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アインシュタインタイル「SPECTRES」を愛でる。とにかく愛でてみる。

はい、またもやです。
6回にわたって記事にしたアインシュタインタイルがまた戻ってきました。
というのも先日、またもや進展がありました。
日本テセレーションデザイン協会の代表、荒木義明さんのツイートです。

2023年3月に発見された、アインシュタインタイル「HAT」や「TURTEL」などは、タイルを裏返して敷き詰めなければなりませんでした。
裏返した場合を1種類と認めていいのか、ちょっと議論が出るポイントでした。
ところが、今回は

裏返さずに1種類だけ
非周期的に敷き詰めができてしまう

そんなタイルが見つかったのです。
2023年6月1日にGIGAZINEが記事にしています。



実は紹介していた?!

そのタイルは、実は以前、記事にしていました。

Tile(1,1)です。

こんにちは。
私がTile(1,1)です。

2023年3月に発表された論文「An aperiodic monotile」では、「HAT」や「TURTLE」の仲間でありながら、周期性を持つ例外的なタイルでした。
ところが、2023年5月に論文「A chiral aperiodic monotile」にて、実はほかの仲間のタイルとは違う方法で、裏返しなしで非周期的に敷き詰めできることを示しました。

そのため、Tile(1,1)にひと工夫をほどこします。
裏返しすると平面ぴったりと敷き詰めができなくなるように、

互い違いの辺が、ぴったり合わさるような
凸凹曲線にします。


引用:An chiral aperiodic monotile p.3
Figure 1.1
https://arxiv.org/abs/2305.17743

左がTile(1,1)で、真ん中と右が辺を変形したタイルです。
なんとこちらも、ルールに沿っていれば辺の変形が無限にできます。
つまり、鏡像なしのアインシュタインタイルは無限にあるのです。

ちなみに、右側のタイルには「SPECTRES」と名付けられています。
「SPECTRES(スペクトル)」はフランス語で「幽霊」です。
ちなみに英語だと「SPECTER(スペクター)」です。

個人的には、ドラクエのモンスター「マネマネ」にみえてしまいます。

なにせ、様々な形のアインシュタインタイルが登場しております。
apuさんが、DESMOSを用いて「SPECTRES」の仲間を産み出しているツイートがあります。


たとえば、ステゴサウルスも「SPECRTES」でした。


「SPECTRES」もヘリコプター?!

アインシュタインタイルの形状に注目すると、形状の異なる2種類の点対称の図形(黄色の回転主翼、青色の回転尾翼)を組み合わせたものになっています。

一番左が「HAT」、その隣がTile(1,1)、その隣が「TURTLE」、さらに隣がTile(4,1)です。

「SPECTRES」も、ヘリコプターになります。

左がTile(1,1)
真ん中が2つの点対称図形に分けたTile(1,1)
右が2つの点対称図形に分けた「SPECTRES」

興味深いのは、
・「HAT」や「TURTLE」などは、回転尾翼は線対称だが、回転主翼は線対称ではない。
・Tile(1,1)は、回転尾翼と回転主翼どちらも線対称。
・「SPECTRES」は、回転尾翼と回転主翼どちらも線対称でない。

です。
論文「A chiral aperiodic monotile」にある単語「chiral(キラル)」。
化学ではよく出てくる言葉のようで、語源(ギリシア語で掌「χειρ (cheir)」)から右手と左手のように裏返すと重ね合わせができない、という意味です。

これを踏まえると、
・「HAT」や「TURTLE」などは、一部裏返して非周期的にタイルを敷き詰められる。
・Tile(1,1)は、周期的にタイルを敷き詰めることもできる。
・「SPECTRES」は、裏返しなしで非周期的にタイルを敷き詰められる。

と、微妙に対応が付けられるのが、不思議ですな。


Tile(1,1)は両手使い?!

ところで、Tile(a,b)とTile(b,a)には、こんな関係があります(※ただし、Tile(0,1)とTile(1,0)は特別なので除きます)。

例として。
左が「HAT」ことTile($${1,\sqrt{3}}$$)で、右が「TURTLE」ことTile($${\sqrt{3},1}$$)です。
双方とも、構成する2辺が1:$${\sqrt{3}}$$の凧形を数個組み合わせた図形です。
さらに、(黄色の)垂直尾翼は比率を変えても重ねあわせることはできませんが、一方を裏返すと重ね合わせられる鏡像関係です。

そしてTile(1,1)ですが、回転主翼が線対称でもあるので、「HAT」の向きも「TURTLE」の向きも両方ともとることができます。

例の1つ目。
凧形にならって、四角形をはめてみました。


例の2つ目。
回転尾翼を半分にした五角形をはめてみました。

締め

ということで、「SPECTRES」を愛でてみました。
途中Tile(1,1)がメインとなりましたが。

次回ですが、1枚だけ愛でずに、実際に非対称に敷き詰められる「置換パターン(Substitution)」を愛でてみたいと思います。

あと、回数も重ねてきたので、マガジンも作ることにしました。

では。

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