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特許の取り方(出したことない人向け)

この度、特許を取ったので、流れとか自分で躓いたこととかを書き残します。

特許とは

特許を簡単に説明できなかったので、ちゃんとした説明がされているところから引っ張ってきました。

特許とは、「発明」を保護する制度です。特許制度は、発明をした者に対して、国が特許権という独占権を与えることで発明を保護・奨励し、かつ、出願された発明の技術内容を公開して利用を図ることで、産業の発達に寄与することを目的としています。(https://www.businesslawyers.jp/practices/299)

難しい…。簡単な言葉にすると、もし特許がないと、コピーされるのを恐れて、発明が世の中に出回らなくなったり、コピーされることで発明の意欲が低下したりするから必要だよってことですかね。

特許を出す身からの視点で箇条書きにすると、特許のメリットとして、

・自社技術を持っている一つの証拠になる
・他の会社にその特許を取られて妨害されることがなくなる(これは特許にしなくても出願だけでok)
・補助金などが通りやすくなる(らしい)
・調査の過程で、競合技術を知ることができる
・友達に自慢できる

デメリットとして

・数十万円の費用が掛かる
・百~数百時間かかる
・公開されるため、その情報を元にした技術を他社に開発される可能性がある

があります。特許を取る大体の流れは以下の通りです。(青は今回の日程)

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大まかな流れはこんな感じです。期間にして8か月、費用は全部で57万円(分量や調べる範囲、早期審査の適用などでもちろん変わります)、自分の時間はメールなども合わせるとだいたい100時間くらい使いました。

ここからは特許を初めて出した自分の流れを書いていきます。

自分で調査

まず、自分が出そうと考えている特許を人に取られていないか調べる必要があります。下記リンクから検索はできます。ここで私が難しいと感じたのがどれくらい調べたら調べたと言えるのだろうかという点です。

例えば私は今回「自走型ロープウェイ」関係の特許を出そうと考えていたので、

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「ロープウェイ 自走」で調べてみました。

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6件くらいなら読んでもいいのですが、例えば2とかは自走型ロープウェイとは明らかに違いそうなんですよね。また、例えばロープウェイが索道と表記されている場合、この検索には引っ掛かりません。つまり単語による検索では、網羅的な検索にはなっていないです。そこで次に行うのが、FIによる検索です。

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FIとは技術の要素ごとにつけられているコードで、図書館の本についているコード(小説とか技術本とかで分かれている奴)に似ています。本は一つの本につきコードは一つですが、特許は、一つの特許に複数のFIがついている場合があります。これは複数の要素からなっていたり、複数の見方ができるときに発生します。次はこのFIをクリックしてみましょう。

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こんな感じで分類表が出てくるので、自分の出す分野に当てはまるものを選んで、次はFIで検索をします。上記ページの左側のB61B9/00みたいなところをクリックしてみてください。そうすると検索できます。

ここまできたらそれぞれの特許を読んでいきましょう。

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一つピックアップしてきました。(自分のはまだwebに上がってなかったから上がってたものをお借りしました)

ページには、「書誌」「要約」などがあります。上から順に読んでしまいがちですが、私は「詳細な説明」を最初に読むことをお勧めします。分量は多いですが、その特許がとられた背景、今までの技術とどこが違うのかなどが詳細に書かれているので、理解はしやすいです。

またこの時に下の画像のように同一特許を2つのブラウザのタブで開くと、図面を見つつ文章を読めたり、文章を2か所同時に見れたりと簡単に切り替えができ、理解がしやすくなるのでお勧めです。

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「詳細な説明」を読み終わったら次に「請求の範囲」(請求項)を読みます。ここが難関です。何言ってるかわからない。特許の最大の壁がこの長すぎてわかりにくい文章です。しかし、ここが特許の心臓部なのです。これを何とかして読解していきます。僕はこんな感じで線引いてみたり、自分で箇条書きにまとめなおしたりして理解に努めます(大学英語を思い出す)

