「風が強く吹いている」オリジナルサウンドトラック解説


EnglishVer





ありがとう、「風が強く吹いている」
この作品に関われて本当に幸せでした。

風ロスで仕事にならないので、振り返りつつ

感謝の思いを込めて、
楽曲解説をさせて頂ければと思います。





最後らへんはネタバレ的な個所もありますので
ご注意ください。








「We Must Go」

タイトルは箱根駅伝のテレビ放送のエンディングで以前流れていたという、
伝説の曲「I must go」から取っています。


イントロが長いですね、この曲。2分ぐらい。

長いのには理由があって、しっかりとこの風強の世界観に導入できるように
長めに設計してあります。



イメージした景色は早朝、暗がりに朝日が差し込み、街を照らす。


走ることは何なのか?

答えを探しながら走る自分、一人では導き出せない事も、仲間と共に走ることによって強くなれる。

「ああ、自分のめざす道はきっと間違いじゃないんだ」
と感じられるような曲にしようと思いました。

スポーツ青春ものですが、登場人物は大学生、高校生が主人公の作品と比べると全体的な音色は少しドライだけれども、最後にはしっかりと熱さを感じられるようなセレクトになっています。
シーケンス系のフレーズが多いのは、走っているときの持続的な運動の感覚を取り込みたいと思い入れてみました。

ボーカルの素材も多く取り入れています、これはまた後述しますが、
走っているときの息遣いや思いを楽曲の中に取り込みたいと思ったからです。


長いイントロからのメインモチーフはグランドピアノではなく、長いイントロからのメインモチーフはグランドピアノではなく、アップライトピアノにフェルトを挟んで弱音にした音色を使っています。
グランドピアノの荘厳な音だと、自分探しをしている音にならないなぁと、不確かだけれども前に進もうとしている彼らを描くには、少しこもった音だけれども、個性的なフェルトピアノの音色がぴったりでした。

メインモチーフを聴いてからの3:00~3:48はアオタケのメンバーが集まってきて、仲間の力が自分の力と合わさっていくイメージです。

そこからの、4:26までのメインモチーフの繰り返しは揺るぎない確信と強さを得て、頂点へと向かう思いを描いてます。
メロディーライン、ストリングスのトップの音がかなり高音のところまで弾いてもらっているのですが、限界を超えても、それでも前に進むイメージを高めるためにそうしています。



4:26~からの大サビは達成感と高揚感を最後の一押しで出せるようにいれてみました、アウトロはまたしっとりと始まりの雰囲気に戻るけど、一陣の風が吹いて終わるようになっています。


この楽曲の中で「風が強く吹いている」の世界観と流れを感じてもらえると嬉しいです。



キャンパスライフ

竹青荘(アオタケ)

住人たち

キャンパスライフ、竹青荘、住人たち、日常系の曲たちです、まぁ3曲ともアオタケ周りの曲ですよね、ほのぼのしてたり、アホっぽかったり、
演奏もキッチリせず、ゆるりとした感じで弾いてもらってます。

僕も大学生の頃は部活に明け暮れていたので、なんかこの仲間でのほほんとしてる空気感がすごく懐かしかったです、先輩のうちに集まって発泡酒とか飲んでたなぁ~。。。センパイ、元気ですか~!?

あとこの3曲聴くと、僕はニラが脳内に出てきます、
ニラかわいいよ、ニラかわ!!

