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アインシュタインタイル「HAT」と「TURTLE」の向こう側のタイルを愛でる。とにかく愛でてみる。

前回の記事はこちら。

今回は、前々回の続きとなります。

向こう側とは?

前々回の記事でも登場した、論文「An aperiodic monotile」から、11ページにある、以下の図。

(Tile(x,x)と名付けている)単一のタイルを平面に敷き詰めた図です。
前々回は、Tile(1,1)を愛でたわけですが、今回はTile(1,4)とTile(4,1)を愛でてみよう、です。
ちなみに、非周期敷き詰めモノタイルはTile(1,$${\sqrt{3}}$$)こと「HAT」、
Tile($${\sqrt{3}}$$,1)こと「TURTLE」だけではなく、

Tile(0,1)からTile(1,1)の間の変化途中のタイル、
Tile(1,1)からTile(1,0)の間の変化途中のタイル、
全部非周期敷き詰めモノタイル

というとんでもないことになっております。
そういった意味では、Tile(1,4)とTile(4,1)はとりわけ特別なタイルではありませんが、図で登場した以上、愛でるのです。

Tile(4,1)とTile(1,0)

まずは、Tile(4,1)から。
1枚だけ抜き出すと、こんなかたち。

短い辺の長さを1とすると、長い辺は4、もっと長い辺は2倍の8になります。
この図形も「HAT」や「TURTLE」と同様に、「ヘリコプター」――2つの点対称図形にわけることができます。


さて、いままで「ヘリコプター」化したタイル4つを並べてみます。


左から、
・Tile(1,$${\sqrt{3}}$$)こと「HAT」
・Tile(1,1)
・Tile($${\sqrt{3}}$$,1)こと「TURTLE」
・Tile(4,1)
です。
一連の図形の変化をみると、一番右にくるTile(1,0)は

と、2つの図形にわけることができます。
というか、回転主翼(黄色)は正三角形を6個、回転尾翼(青)は正三角形を2個組み合わせた図形です。
そして、以下の5つの部分(ただし、2つ重なっている部分があるので、見た目は4箇所)から2つの図形を変化させていることが推測できます。

さてそうなると、「HAT」の時点で、回転尾翼の変化する2箇所は「お腹と背中がくっついちゃった状態」となってしまいます。

このさきどうなってるの?って話です。

Tile(1,4)、お前もか!

Tile(1,4)はこんなかたち。

なんというか、猫と鶏のハーフみたいな形状です。
これも、他のタイルと同様に2つの図形にわけてみることにします。
参考に、右に「HAT」を並べてみます。


回転尾翼(青)は離れていますが、点対称にはなっていますが、回転主翼(黄色)は、対称もなにもあったものじゃありません。

しかしですね、Tile(4,1)にある図形(緑)をもう1個追加すると、とんでもないことに気づきます。



そうなのです。
回転尾翼(青+緑)はつながっていますし、回転主翼(黄色+緑)は点対称です。
2つの図形が重なっている部分(緑)は、

対消滅で失くなる(ように扱う)

のです!
そうするとですね、もう一方の変化の端にあるTile(0,1)の解釈が変わってきます。

Tile(0,1)は、正三角形を4つ組み合わせた図形ではなく、

正三角形6個組み合わせた図形に、
正三角形2個組み合わせた図形が
重なっているので、
実は正三角形8個組み合わせた図形

ということで、構成する要素はTile(1,0)と同じです。

……ほんまかいな?

【余談】
ちなみに、最初の「HAT」の記事『アインシュタインタイルを愛でる。とにかく愛でてみる。』では、今回の結果とは異なる仮説を立てておりました。


猫の爪は隠れる

Tile(0,1)から変形して、無数の非周期敷詰めモノタイルをたどり、Tile(1,0)に到達します。
さて、Tile(0,1)の変形は、2通りの方向――右利きと左利きみたいなもの――があります。

例えるならば、回転尾翼(青)は猫の爪みたいなものです。
Tile(0,1)からTile(1,0)への変遷は、爪を引っ込める動きが最後まで追えます。
ところが、Tile(1,0)からTile(0,1)は、初っ端で、右?左?どっちの手(脚?)なのか不確定です。


三層に重なる敷き詰め

さらにさらに。
Tile(1,0)は、平面敷き詰めすると、緑の図形は他のTile(1,0)と重なることになるので、都合三層に重なっています。


上の図のように、黄色Tile(1,0)には、緑の部分(見えません)が重なっていて、その上に青Tile(1,0)がさらに重なっています。
青Tile(1,0)にも、緑の部分(見えません)はあります。

この点をふまえて、Tile(4,1)を平面に敷き詰めてみると、

Tile(4,1)の外にある緑の図形(みえません)は、Tile(4,1)内にある2箇所の水色の図形に重なることがあります。


辺の長さを揃えてみる

Tile(4,1)の辺の長さですが、実はあまりきれいではありません。


回転尾翼(青と緑)の辺の長さの比をあらわしてみると、

青の短い辺:青の長い辺:緑の辺=1:$${\sqrt{3}}$$:4−$${\sqrt{3}}$$

です。
有理数(整数)ー無理数は、計算が面倒くさくなります。

なので、青の長い辺:緑の辺=1:1にした、別のアインシュタインタイルをこしらえてみます。
1番のメリットは、「HAT」や「TURTLE」のように、凧(Kite)の図形1種類のみの組み合わせで作れるのです。



せっかくなので、もう一方のアインシュタインタイルも作ってみました。
辺の比を考慮すると、左のタイルがTile($${3\sqrt{3},1}$$)で、右のタイルがTile($${1,3\sqrt{3}}$$)となります。

Tile($${3\sqrt{3},1}$$)の凧の数:
38個(回転主翼:回転尾翼=36:2)

Tile($${1,3\sqrt{3}}$$)の凧の数:
64個(回転主翼:回転尾翼=42:22)

締め

ということで、なんかえらいことになりました。
アインシュタインタイルを愛でて、結局6回も記事を書いてしまいましたが、ひとまず一区切りとします。
また何かあれば、書くかもしれません。

そろそろ、せまゲーの方にも戻っておきたい。

では。

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