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【Edge Rank 1126】午前3時に家を抜け出してドラクエ5を買いに行った思い出【ゆうせい】

1992年の9月27日。日曜日。当時中学生だった僕は、午前3時に家を抜け出し、ドラクエ5を買うために友人のMとゲームショップに並んだ。3時に抜け出すために21時に寝たし、目覚ましをすぐに止めないようにスイッチにコンパスの蓋をかぶせて、電池のところもテープでぐるぐる巻きにしたことを覚えている。

目覚ましが鳴った時は6時間前の自分を呪ったけど、目覚まし時計と一緒に布団にくるまり、ぐるぐる巻きにされたテープを剥がしているうちに目が覚めたので許した。

お気に入りのパーカー(というかそれしか持っていなかった)に袖を通し、両親とじいちゃんばあちゃんを起こさないようこっそりと抜け出す。自転車がないとバレるかもしれないと思い、徒歩で行くか2分ほど考えたけどやっぱり自転車に乗って集合場所へ向かった。町はすっかり眠っていて、真っ暗な道をひとり自転車で走るのは怖さよりも気持ちよさが上回っていた。

正確に言うと、友人と並んだのは午前4時半。細かいことはどうでもいいんだけど、約束したのは4時で、集合場所で30分待ってもMが来なかったので家まで呼びに行ったから正確には4時半から二人で並んだ。

呼びに行ったとき、Mは完全に寝ていた。当時は携帯電話がないので外からMの部屋に向かって呼びかけたり、小石を投げたりしたが反応がなく、悩みに悩んだ結果、インターホンを押した。Mのばあちゃんが出てきて、Mを起こしてくれた。Mはめちゃくちゃ言い訳していたし、インターホンを押したことをめちゃくちゃ怒っていたけど、どう考えても寝ていたMが悪いと今でも思っている。

軽く口喧嘩しながら店に着くと、天下のドラクエ発売日にも関わらず、誰一人として並んでいなかった。一番乗りだった。アホな僕は日本で一番最初にドラクエ5を手にできると思った。

Mが自販機で買ってきたHI-C オレンジを飲みながら、ドラクエ5が確実に買える喜びや、クラスの女子で誰が好きとか、どっちが早くクリアするとか話し合っていたら、おじさんが二人やってきた。

おじさんは別の店舗に行ったら10人くらい並んでいたのでこっちの様子を見に来たと行っていた。おじさんは4番目に並べたことをすごく喜んでいて、最低でも5本は入荷しているだろうと勝手な予想のもと、俺達は確実に買えるぞと喜びを共有してきてかわいかった。

お店の開店時間は10時で、Mやおじさんと会話をしているうちに空が明るくなってきて、気がつけば8時になっていた。しっかりと町は目を覚まし、車や人通りも増えてきた。

ふと気になって、列の後ろを確認すると30人以上が並んでいた。僕はドラクエが買えることよりも1番に並んでいることが誇らしくなった。

9時半頃、お店の人が開店準備にやってきた。ドラクエのためにお店の人といろんな話をして少し仲良くなっていた僕は、お店の人から「1番じゃん」と言われて嬉しくなり、テレビとか来たらどうしようとか本気で思っていた。もちろん来なかったけど。

そしていよいよ開店となり、僕は一番最初にドラクエ5の会計をした。定価7,800円。当時の消費税は3%なので合計8,034円を支払って、その店で僕は一番最初にドラクエ5を手にした。

Mも、おじさん二人も、会計したらすぐに帰っていった。そのために並んでいたんだから当たり前のことなんだけど、僕は一番に買えたことが何よりも嬉しかったし、次々とみんなドラクエ5を買っていく様子を見るのが楽しくてしかたなかったので、しばらくずっとレジの横でドラクエ5を買う人たちを見ていた。

この人もドラクエ5を楽しみにしていたんだな。何時に並んだんだろう。ニコニコしているな。帰ったらすぐにやるんだろうなとか思うとなんか幸せだった。

「いらっしゃいませ」

「ドラクエ5ください」

「ドラクエ5ですね、ありがとうございます」

という会話を何度も何度も聞いていたら、前々日に発売した「銀河英雄伝説」を買いに来た人がいてびっくりした。ドラクエの順番に巻き込まれた人だった。

でも銀英伝を買いに来た人がいたことで僕は冷静になった。そうだ、僕もドラクエ5をやらなくちゃと。

当時、僕の父はめちゃくちゃ厳しくて、口を開けば「勉強しなさい」としか言わず、ゲームも土日しか許してくれなかった。つまり、今すぐ家に帰ってゲームをしないと、明日からはお預けの日々なのだ。

急いで自転車の鍵を外して、すっかり賑わっている道を笑顔で帰った。

(ちなみに僕はビアンカ派です。というかビアンカ以外はありえないと思っています。)

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