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真・不可思議刊行筆風録 1

割引あり

前書

 4年前に有料設定した記事(今は無料)を、新たに書き直して再編し、また何本かの記事にまとめることにする。書籍の刊行までとその後、自費出版の体験記として、これから本を出そうという人の参考になればありがたく思う。


1.全て終わるばかり

 転職が多い方だ。やりたい事だけやっていたいし、可能な限り創作に打ち込んでいたい。一度、仕事ばかりの日々に疲弊しすぎて生きているのさえ億劫になった経験があるから、余計にその思いは強い。2016年の夏もまた、契約期間の満了を機に勤めていた職場を退職して、少しばかり贅沢な時間の使い方をしていた。
 その時すでに某小説投稿サイトへのユーザー登録は済ませていて、空いた時間に細々と作品を書き続けてはいた。しかし結果らしい結果は出ていない。読書が嫌いなわけではないものの、物心ついた頃から任天堂のハードとともに人生を歩んできた身、世の文章家、読書家たちに比べれば、読書量は非常に少ない。
 本当に物書きでいるなら勉強が必要だ、そう考えた私は書店をめぐり、目についた作品を手あたり次第に読んでみることにした。誰もが名前は知っているであろう文豪の作品、ドラマ化されたタイトル、世界三大SF作家に、多くの作家が集う小説雑誌まで。以前にもまして書店へと足を運ぶ中、子供の頃から利用していたとあるチェーン店の壁に、気になるポスターを見つけることになる。そのポスターに書かれていた文言こそ『自費出版』。
 自分が今いるこの店に、自分の名が刻まれた本が並ぶかもしれない。何とも期待の膨らむ可能性ではないか。出版についての知識はないものの、とにかく原稿を送ってみない事には始まらない。幸いにして時間はあるし、原稿だって――投稿サイトに載せたものの特段の反応も得られなかった中編一本を取り下げ、いくらか手を加えて送付してみることにした。出版社のホームページでチェックしたアドレス宛てにメールを送り、さてどのくらい待ったろう。数日の後、普段は来ることのないカラーリングの封筒が、うちの郵便受けに投函されていた。

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