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今日の参拝140 ~おじいさん~

日曜日。久しぶりの休日。
僕は崇敬神社に立ち寄った。

いつもこの神社には、ご奉仕で境内のお掃除をされているおじいさんがいる。
この日もそうだが、ここしばらくお目にかかっていないな・・と思っていた。

そのことを神社の方に伺うと、
「実は先日・・」
ということであった。

僕も一緒にご奉仕したことがあるからわかるのだが、穏やかで優しいおじいさんであった。

このおじいさんは耳が不自由である。聞こえないことはないのだが、十分でない。

で、おじいさんが幼い頃、そのお母さんが毎日この神社に来ては、「息子の耳がよくなりますように。」とお願いをしていたのだそうだ。

そのことを知ったおじいさんは、それ以来、毎日神社に来てはご奉仕をしていたのだという。

「そうだったんですか・・」

尊い行いだと思った。

話は続く。

先日、とある方が神社に来られて、掃除のご奉仕を願い出たのだそうだ。
理由を伺うと、

「夢枕に、自分がここを掃除している姿を見たので・・」


そう答えられたのだそうだ。

おじいさんとこの方は知り合いではあるまい。だが、このような形でおじいさんは「後継」を彼に託したのだろう。
僕にはそう思えた。

僕は再度拝殿に戻り、おじいさんの冥福を神に祈る。

「おじいさん、長い間お疲れさまでした。後継者が見つかってよかったですね。」


神社ではこういうことも起こるのか。僕はたぶん、この話を聞くためにここに立ち寄ったのだろう。
そして、

あんたもよろしくな。


そう言われたのかも知れない。

「わかりましたよ。」


たぶん境内を上から見下ろしているおじいさんのことを思って、僕は神社を後にした。


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