でもウチのクロエが一番だけど。

流星


メインテーマのピアノアレンジのこの曲、主張しすぎずシーンに寄り添ってくれるので色々な場面で使ってもらえました。

流星ってタイトルがステキですね。

ちなみにサントラのタイトルはメインテーマの「We Must Go」、「黒い弾丸」以外はすべてProduction I.Gの松下さんにつけてもらっておりますよ。



走るということ

それぞれの走る理由、そして灰二の本気の思いを表している曲です。

前半とラストはシンプルにエレピのみ、
後半はシーンを包めるようにゆったりと弦でメロディーを奏でています。


本音

ざわつき感というか、探り合う気持ちのアオタケの面々の曲です。

灰二から箱根駅伝に出ることを宣言されてからの、参加に揺れる者、心を決める者、悩む者、拒絶する者、追い詰められていく者。

うっすらとした、不安、いらいら、余裕がなくなっていく感じを
表した曲です。

紅一点

葉菜ちゃんの曲です!
料理が上手くなりますように。

Still Wear The Jersey

聴き返したら、「あれ?こんなの作ったっけ?」と
思ってしまった。

ユキの聴いてる音楽でした。。。

過去

過去のトラウマや、頑なな心を表現した曲。

駅伝の難しさを知っている走の言葉の重さ、真剣だからこその心の焦り、
そしてそれに向きあおうとする灰二の心の曲。


お互い

なんかこの曲、すきって言って下さるファンの方が多いんですよね、
ありがたや、僕もすきですよ~。

監督から打ち合わせの時に「アニメというよりは、群像劇のドラマのような曲も欲しい」とオーダーを頂きました。

登場人物も高校生ではなく、大学生で色々な複雑な思いや、それぞれの問題を包むので、どこかドライでクールな曲がいるなぁ、と思って作ってみました。


叫び

ぶつかり合いの曲です。
真剣で、強い思いがあって、それ故にもめる、ぶつかり合いの曲。

それぞれの思いを表すために、
この曲でもボーカル素材を意識的に多く使っています。

一人

日常での心境曲で、極力映像の邪魔をしないようなフラットな曲を3パターンつくって繋いでいる曲です、要所で程度にお話の色付けができるようになっています。

アイキャッチ

すべてはニラのために。

アイキャッチの映像を頂いて、ニラを見つめること数分で完成しました。



策略家・ハイジ

作っていて、
「ぶっ飛んでるなぁ~、作ってる人、頭ヘンだな、かわいそうに。。。」
と自分で思ってました。

でも楽しかったです、声サンプル探してるときとか特に。



鬼軍曹

鬼の曲です、以上。

チーム

イントロから前半は淡々と、何も考えず、ただひたすら走る、無の充実を表すような、走っているときのイメージ、後半はチームが出来上がっていくワクワクを表現してます。

じんわりと幸福感のある曲ですね。



In a Sweat!

風強の世界観をとても表していて、好きな曲です。

シーケンスっぽいピアノのフレーズからイメージを膨らませて全体を作りました。風強のサントラは全体的にボーカルサウンドを積極的に取り入れています、これは走っているときの息遣いや、彼らの思いを表現できたらと思って入れているのですが、この曲でも効果的に使えています。


いざ箱根へ

ぼく、大好きなんすこの曲。

なんだろう、某バレーボールアニメの「強くなれ」って曲のような、

なんだかんだと言いながらまとまっていく感じ。
灰二の思いに対するみんなからの答えのような曲だと思ってます。

心をひとつに、箱根を目指して、ちょっと心熱くなる曲。




踏み出す一歩

とても風強らしい一曲だと思います。

前向きで、たのしそうで、明るい面々。

練習が少しずつタイムに現れ、意欲的になる、
走ることの楽しさが分かってくるシーンをイメージしてます。



現実

足並みのそろわない一同、駅伝への理解も知識もバラバラ、
気持ちも心構えもちぐはぐな雰囲気を重くならない程度の表現しています。



夜空

想いを語る、心情をぽつりと吐露する、他人の気持ちを代弁する、静かでちょっと切ないシーンをイメージして作りました。しっとりピアノソロ。




記録会

個人的に気に入ってる曲です、イントロのミュートギターが渋クールで好き。楽曲としては記録会なんかを表現した曲ですが、色々が箇所につかってもらえていて、このコも喜んでいると思います。

距離

レースの真剣な雰囲気、苦しい中の緊張感、疾走感の曲。
後半に向かって辛さがじわじわと広がっていくように作っています。




信頼

灰二のテーマです。

彼の存在というか、みんなが心を動かされる灰二という人、彼の信念、箱根駅伝、走る事へ対しての思い、そのものを表現しようと思って作りました。


このモチーフは後半の「風が強く吹いている」「黒い弾丸」にも散りばめられています。


箱根の山は天下の険

DISC2の最初に入っているこの曲、実は、「頂点」とほとんど同じ曲です。
違うのは冒頭から入っている、シーケンスフレーズがピアノか、シンセの音色なのかの違い。

最終回のために作った曲なので、
2パターンを作って、絵に合うほうを使って下さいとお渡ししたら、両方
収録してもらえました、ありがたや。


Slice of Life

タイトル通り日常曲ですよ!

