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『秒で伝わる文章術』を読んだ

はじめに

人間は文章の20%しか読まない」ことを前提として、読み手にとって読みやすく行動しやすい文章を書く技術を紹介した書籍。
紹介されている技術は「エモい」「バズる」コピーを書くためのものではなく、ビジネスのあらゆるシーン(例えば会社でのチャットやメールなど)で活きる実用的な文章術だった。
個人的に特に重要だと感じたポイントを抽出して書き残しておく。

なお、本書の第1章・第2章・第6章を著者の宮崎直人さんがnoteで無料公開されている。書籍を購入する前にチェックしてみると良いかも。

短いは正義

本書全体を通じて、短く書くことの重要性を説いている。

まずは「何を言うか(What to say)」を決める。
書き手の心情としてはすべての情報を記述し伝えたくなるが、読み手側の立場になると受け止める負荷が高く、迷惑でしかない。重要性の高い情報のみに選別することが重要。過去の事例や学会の定説などから、ポイントを3つ以下に絞るのが良いそう。

その次に「どう言うか(How to say)
内容を変えずに短く記述するための4つのテクニックが紹介されているが、そのうち特に重要だと感じた2つを以下にまとめる。

1. 一文を短く

だらだらと長い文を書かない。「ワンセンテンス・ワンメッセージ」を意識する。「〜ことで」「〜が」「〜し」など、文と文とつなぐ言葉が入る位置で文を切ると読みやすい。

2. 体言止めを活用

以下の例文のように、単語の重複・頻出を避けることができ、さらに文章のリズムを良くする効果もある。

〈Before〉
スプラトゥーン3のスクリュースロッシャーのメイン射撃にバグがある。スクリュースロッシャーなら壁裏の敵もかんたんに倒せてしまう。
〈After〉
メイン射撃にバグがあるスプラトゥーン3のスクリュースロッシャー。壁裏の敵もかんたんに倒せてしまう。

ただし、個人的には体言止めは割と難易度が高いように思う。体言止めは読み手に余韻を残すため、本来と意図と違った受け取り方をされる可能性があるからだ。

例えば『超・箇条書き』では以下の例示とともに、体言止めはご法度であると紹介されている。

「コストの低下」には以下の意味がある。
・コストが下がった(過去の状態)
・コストが下がっている(現在の状態)
・コストが下がる(未来の状態)
・コストを下げた(過去の行為)
・コストが下げている(現在の行為)
・コストが下げる(未来の行為)

名詞で体言止めにするのであれば、こういった解釈の余地が少ないように思う。意識して使いたい。

読み手ファーストな文章を書くためのルール

7つのルールが紹介されているが、そのうち特に重要だと感じた3つを以下にまとめる。

1. 箇条書き

構造的に情報が整理される。さらに、余計な言葉が削除されることで、全体の文字数削減にもつながる。

一方で、箇条書きを意識しすぎるあまり、本来は文章で書いた方が収まりが良いものまで箇条書きにして、かえって読みづらくなることがある。箇条書きは銀の弾丸ではないので、適材適所で使い分けていきたい。

2. 大事なことから先に書く

人間は文章の20%しか読まない。また、メールの件名やプッシュ通知などは文字数制限があるため、見切れてしまうリスクがある。
(横書きの場合)もっとも伝えたい事柄を一番左側に記述する。

3. 簡単な言葉で言い換える

難解な専門用語や略語、横文字などは使わない方が良い。
これを以下の言葉とともに紹介されている(なお、本書の冒頭でもこの言葉が登場する)。

ふつうの言葉を用いて、非凡なことを語りなさい。

アルトゥール・ショーペンハウアー『読書について』

「他との違いは何か?優位性は何か?」こそが重要であって、それを伝える言葉はわかりやすいものを選ばなくてはならない。

すべての道はシンプルに通ず

先述のテクニックはすべて「文章をシンプルにする」という目的を達成するためにある。
例えば「短い」「読みやすい」「なじみがある」「見聞きしたことがある」といった認知が容易な文章に対して好意的な感情を持つように、人間の脳はできている。そのため、文章はシンプルにするべき。

逆に「長い」「誤字脱字」「表記揺れ」「内容の誤り」「余計な感情が刺激される」などの減点が積み上がり一定値を超えると、「読みにくい文章」と烙印を押されることとなる。


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