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歴史学習の認識が変わった「ある本」との出会い【Aflevering.98】

 2019年、私がまだ高校教員をしていた頃の話です。当時は、3年生の「政治経済」と1年生の「世界史」を担当していました。3年生は大学入試に備えなくてはならず、そのため「政治経済」は完全に入試対策の授業をしなければなりませんでした。

 その一方で、入試のためだけの勉強に違和感があった私は、1年生の世界史の授業で、生徒たちが将来にも活用できるスキルを身につける授業はできないかと頭を悩ませていました。

 歴史とは何か?学習とは何か?学校とは何か?など、あらゆることを自分の中で問い直して、これまでやってきた授業方法をそのまま進めるのではなく、「歴史の授業」で生徒が成長するためには何が必要なのかをずっと考えていました。

書店に並んでいた「ある本」

 私自身が納得できる授業方法を探すために、書店に並んでいる本をなんとなく眺めていました。何気なく見ていたいくつかの本の中に、『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』という本を見つけました。

 この本には、私がこれまでに教科書で学んできたような、退屈な事象だけの羅列や少し無理を感じる解釈とは程遠い、歴史の面白さ以上に歴史を学ぶ重要性について改めて考えさせられる内容が書かれていました。

 著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏が展開する「人類の歴史」に対する考察に、私は夢中になりました。その内容はとても興味深く、私がこれまでに味わったことのないものだったのです。

 私は自分の授業方法について、これまでの人類の歩みを知り、今の自分たちがどう生きていくべきなのかを考えるための授業がしたいと思うようになりました。

 この本との出会いは、世界史の授業を変えることができたきっかけの1つで、ユヴァル氏は私にとっては教員人生に大きな影響を与えた著者です。多忙な業務の中、とにかく自分が自由に使える時間は、どこでもどんな短い時間でもずっと読み続けました。

 ユヴァル氏の著書は、過去・現在・未来の視点に分かれて書かれています。
 私がこれまでに読んだ著書は、

・『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』 
 人類が歩んできた歴史が現代にどのような影響をもたらしているのか
・『ホモ・デウス-テクノロジーとサピエンスの未来』 
 人類の未来が今後どのように変わっていくのか
・『21 Lessons-21世紀の人類のための21の思考』
 21世紀をどう生きていけばよいのか

 これらの本には、ただの教養というだけではなく、私たちが幸せに暮らしていくためのヒントが書かれています。

「人間の生き方」のヒントをもらった

 これからいくつかの記事に分けて、上記の著書の魅力についてまとめていきたいと思っています。ユヴァル氏の著書で、私の最も魅力を感じたのは「人間は文明の発展によって本当に幸せになれたのか」に焦点を当てているとこです。

 これらの著書自体は書かれていることが難しく、読むのにかなり苦労しました。しかし、ホモ・サピエンスの存在そのものについて考えさせられたと共に、私たちの生活にある当たり前に存在しているもの(貨幣、法律、人権など)に関しての新しい捉え方が書かれています。
 そして何よりも考えさせられたことは、このあまりにも増えすぎた私たちホモ・サピエンスは、人間が勝手に作り出した実在しない「虚構」というシステムの中でしか生きていけないということです。人間が作ったシステムというのは実在するものではなく、人間が作ったものだからこそ矛盾や欠陥があるのです。
 何かの問題に直面した時、その問題を理解するために最も手っ取り早い方法は、物事を二項対立や善悪のみで考えることです。そして、既に考えることをやめてしまった人たちはその一見わかりやすい判断に飲み込まれてしまいます。しかし、二項対立や善悪のみによる判断で根本的な問題を見つけるのは困難です。問題に対して、如何に複眼的に見てとることができるかが、私たちの幸せにつながるという考えがとても興味深かったです。

 私がユヴァル氏の著書から学んだことで、これからも教育に関わる者として大切にしていきたいと思った学びをこれから記録していきたいと思います。

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