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クーポンとカモ

よく行くスーパーがある。
いつもレジで精算すると
横の機械からクーポンが出てくる。
ずるずるずるずる べー。
1枚ではない。

大抵はビールもしくは発泡酒のクーポンだ。
100円引きのものがほとんど。
しかしなにが100円引きかはよく見ないとわからない。
1本なのか、6本なのか、1ケースなのか。
言うまでもなく一番お得なのは1本だ。

私はクーポンの類は好きではないので
基本的にはもらってもすぐ捨てるのだが、
よく考えると1本だけ買うならお得じゃね?
と思って財布に置いてちびちび使い始めた。
お酒は好きなのだ。

1本買って、クーポンを使う。
そしたらまたクーポンが出てくる。
それを使ってまた買う。
そしたらまたクーポンが出てくる。
無限ループだ。

新しく出てきたクーポンをよく見ると
以前は1本 or 6本セットが100円引きだったのに、
6本 or 1ケースが100円引きになっていて、
うっかり騙されるところだった。
危ない危ない。

もう完全にカモにされている。
気づいてはいる。
気づいてはいるのだが、
ビールも発泡酒もメーカーなんてなんでもいい私にはお得なクーポンが捨てられないのだ。

ということでクーポンを財布にごっそり入れ、
期限を確かめながら細々使っていた。
ところが行っていたスーパーがサイバー攻撃に遭ってしまったのだ。

店にびっしりと並んでいた品々が
どんどん少なくなっていく。
醤油棚や出汁の棚は空きが多くなり、
乳製品、特にヨーグルトなどは
欠品が多くなった。
POPも手書きのものが増えてきた。
POPの印刷すらできなくなってしまったのか。
サイバー攻撃は店員さんも一般市民の生活も不便にしていくのかと、私は怒りを感じた。

ある日、そういえばクーポンが出てこないことに
気づいた。
よく考えるともう数ヶ月になる。
出てきたらカモにされたと思うのに
出てこないとなんとなく寂しく思うのはなぜだろう。
財布の中にあんなに溜め込んでいたクーポンは
きれいに無くなってしまった。


しばらくしてスーパーは落ち着いたらしく、
この5月中頃に元に戻ります的な案内をしていた。
新聞にチラシも入ってきたし、
棚の欠品もなくなってきた。
担当者はさぞかし大変だったろう。
全ての仕事が終わったら、ゆっくり休んで欲しい。

元通りになったら
またクーポン出るといいな。
なんて、カモはちょっと楽しみに待っている。

(了)





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