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出発前夜

 「大学生は人生の夏休みである」となにかにつけて囁かれますが、4年という月日は無為に過ごせばこそ、あっという間に藻屑となって消えゆくものです。とはいえ、社会へ出て、結婚し、子供を授かり、やがて子が学生になり、

「お父さんは学生時代になにをしていたの?」

と無邪気に問われたとき、
「お父さんのときはコロナだったから」
とこれからの人生で幾度となく答え、コンマ1秒の同情を買ってきたセリフを口にせねばならないと思うと、やるせない思いで胸がいっぱいになります。

 幸い、小中高と同じ学び舎で過ごした尾道くんとの親交はとぎれることなく続いており、”旅行”という共通の趣味もあります。さらには、中学生から日記中毒だった私と同様、尾道くんも文章を書くのが好きときている。

 おや。これは旅行記を書くしかないのでは。

 せっかく旗揚げするならばと「日本巡行〜47都道府県制覇〜」という目標を掲げ、ただ踏破するだけではつまらないと達成条件をこしらえ、膨大な時間をかけて書くのだからと個人的な製本を念頭に置き、そうこうするうちに日本巡行への盤石な態勢が整った。

 どうかあたたかく見守っていただければ幸いです。🙇‍♂️

明石

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 はじめまして。旅行記を始めます。

 ことの顛末や企画の概要は上にまとめてありますので、ここでは、大学生にまつわる私感を述べさせていただき、この企画を立ち上げた動機を、ぼやっと、遠回しに、輪郭をなでるかの如くふんわりと、お伝えできたらと思います。

・・・

 「時間の使い方」というテーマは、生きていくうえで衝突不可避な議論ですが、とりわけ大学生に関しては、小~高以上に時間の使い方が難しい時期ではないかと思います。第一に挙がる理由は、「自由の取り扱いを迫られること」でしょう。

 当然のことですが、大学生の暦は高校生までのそれと大きく変わります。

 日中は決められた時間割通りに授業を受け、放課後は部活や、塾や、習い事などに取り組む。このような綺麗にサイクル化された生活は、ヒジョーに忙しく、だけど充実感とともに、時を駆け抜けるような毎日です。やることがなくて、暇を持て余すことも割かし少ないでしょう。そうした目まぐるしい毎日を周りの人と駆け抜けていく過程で、自ずと「青春の記憶」のようなものが形作られていきます。だから、(もちろん、一様ではないですが)ほとんどの方は、その人なりの「青春」をお土産に、小~高を卒業していきます。

 大学生になると少しワケが変わります。自分の行動は、自分の意志を以て決定します。もっと正確に言うと、そうすることを社会に要求されます。サイクル化された生活を送ってきた人間に、「自由に舞うこと」が求められるのです。

 この段階で脱落者というか、悩める子羊が少なくない数発生します。

 ある人は、この試練を試練とも感じずに、ひょいと乗り切ります。また、ある人は、もがきにもがいてなんとか乗り切るでしょう。そして、また、ある人は、自由に舞えずに社会に放り出されます。(自由に舞わない自由もありますが)

 それぞれの選択に正解不正解はありませんが、ひとつ確かなのは、この分岐はモノゴトへの没頭具合で決まるということです。時間という、どでかいマス目を、自分なりのブロックで埋めていく作業。当然、手持ちのブロックの数や形は人それぞれ違うので、サクサク埋めていく人と、そうでない人に分かれます。ですから、大学を卒業するとき、「青春」というお土産が無い人や少ない人が、一定数いると思うのです。(コロナ世代であることも大きく影響しているでしょう)

 「自由」という耳ざわりの良いワードが、存外扱いに苦労する代物であると痛感し、舞うために必要なブロック、すなわち没頭できるモノゴトを模索します。それが「大学生」というライフステージだと思うのです。

 旅行紀が、このとりとめのない悩みを考える暇も与えないほど、没頭できる活動になりますように。

尾道

・47都道府県制覇の達成条件

原則、一都道府県につき、三つ以上の観光地を巡る。

容認として、三つのうち一つに関しては、その都道府県の特産品・郷土料理を食べることによっても達成されるものとする。

日本巡行の最初の記事はこちら↓

東北編のまとめはこちら↓

京都・滋賀編のまとめはこちら↓

 ※コロナ禍ということと経済力を鑑み、日本巡行は分割して行うものとします。ワクチンの接種、PCR検査の実施、こまめな検温・除菌、手洗いうがいの徹底、マスクの着用等、感染症対策は万全を期したことをあらかじめ記しておきます。

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