クラウドファンディングプロジェクト「人文・社会科学分野の若手研究者が抱えるキャリアの問題とは?」の調査結果いつて思ったいくつかのこと

去る6月5日(金)、academistのクラウドファンディングプロジェクト「人文・社会科学分野の若手研究者が抱えるキャリアの問題とは?」の調査結果が公表されました[1]。

本調査は2020年1月14日から2月14日にかけて特定非営利活動法人STeLA Japanと共同で行われ、回収数は179件であり、有効回答数は169件であったとのことです。調査の対象は「若手研究者」、すなわち着任後5年以内のテニュアトラックを含む専任教員、ポスドク、博士後期課程院生でした。

SNSや林氏が所属する学会や研究会への呼びかけを通じて回答の依頼を行ったため母集団に偏りがあり、「若手研究者」全体の傾向を正確に表すものとして捉えることは出来ないとされています[1]。

しかし、調査の結果として示された内容は、私の限られた体験や情報に対応するものが少なからずあり、「若手研究者」を取り巻く環境や問題の一端を窺い知るには有益であろうと推察されます。

特に、人文科学、社会科学の分野では「非常勤講師職に就くために非常勤講師経験が求められ、非常勤講師経験がないために採用を断られる」という状況が一定の割合で生じている可能性が示されていることや、非常勤講師職の多くが非公募、非公開であるためにかえって「専業非常勤講師職」が成り立ち得ることが指摘されていることは、今回の調査の重要な成果の一つでしょう。

林さんが「本調査の知見を足掛かりとして、今後類似の調査が公的機関や科研費グループなどによって、行われることを願ってやみません。」[1]と指摘するように、今回の調査を端緒として種々の調査や研究が行われれば、現在政府が改善に取り組みつつある「ポスドク問題」[2]への対策も、より実効性を高めることになるでしょう。

その意味でも、今回の調査の持つ意義と関係者の尽力の意味の大きさが、改めて実感されるところです。

[1]林凌, 人文学・社会科学系研究者にとって、「非常勤講師職」はどういう意味をもつか? – アンケート調査から見えたこと. academistJournal, 2020年6月5日, https://academist-cf.com/journal/?p=13412&fbclid=IwAR3EhE3sDpPoVbW6vZrzLyWUNLIzFkRVgSLImGmVTZjoLjue17BcYjr1iBQ (2020年6月12日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 政府による「ポスドク問題解決の解決」に必要なのはいかなる取り組みか. 2020年1月27日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/78bfe59244ffa03ca0d0c52ef3140fa4?frame_id=435622 (2020年6月12日閲覧).

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of a Survey "What Are Career Problems of Young Researchers of Human Sciences and Social Sciences?" (Yusuke Suzumura)

The results of a survey "What Are Career Problems of Young Researchers of Human Sciences and Social Sciences?" is released on 5th June 2020. In this occasion I express miscellaneous impressions of the survey and results.

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