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ここまでで、もし理解できたら、その特許の番号(特願2021-00000)とその特許を一文でまとめたものをどこかにメモで残しておきましょう。もし理解できなかったら、理解できなかったと書いておきましょう。

個人的な感覚では、こんな感じで自分に関連しそうな特許を10個くらい読めば、「よく調べたね」と弁理士(特許に関する手続きをする人)の方に言ってもらえるし、自分で調べたといっていい水準だと思います。そして、そのリストとFIを次のステップで弁理士に渡してください。

国内調査・海外調査(特許を調べてもらう)

次のステップです。自分の調査を踏まえて、プロに調査をしてもらいましょう。私は以下の事務所にお願いしましたが、これは大学で紹介してもらえるならそこがいいし、自分で検索して出てきたところでもいいと思います。

初回ミーティングの時に持っていくものは

・自分の特許アイデアの文章、図面等
・自分でやった調査結果、FI

です。これだけあれば十分だと思います。あとはミーティング中でいろいろ聞かれます。私の場合は最初に国内調査をお願いして、行けそうだったので国外調査(US,EU,PCT)もお願いしました。金額やかかった期間は流れにある図の通りです。

文章・図を作る

調査の結果、特許が取れそうだとなった場合には、次に特許を書いていきます。私が書いたのは「請求項のようなもの」「図面」の二つです。ここが特許の肝なので、それ以外は弁理士に任せてよいかと思います。「請求項のようなもの」と書いたのは、調査の時に読んだあの長く難しい文章を書くことは私には不可能だったので、箇条書きで書いたためです。後で、弁理士さんと話し合いつつ、あの解読不可能の長い文章にしてもらいました。図面は以下の画像のように3DCADの線画モードで出力した画像に部品名をつけました。

ここまで来ると弁理士さんとのコミュニケーションさえしていれば大きな問題は起きないはずです。メールをしっかり見て、質問に答えて、必要であれば追加で文章を書いたり、図を作ったりしましょう。

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特許出願と審査請求

前のステップで特許を弁理士と一緒に書いたら、特許庁に出願をしましょう。といっても弁理士がほとんどやってくれるので、ここで注意するのは審査請求をするかどうかです。出願することで、自分が発明をした証拠になり、他の特許を取り下げる根拠にはなりますが、それだけでは特許にはならず、だれでも自由に使える状態になります。特許にするためには審査請求をして特許としての中身を満たしているか、審査される必要があります。

通常の審査は審査請求から1年程度かかりますが、ベンチャーなどが使える、早期審査、スーパ早期審査等もあるのでもし要件を満たしていると考えているなら、弁理士に相談してみてください。

ここでは無事出願をしたものとします。

ほぼ来る拒絶通知

出願後、スーパ早期審査であれば1-2か月でほぼ必ず一回目の拒絶通知が来て、特許として新規性や進歩性がないのでは?と聞かれます。というのも、審査官によって特許を認める範囲はまちまちであり、そのため弁理士は範囲を広めにして、拒絶を前提として請求項を書くからです。自走型ロープウェイを例にすると、適用の範囲を広くとれば移動装置、狭くとればロープが2本の、内部に二次天地を持つ自走型ロープウェイと区切ることができますが、広く取れたほうが特許としては強いので、「移動装置におけるxxの発明」のように広く出して、審査官に「ロープウェイにおける」とか「自走型ロープウェイにおける」とかのように適度な範囲に狭めてもらうのです。

この辺は弁理士がプロなので、基本的に指示に従っていれば問題ないでしょう。

無事特許査定!

拒絶通知に1~3回ほど答えて、審査官を満足させることができれば、無事特許となります!やったね!

というわけで初めて特許を取る人向けに一連の流れを書いてみました。自分でやる調査の部分が文章の半分くらいを占めたのですが、そこが難しいので、しょうがないです…。ぶっちゃけ弁理士に出会えばあとは何とかなると思います。時間とお金はそれなりにかかります。

この記事を読んで皆さんも是非特許を出してみてください。あと、普通に調べるだけでも競合調査ができたり、勉強になります。おわり。


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