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黄昏嵐山

 暑さとともに人通りもほんのちょびっとだけ落ち着いた、夕方の嵐山。昼間は半袖でも十分だったのに、この時間になると肌寒い。ごおおおおお、というはっきりとした川の音は、怖さよりも潔さを感じ、なんだか心地よい。

法輪寺へ 時間が時間だからか、ほぼ人はいない

お坊さんのお経をあげる声が聞こえる それが日常なんだ
このときはまだ桜が少しだけ残っていた
青紅葉が美しい


ああ、家に帰りたくない。明日からまた仕事とか生活が始まる。そんなことを考えながら渡月橋をぷらぷら歩いた。それは小学生のとき、ランドセルを背負いながら感じた気持ちとそっくりだった。わたしはとかく家に帰りたくない小学生で、ランドセルを背負ったままため息をついてトボトボと家に帰ることが多かった。


この橋を渡る人たちはどんなことを考えているのだろう。また違う意味で「帰りたくない」と考えているのだろうか。モダンな着物に身をつつんだカップルが、笑いながら目の前を通り過ぎる。幸せそう。

わ、「ザ・嵐山」だ…!こんな風景見せられたら、ますます帰りたくなくなるではないか。すかさずiPhoneを取り出して、目の前に広がる風景を撮った。物思いにふける黄昏時。


「このままもう少しノスタルジックな気分に浸らせて頂こう」とNさんに教えてもらったカフェに行く。その昔、ここは銭湯だったそうだ。

おしゃれ…!
銭湯のなごり…①
銭湯のなごり…②
銭湯のなごり…③ ♨️グッズも販売
見守ってくださっています


 何の会なのだろう…?隣の広いテーブルには、8人ぐらい集まって話をしている。日本語とフランス語が交互に混ざり合っていて、一見楽しそうだけど、難しい議論をしているようだ。わからない言葉を聞きながら、運ばれてきた「いちご・あん・ラテ」をストローでチューっとすする。

氷がものすごく大きい 苺のあまずっぱさが身にしみる
湯のかたちのクッキー かわいい ほっこり

 
ここがまだ銭湯だったころ、きっと地元の方や観光客のコミュニケーションの場所だったはずで、汗を流しながら和やかな時間が流れていたんだろうなあ、と思う。それがカフェになって、ほっとする場所が違うかたちで受け継がれているんだなあと思うと、なんかそういうのっていいなあと思った。



「さて、帰るか」と腰をあげたときには、すでに19時前だった。外は真っ暗だ。ガタンゴトンと電車に揺られて家に帰る。電車の中で、今日撮った写真を見返して、ちょっとにやにやした。大人っていいぞ。行こうと思えば、行きたいところに自分の足で行くことができる。それを選択するかしないかは、自分なんだよなあ、と思う。


泡のように消えていく毎日だけど、時々消えていかない1日もあって、今日はそんな日だったかもしれない。その消えない1日の出来事は、誰かに伝えたほうがいいことなんだと思う。そしたら誰かがきっと、一緒に喜んでくれるはずだから。


「明日からまた頑張ろう、そしてまた京都に行こう」と思った。

訪れた場所


※訪れたのは4月初旬ごろです。

※店内は全て撮影許可をいただいています。美人なお姉さん2人にいただきました。

Special Thanks :Nさん


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