『失踪世界』

隣あっていると、愛しさは募るばかりで
一杯になるんだ、もう弾けそうなくらい
記憶を取り出して、過去へと挿入しよう
とっておきの、いちばん甘い思い出は？

仮にキミがテーブルになるならば
キミは僕のひじくらいの高さだ
キミのふぞろいな脚はがたがただけど
キミは僕の理想のテーブル
仮にキミが茄子になるならば
キミは紫色した僕の相棒だ
キミの体は傷だらけだけど
キミは僕の理想の茄子だよ
僕は探してる

仮にキミが猫ならば
ちっちゃな子猫ならば
キミは青目のシャム猫かな
ミャオミャオおしゃべりで
わがままでヒステリックで
絶対ににゴロゴロなんて鳴かないね
仮にキミがステーキならば
かわいらしいフィレ肉ならば
マッシュルーム・ソースがかかってて
外はこんがりすてきに焼かれた
ミディアム・レアのお肉かしら

仮にキミが花になるならば
きっととんでもなくデリケートで
気まぐれにしか咲かないだろうね
キミは僕の理想のお花だよ
仮にキミが人間になるならば
キミの手の温かさをいっぱいに感じたいんだ
ちょっと息がくちゃくて、髪の毛なんかもうさんざんで
キミは僕の、世界でただひとりの完璧な人間
僕は探してる

仮にキミがカケラならば
うんちのカケラならば
きっとぜったい…うーん
何て、何て言えばいいのかなあ？
あの言葉は、何だったかな？
「イ・カ・レ・テ・ル」？
仮にキミがここに居てくれたならば
そのままのキミが居てくれたならば
僕はそう、うーん…
あの、何て、何て言えばいいんだろう？
あの言葉は、何だったかな？
「ア・イ・シ・テ・ル」？

僕は探してる
僕はキミを探してるあらゆる場所に
世界のあちこちに、キミの痕跡が見付かるんだよ
僕は探してる
僕はキミを探してるあらゆる場所に
なぜだかあらゆる物に、キミは変身しちゃうから
僕は探してる、探してる、探してる
探してる、探してる、探してる
あぁ
僕は探してる、探してる、探してる
僕の過去も、キミと一緒に消えちゃったから

僕らはそれぞれ、愛のバケツだ
どちらかは空っぽで、どちらかはいっぱいだ
僕らをバラバラにして、粉々にしてほしい
そして復元してほしい、変わってしまった僕らを

仮にキミが花になるならば
きっととんでもなくデリケートで
気まぐれにしか咲かないだろうね
キミは僕の理想のお花だよ
仮にキミが人間になるならば
キミの手の温かさをいっぱいに感じたいんだ
ちょっと息がくちゃくて、髪の毛なんかもうさんざんで
キミは僕の、世界でただひとりの完璧な人間
僕は探してる……

仮にキミが犬ならば
ちっちゃな子犬ならば
ポフポフポフポフ走ってる
仮にキミが果物ならば
トマトならば
とってもジューシー

(Photo by Alex Perez on Unsplash)