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しっくりくるか、しっくりこないか

2ヶ月前にオーダーメイドのスーツを購入した。
「スーツを買わないとだ」という状況が沢山あったにも関わらず、自分の予算感と合わずに見送ることを続けてしまった。

そして何より自分のサイズがないことがハッキリと分かっていったことが大きい。
ビルドアップされていった肉体と、身長が一回り低いこともあって、いつの間にかなんだかよく分からない体型になっていたからだ。

店舗に行き試着しても、試着しても胸板がそれを拒む。僕の胸が「これじゃない」と話しかけてくる。
胸の中にもう一つの顔があってそれと対話しているような感じ。奇妙なホラー漫画とかに出てきそうなあの感じ。でも実際にそうだった。しっくりきていない。

そうしたらオーダーメイドのスーツを買いに行こうとした。
都心の方に出ていったけど、そこでも買う寸前にまで行くけど、しっくりきているとは言い難かった。
「これじゃない」が発動する。

有名店で試着をしているとお店側もどんどんとオプションを加えていって「もう1着購入ですとさらにこれだけお得ですよ~」と猛烈に煽ってくる。煽りVTRならぬ、煽りスーツ。別に僕は煽られて、過剰に乗せられて買いたいわけじゃなくて、自分自身にしっくりきたいんだった。

結局のところ、街の小さな仕立て屋さんに行き、そこが自分にとって抜群にしっくり来たので、そのお店で購入した。
あまり人通りのない街にポツンとある仕立て屋さんだ。
老舗の匂い、店長の優しさに惚れた。しっくりときた。

「よし、ここでお願いしよう。」

しっくりくるまでに何か特典をつけて欲しいとか、もう1着購入をすると安くなるだとか、そういうことが欲しいわけではなかったんだな。”いい気の流れ”を感じて決めたかったのだ。
完成品を取りに行き、感激して僕は泣いた。
市販の店では取り扱いがない、なんとも言えない自分の体型に合わせて、サイズや生地に納得のいく仕上がりを突き詰めてくださっている。感激屋の僕にとって、散々決めかねていたスーツを発注出来て、かつ嬉しいコミニュケーションがとれたことに感情の琴線に触れてくるものがあった。それは僕だけの一点物で、コツコツとトレーニングを続けてなんとも言えない体型になっていた自分の取り組みをも肯定してくれるものであった。

裏地に自分の名前を刺繍してもらった。英語表記より、漢字がいいなと思って「今成夢人」を刻んでもらった。名前の刻印だ。タトゥーを入れてもらったような感覚がする。今成夢人という名前を気に入っている。プロレスと映像を行き来した10年。自分の名前で仕事が出来るようになりたい、その思いがより強くなったように思う。

自分の名前を刻む。今成夢人で行く。
自分の名前を装備する、搭載するという感覚。

しっくりくるまでには時間がかかるけど、しっくりきた感覚の気持ち良さははっきりとカラダや気持ちでわかる。
しっくりくる感覚は自分の眼差しや価値観、金銭感覚(予算)、肉体、様々な要素を統合的に判定させてくるものだ。

しっくりくることから目を逸らさないのは大事で、しっくりくるまで時間がかかりすぎて、しっくりくることの結論を早めてしまうこともあるのだろうが、時間をかけたらかけた分、納得の行く答えは出しやすいように思う。

今回はオーダーメイドスーツを創るという事案でしっくりくることについて考えることが出来た。
自分の環境、道具など日々しっくりくるかを考え、実用が出来ているか。スーツ以外のことでも突き詰めてみたいなと思う。

飯伏選手が現れずとも堂々とする今成夢人

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