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現実と虚構がUIで融けあうホラーゲーム『パラノマサイト』を早くやれ

『パラノマサイト』を早くやれ。これからもっと人気が出るから、ネタバレを踏んでしまう前に早くやれ。

本格的ホラーであり、伏線が巧みに張り巡らされたミステリー小説であり、愛すべき人物たちの掛け合いにハマれるキャラクターコンテンツであり、ジャンプマンガのような能力バトルが楽しめて、プレイが終わったら誰かに語ってオススメせずにはいられない。そんなゲームだ。

ニンテンドースイッチでも、アプリでもSteamでも遊べるので、いずれかの環境がある人は、たった2000円と10時間程度でこのゲームを今から楽しめる。下の動画を観て、「もう怖すぎて絶対ムリ」じゃないなら後悔はしないはずだ。

現実とフィクションが融けあうUIデザイン

なるべく情報を入れずにプレイしたほうがいいから、よしやるぞとなってくれた人はここでタブを閉じてくれていい。だけどまだ付き合ってくれる人は僕の推しポイントも語らせてほしい。

それは『パラノマサイト』のプレイ中に必ず参照する「資料」システムだ。

プレイ中に出会った人物の情報だったり、七不思議の情報だったり、訪れた地域の情報が記録されていて、ボタンを押すといつでも呼び出せる。ゲーム中に詰まったときの道しるべであり、人物同士の関係が深まると情報が増えたりする楽しいコンテンツでもある。

プレイ画面。右上にアイコンが出てるといつでも資料を見られる

この資料の見せ方が超よいのだ。

『パラノマサイト』は我々が暮らしている現実にほんとうにある本所(浅草とか両国らへん)の地域を舞台にし、そこに今でも語られ残っている「本所七不思議」をベースにした設定が物語の根幹となる。

つまりゲーム内の情報には現実の部分と虚構の部分があるわけだが、資料内ではそれらの見た目が区別されていない。ゲーム内のフィクションである超常現象の説明と現実の地域の解説が同じUIで見せられ、文体で書かれている。たとえば「墨田区」の説明と「呪主 かしりぬし」というゲーム内用語の説明の見え方が同じだ。

特に拡張解釈されている「本所七不思議」については同じ解説テキスト内で現実に遺っている資料とフィクションが混在しており、どこまでが本当なのかマジでわからない。

本作のプレイヤーはそんなどこまで現実なのかわからない(けれどゲーム内では真実である)テキストを道しるべにプレイしていくことになる。すると知らず知らずのうちに、圧倒的リアリティの力でゲームに没入してしまうのだ。僕もこれは昭和後期に本当にあったことなんじゃないか?と心のどこかで信じながらプレイしていたと思う。すごく素敵な体験だ。

こういうやりかたは強力なコミュニケーション方法だけれど、許されるのはゲームというメディアだからこそだろう。正しい情報を伝えるメディアではなく、フィクションで面白さを伝えるメディアであるという前提。そしてユーザーがプレイヤーとして能動的に世界に影響するから、メディアの一部、一種の共犯になるという特性。『パラノマサイト』はそんなゲームの在り方を存分に利用した見事な作品だと思う。

そんなゲームが2000円と10時間で遊べる今はチャンスでしかないなので、ゲーム以外のメディアからネタバレをくらってしまう前に、ぜひ自分の目と身体でプレイしてみてほしい。

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