドバイス」をしてしまうことがあった。

今思うと本当に恥ずかしい。別に、自分のアドバイスを有益だとカン違いしていたわけではないけど、「アドバイスに有益なものと無益なものがある」という大前提に思い至ってなかったのだ。

当時は、何も考えず思うままにポンポンと口に出していた。思慮が浅く、「思う」と「言う」の区別がついていない人間。クソリプする人も、きっとそうなのだろう。

大人になって少しはものごとを思考するようになり、アドバイスは口に出す前に慎むようになった(もちろん、アドバイスを求められた場合は別)。

自分のアドバイスは相手にとって無益かもしれないのに、なぜみんな、アドバイスをしてしまうのか。

それは、誰の心の中にも本能的に「アドバイスしたい欲」があるからかもしれない。

私が自分の中の「アドバイスしたい欲」を自覚したのは数年前の春。

そのとき、私たち夫婦は生き方を少し路線変更した。すると、「求めてもいない無益なアドバイスをしてくる人」がわらわらと湧いてきた。

幸いなことに、私の周りは「そんなのうまくいかないよ」「やめときな」といったネガティブ系アドバイザーはいなかった。

だけど、「応援してるよ!」と言いながら「ああしたら? こうしたら?」とトンチンカンなアドバイスをしてくる、おせっかい系アドバイザーはけっこういた。

おせっかい系アドバイザーは、私たち夫婦に好意的だ。善意のアドバイスだから無下にしにくい。けれど、どうにもトンチンカンで無益としか言いようがない。

当時の私は、これらの無益なアドバイスに辟易していた。

ネットスラングで、何かにつけて「不謹慎だ!」と騒ぎ立てる人のことを「不謹慎厨」と呼ぶけど、私はアドバイスをしたがりの人たちを内心で「アドバイス厨」と呼んでいた。

観察していると、アドバイス厨の人たちは総じて友達が少ない。少数の友達と密な関係を築いている……というわけでもなく、コミュニティの中で孤立しがちな人ばかりだった。

アドバイス厨だから孤立してしまうのか、孤立によって(コミュニケーションはかりたい一心で)アドバイス厨になったのか。鶏が先か卵が先か、みたいな話だ。

あと、仕事や家庭がうまくいっていない人が多く、「自己啓発にハマりがち」という共通点もあった。

それで我が身を振り返って気づいたのだけど、私自身も、うまくいってないときほど他人にアドバイスしたくなる(しないけど)。

もしかして、人はうまくいってないときに「アドバイスしたい欲」が高まるのでは……?

無意識のうちに、他人を救うことで人から必要とされたい(=自分を救いたい)と思うのかもしれない。

その後、自分の気持ちを注意深く観察してみた。

するとやっぱり、人に対してアドバイスをしたくなるとき、私はだいたいメンタルの調子が悪い。

メンタルの調子がいいときは、黙って相手の話を聞くことができるのに、メンタルの調子が悪いときは「それはさぁ……」と口出ししたくなる。

それに気づいてから、アドバイスしたい欲を自覚したら、「おっとあぶない。まずは自分を救おう」と思うようになった。人の振り見て我が振り直せだ。

「自分のアドバイスは相手にとって無益かもしれない」という前提は、誰もが持っていたほうがいいと思う。

「無益だろうが言いたくなっちゃうんだもん!」という人もいるけど、そういう人はせめて「自分はアドバイスしたい欲に抗えない人間だ」ということに自覚的でいたほうがいいんじゃないか。欲を制御できないって、人として重大なことだろう。

「自分のアドバイスは有益だから絶対相手のためになる!」と信じている人は……悪いとは言わないけど、私ならそっと距離を置こうと思う。





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花見の季節だからお酒のみたい。

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