これ聴きながら作業してるとアオタケの住人の気分になれます。
1:00ぐらいのエレクトロに消えていくウインドチャイムが気に入ってます。


立場

基本的には日常曲の部類ですが、少し真面目な話や、それぞれの抱えている問題などを色付けする曲ですね。

あまり重くなりすぎないように、音色やコードを選んでます。



逃避

走パーンチッ!!

の曲ですね、高校時代の事件。彼の心情だけでなく、当時の陸上部内の雰囲気や、監督の圧力、耐える選手、榊の走への恨みなんかもすべて包んで表現できればと思って作ってます。



Explanation

これも状況説明系のフラットな曲です。

極力シンプルに作っていますが、0:35~の個所のように少し奇妙な個所を入れて映像の状況変化に対応できるように作っています。


季節

大会前の、緊張感、不安。それと同時にここまでやってきた充実感とあとはやるだけという意思、仲間を信じる静かで凪のような気持ちを表してます。


予選会

これも、状況説明系の曲ですね。
楽曲的には展開をあまり作らず、お話しの説明の支えを作るような曲です。
後半にエレキギターで少し緊張感を出してます。

変化

レースが何かをきっかけに動き出すシーンをイメージして作ってます。田辺さんのベースと髭ちゃんのドラムがかっちょいいんすわ、これが。


ハイジと藤岡

二人の過去、高校時代からの友情、多くは語らずとも沢山の事を理解しているランナー同士の灰二と藤岡をイメージしています。


作戦

レース中の状況説明や、指示を与えるシーンなどのために作った曲です。
基本淡々とした楽曲ですが、後半に盛り上がりどころも念のために作ってあります。


トラブル

おじさん、作るのも辛かったよ。。。
神童の苦しい走りをさらに苦しく描くための曲です、はぁはぁ。


後悔

それぞれが抱えていたもの、過去、
灰二の壊れてしまった過去、走れなくなって、本当に走りたいと思った、仲間と夢を見たいと思った、そんな気持ちを彩れるように作ってみました。

0:39~からのヴァイオリンのハーモニクスが悲しく響く感じで、効果的に使われていてよかったです。



強さ

ムサ~、俺、ムサのためだけにこれ作ったよ~!

賭け

淡々とした中にも緊張感と勝負を挑もうとする駆け引きの感じを出そうとしてます、テクノですね~。


孤独

箱根駅伝、本戦を描くときに悩んだのが、物語の進行の仕方が、イメージしにくかった事です。

バレーボールや、ダンスのように動的にシーンが動くことは少なく、むしろモノローグのような心情の表現がメインになると思ったので、外から見たランナーの疾走感を表現する曲の多く作りましたが、内面を表現できるような楽曲も多く作りました、これもその一つです。

この曲はなんだかユキのイメージですね。


速度とリズム

「踏み出す一歩」のアレンジVerです、さわやかさを残しつつ、
力強さと疾走感を出しています。

この曲を聴くと頭の中でジョージ、ジョータが元気よくはしゃいでます。


自由で平等な場所

走っているときの、苦しさ、それと立ち向かう、
やりきるための強さなんかを表現できたらと思いました。


走が走り出す前の灰二との電話、
「君は僕にとって最高のランナーだ」を受けての走の思い、
このやり取りをイメージして作りました、さわやかだけどそれだけじゃない、これから始まる事へ対しての高まりも表現できればと思いました。



