鈴木誠也

鈴木誠也の打撃不振について

丸佳浩が抜けた後の広島打線の真の柱として期待された鈴木誠也の2019年シーズン。5月終了時までは巨人・坂本勇人と並び、三冠王も視野に入るほどの打撃好調ぶりを示していましたが、6月に交流戦に入ってからというものその打棒は鳴りを潜めています。(下表①参照)

鈴木の打棒の低迷が響いた広島打線は、大きくその得点力を低下させ、交流戦開始以降の27試合で僅か76得点(1試合平均2.81点)しか挙げられず、大失速の主要因となってしまっています。

長打力不足が否めない今季のチームの中で、長距離砲である鈴木の打棒の良し悪しがチームの得点力に寄与する部分は非常に大きく、得点力回復のために一刻も早い復調が望まれます。

そこで、交流戦開始以降、不振に陥る鈴木の打撃を以下にて解剖し、その原因を特定していきたいと思います。

※データは全て7/7終了時点でのもの

1.打撃不振の原因〜データ編〜

まず、打撃不振の原因をデータ面から探っていこうと思います。

今季の打撃の傾向として特徴的なのが、昨季までNPB内屈指のプルヒッターであったのが、今季はセンター方向への打球を増やしている点です。(上記表②参照)

昨季の全打球における引っ張った打球の割合を示すPull%は、両リーグ5位の45.2%という数値を示し、放った打球のおおよそ半分は引っ張りの打球でした。

それが今季は、両リーグ33位の34.9%と大きくその数値を落とす代わりに、Cent%は35.8%(両リーグ52位)→43.4%(両リーグ10位)へと数値を上昇させています。

引っ張り偏重の打撃であったのが、よりフィールドを広く使えるようになったことで、センター方向もしくはライト方向への長打も増え、5月までの.351という高い打率や、15本塁打中センターへ6本、ライトへ3本という広角に長打が打てることに結びついていったのでしょう。(詳しくは、以前記した私のnoteをご覧下さい)

このように、昨季までとは一味違う打撃内容を見せていた鈴木に、変化が訪れたのが交流戦でした。

その変化とは、引っ張りの打球の割合の増加です。

交流戦以外と交流戦時のPull%を比較すると、明確に交流戦時の方が上昇していることが分かります。

サンプル数としては決して十分とは言えない18試合の中だけで、引っ張りの打球が増えたのなんて偶然ではないかと思われる方もいると思いますが、私はそうは思いません。

そう思う理由としては、パリーグの徹底した対策により、鈴木が能動的に引っ張った打球が増えたというより、受動的に引っ張らせられた打球が増えたという側面の方が強いと考えるからです。

その徹底した対策とは、二塁手を二塁ベース後方にポジショニングさせ、レフトはフェンス手前まで後退させるシフトを敷き、引っ張りor今季増えていたセンター方向への打球へのケアを行いつつ、シフトを敷いた方に打球が飛ぶような配球を行い、シフトの網にかけるというものです。

1枚目の画像は、6/7のソフトバンク戦でモイネロから本塁打を放った直後にカメラが切り替わった際のものですが、赤丸で示しているレフトの守備位置がかなり深いことが分かります。

2枚目の画像は、6/16の楽天戦で岸に二飛に打ち取られた直後にカメラが切り替わった際のものですが、赤丸で示している二塁手が二塁ベース寄りから動き出しているのが何となく分かるかと思います。

もう少し明確なものを提示できればよかったのですが、以上からパリーグが鈴木対策のシフトを敷いていたことが分かると思います。

また、明確なデータはありませんが、各球団外角偏重の投球で、引っ掛けてのゴロやフライアウトを狙い、シフトの穴を突くように流されても、単打ならOKという割り切った配球を徹底していたように感じました。

鈴木を止めれば得点力は大幅に低下するとのパリーグ各チームの分析から、上記のような徹底マークを受け、セリーグ各チームとの対戦時のように気持ち良く振れなくなったのでしょう。

これにより、安打という結果が出なくなり、徐々に鈴木の中で打撃が狂っていったのではないでしょうか。

2.打撃不振の原因〜フォーム編〜

続いて、フォームの部分から鈴木の不振の原因を考察していきます。

5月までの好調時と6月の不調時の間に、大きな変化があるわけではありませんが、一つ変化として挙げられるのが、インパクトの際の左足の折れです。

左から4/14に井納翔一から放った6号本塁打、5/5に山口俊から放った9号本塁打、6/30井納から放った左安打の時のそれぞれインパクトの瞬間になります。

どれも外寄りのボールを捉えたものですが、4/14と5/5のものと比べて6/30のものの左足を見ると、伸展しきらず折れてしまっていることが分かると思います。

これにより、回転の力を上手く使えず、かつ体重も左足に乗らないため、ボールに十分な力を伝えることが出来ず、強い打球が打てなくなっているのではないでしょうか。

このような変化が起きている原因としては、交流戦での外角攻めにより、外角のボールへの意識が強くなり、外角のボールを強く打とうとしすぎるあまり、自分から外角のボールに距離を近付こうとしすぎているためではないかと推測します。

3.復調のためには

今後はセリーグ各チームとの対戦となり、パリーグほど極端なシフトを敷いて、徹底的に対策を練ってくるチームが今のところ無いため、原因を分析し鈴木自身の中で再び「形」を作り上げる事が出来れば、自然と当たりは戻ってくると思います。

そのためには、鈴木だけでなく、その前後を打つ打者を確立させる事も重要となってくるでしょう。

実際、5月は3番・バティスタ、5番・西川龍馬と前後の打者が好調であったことも相まっての好成績という側面もあり、きっちりゾーンの中で勝負してもらうには欠かせない要素となります。

一度は解体したものの、再びバティスタ・西川、また復調傾向の松山竜平も加えてクリーンナップを組むことで、四球上等の厳しい攻めが緩和され、復調に向かいやすくなるのではないでしょうか。

また、フォーム面では、外角のボールへの意識が強すぎるあまりフォームが崩れてしまっている感が否めないので、一度打席での立ち位置をベースに近付けてみるのが良いように思います。

そうすることで、自ら外角へのボールの距離を縮めなくとも、自然とボールとの距離が詰まるので、外角球への対応も容易になるのではないでしょうか。

4.まとめ

・打撃不振の原因~データ編~
フィールドを広く使う広角打法で更なる進化を見せたが、交流戦のパリーグ各チームの鈴木対策で引っ張り偏重の打撃にさせられたため、打撃が崩れた
・打撃不振の原因~フォーム編~
外角のボールを過剰に意識することで、ボールに力を伝えられなくなり、強い打球を打てなくなっている
・復調するには
①鈴木に対する攻めを和らげるような布陣を敷く
②ベースに少し近付き、外角のボールを遠く感じないようにする

以上が本noteのまとめとなります。

鈴木の打撃スタイルは、その時々の身体の状態や調子に合わせて柔軟に対応していくものであるため、どこかしらで再びバチっと形がハマって打ちだすものと信じています。

本日(7/8)の試合でも久々に本塁打を放ったように、完全復調の日は間違いなく近付いており、ここからの巻き返し、そして初の打撃タイトル獲得を期待したいところです。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #鈴木誠也 #打撃

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