黒い弾丸


お待たせしました感満載のこの曲。

タイトルはシナリオにあった、
アナウンサーが走の驚異的な追い上げを例えた

「寛政大、蔵原のペースが落ちません!驚異的な追い上げは、
まるで黒い弾丸!」

から取らせて頂きました、かっこいいタイトルになりました、
ありがとうございます。

とにかく圧倒的なスピード感を表現しようと思って作りました。

秒針の音がうっすらとカチカチ後ろで鳴っているのもそれを表現しています。

風強ではあまりRockな曲は使わずエレクトロニカ寄りで全体の音楽を作っていたのですが、この曲は違います、もうゴリゴリのノリノリで作りました。

と、同時にこの中で、走は自分に問いかけるシーンが多くあったので、途中途中に彼の内面を表現するパートを挟んでいます、そこから走る事への純粋な喜びに向かうように曲の構成をしています。

お気づきの方も多いですが、この曲にはメインテーマのモチーフと、灰二のモチーフが使われています。

灰二から走への問いかけ「走るの好きか?」への答えのような曲にしたかった、0:20~始まるメインテーマのモチーフから、0:40~の灰二のモチーフへ、そこから1:00~走の答えのようなさらに加速度を増したメインテーマが返ってくるようになっています。

ぜひ、ランニングや、遅刻しそうな際に聴いてもらえるといいタイムが出せると思います。


混迷

箱根駅伝内でのアクシデントや、緊張感をイメージして作りました。
冷たい印象の音色や、淡々としたフレーズを主に使っています。



覚悟

箱根駅伝9区から10区、走から灰二への襷リレー、
二人の交差する想いを描いた曲です。

あまり小細工はせず、メインテーマのストリングスアレンジを少しゆったりめのテンポで演奏してもらっています。




風が強く吹いている


灰二のテーマのクライマックスアレンジVerですね。
もう一つのメインテーマといってもいいぐらい個人的に気に入ってます。

灰二が走っているときに、故郷の空を思い浮かべている所ぐらいからかかるイメージで作りました。

膝のケガ、遠回りをしたかもしれない、けどその結果、彼はこんなにも
走ることを強く思えることができ、最高のチームと出会えることができた。

始まりの少し悲しげなピアノから始まるくだりはまさに過去を振り返っているイメージです、独白のような、自分と向き合うような美しいソロコーラスはヴォーカリストのSenくんに歌ってもらってます。

過去を振り返って、自分と向き合う事を経て、周りに仲間がいる、強く前に進もうという思いを、2:02~ラストまで表現しています、高まり方がたまらん好きです、脚本を読みながら泣きながら作ってました。

灰二のために作りましたが、結果彼の思いに感化され、自分と立ち向かおうとする人すべてへのための曲のようになりました、タイトルもまさにですね、この曲にぴったりだと思いました。


頂点

灰二のゴールシーンを想像して作った曲です。

「いざ箱根へ」のアレンジVerになっています。

それぞれの走り、それぞれの思い、それぞれの頂点があって
繋いだ襷、みんなが見た頂点を描いてみました。

2:00あたりがゴールっぽくてとても好きです、この曲も泣いて作ってました、泣いてばっかりですね(笑)



彼方へ

ラストシーン用に作った曲。
3年後、集まった仲間たちの集い。

みんなが当時を懐かしむんだけど、それぞれが新しい未来に向かって、
前を向いて進んでいる。

そんなシーンを思い浮かべて、メインテーマのしっとりとした
アレンジにしました。

ラストの音に解決音がありませんが、そういうことです、
彼らの走り、彼らの生きていくということはまだまだ続くのです。



楽曲解説、終了!!



と、風強愛に押されダラダラと書いてしまいましたが、

こんな思いで作ったんだな~と、改めて作品を見て頂ければ嬉しいです、
関係者の皆様、ずっと観て下さったファンの皆様、
本当にお疲れ様でした、ありがとうございました~~!!




画像1

オマケ

妻が描いてくれたニラとクロエ(ウチのムスメ)です。
サントラに使って頂いているものですね。

「襷をニラの色にしてみたわ!」と言っていましたが、
ニラはそっちのニラとちゃうんやで。。。


オマケその2

メインテーマのゆったりとしたVerのピアノソロ譜面です。
(タイトルもまだ仮の段階のやつですが)

メインフレーズしか書かれておりませんが、もしよかったらどうぞ~。


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