「LGBT」の「T」が「トランスジェンダー(広義)」を指すのか「トランスジェンダー(狭義)」を指すのか不明だし、なかには「トランスセクシュアル(性同一性障害)」と誤解している人もいるし、LGBT活動家やアライたちのそれぞれの主張においても「トランス」の定義がブレているという問題がある。
しかし、さらに「LGBTQ」という人もいて、その「Q」というアルファベットがどんな属性を指すのか、わたしにはさっぱり意味が分からないし混乱している。
わたしが現在のところ把握しているのは、「Q」には
①クエスチョニング(Questioning)
②クィア(Queer)
の二通りの解釈が存在するということだ。
どちらも頭文字が「Q」なのでまぎらわしい。
「Q」とは「クエスチョニング」なのか「クィア」なのか、あるいは「クエスチョニングとクィアの両方」なのか。
そしてそれぞれの意味は何なのか。
ちなみにわたしがいま読んでいる『ノンバイナリーがわかる本』の用語解説にはこう書いてある。
ジェンダークィア=ノンバイナリー……??
そしてノンバイナリーについてはこう説明してある。
ノンバイナリーはバイナリーではない人すべてということ……?
けっこう範囲広くない?
ハイフンの有無はさておき、終始こんな感じで雲をつかむような言い回しなのでよく分からないままだった。
最近Twitterで「Q+」「PZN」をめぐるやりとりがあった。
くわしい経緯は毛糸子さんのnoteに書いてあるが、わたしもこの件に関して言及することにする。
まことさん山下真実さんのツイート
埼玉県内企業向けに、LGBTQに関する研修・相談窓口のサービス提供を開始!:時事ドットコム (jiji.com)
JobRainbowの記事【修正前】
【修正前のJobRainbow記事 アーカイブ】
LGBTPZNとは?【ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア】 | LGBT就活・転職活動サイト「JobRainbow」 (archive.md)
JobRainbow【修正前】の記事にはこう書いてある。
ジョブレインボー『ダイバーシティ求人サイト』(@JobRainbow)が削除した連続スレッド
この記事はそもそも2019年当時から問題点を指摘されていた。
そしてJobRainbowはこの記事への批判について2019年9月28日、Twitterの連続スレッドにおいて釈明していたが、投稿が削除されてしまったため、アーカイブのリンクを貼って全文引用する。
アーカイブ①
アーカイブ②
加賀ななえさんのツイート
2023年6月11日午前8時43分、加賀ななえさんがまことさん山下真実さん(@plmakoto)に引用リツイートするかたちでこう発信した。
「埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり基本計画(案)」に対する県民コメントへの回答をみると、埼玉県はLGBTQの「Q」を「クエスチョニング(性の在り方を決めていない、決められない等の人)」と認識しているようだ。
( “等”ってなに?)
余談だが、埼玉県ホームページの令和4年度LGBTQ県民講座 配信中~性の多様性に関する基礎知識~ - 埼玉県 (saitama.lg.jp) では、
LGBTQの「Q」は「クエスチョニング」で「自分自身のセクシュアリティを決められない、分からない、決めないなどの人」かつ「クィア」で「規範的ではないとされる性のあり方を包括的にあらわす言葉」と説明されていた。
(また“など”が出てきた)
( “規範的でないとされる性のあり方”とは具体的にどういったことだろう?)
今のところ、埼玉県にとっての「Q」の解釈は「クエスチョニング」と「クィア」の両方らしい。
(余談終わり)
すると、2023年6月11日午後5時29分、加賀ななえ市議のツイートに引用リツイートするかたちで星賢人@JobRainbowCEOさんから以下のような発信があった。
星賢人@JobRainbowCEOさんのツイート
「法的措置を検討します」
星賢人@JobRainbowCEOさんは加賀ななえさん以外にもこの件について発信した他の数十件のアカウントに対しても
「株式会社JobRainbow代表取締役の星です。 本ツイートはJobRainbow社の記事執筆の趣旨を誤解させる表現を用いて業務を妨害、信用を毀損する違法行為で、名誉毀損罪及び偽計業務妨害罪等にあたり得ます。 対応いただけない場合は、法的措置を検討いたします」
というリプライを送っていた。
JobRainbowがQにPZNが含まれると記事にしているというデマについて
それに対して加賀ななえさんは2023年6月11日午後6時3分、引用リツイートでこう反論した。
加賀ななえさんの反論ツイート
たしかに加賀ななえさんのJobRainbowの記事【修正前】のアーカイブと【修正後】のサイトを見比べると、相違点がいくつかみられる。
つまり、加賀ななえさんが最初にツイートした午前8時43分時点と、それに対して星賢人さんが「法的措置を検討します」とツイートした午後5時29分時点で、記事の内容が書き換えられているということだ。
加筆修正前の記事の内容への批判に対して、加筆修正後の記事を根拠にして
「悪質なデマ」というのは筋が通っていないのでは?と思う。
加賀ななえさんがスクリーンショットやアーカイブを貼った通り、修正前の記事では「Q+」「用語解説」というページで「ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア」が取り上げられていた。
修正後の記事では「用語解説」だけ残して「Q+」という項目が削除されている。
これはわたしの個人的な意見だが、2019年の9月にも記事に対する問題点の指摘があったのにかかわらず、3年半もずっと放置されてそのままだった修正前の記事が、もし誤解を招くような表現だったとするならば、「誤解を招く表現に関しての修正とお詫び」を明記すればよかったのではないだろうか。
それなのに、批判をうけたあとに何も言わずに記事を修正したうえで「法的措置を検討いたします」とリプライをつけられると、顧問弁護士など何の後ろ盾もない人たちにとってさぞ恐ろしいことだろう。
誤解を解くために必要な段階をいくつも飛び越えているように思う。
それこそ「LGBT理解増進法」が話題になっている時期だけあって、火に油を注ぎかねないのではないかと不安になってしまう。
(この記事を書いているわたしも“理解増進”のために訴えられてしまうのだろうか……)
ともかく、ペドフィリア(小児性愛)・ズーフィリア(動物性愛)・ネクロフィリア(死体性愛)が社会的合意が得られづらい性的嗜好であることは確かだ。
ネクロフィリアについては、日本でも葬儀場で事件があったし、色々と議論の余地があるだろう。
葬儀場の職員が、亡くなった「女子高生」の胸を…被害者の母は涙ながらに「娘のお墓に土下座してほしい」(抜粋) | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)
今回はなかでも子どもの被害者をうみだしかねない「ペドフィリア」についてより詳しく調べてみることにする。
ペドフィリアについて
LGBT活動家や有識者の意見
Twitterで観測できる範囲で、有識者やLGBT活動家の人たちの意見を集めてみた。
清水晶子さん
瀬戸マサキさん
まとめると
「『クィア』の射程にペドフィリアは入ってくる」が「私が名詞としてクィアを使う時(例えば「クィアの権利と尊厳」とか言う時)に、そこにペドファイルを含めて考えてはおりません。LGBTQ+の「Q」にも含めて考えてはおりません」
ということだろうか。
( では最初の“射程”とはどういう意味だったのだろう?)
( この方が含めないという意見なのは分かったけど、では他の人が「クィア」を使う時にペドファイルを含める余地があるということなのだろうか?)
畑野とまとさん
文脈からみて、畑野とまとさんはLGBTQの「Q」を「Queer」と認識しているようだ。
「LGBTQ」のQはQueerで「Queerにペドフィリアは含まれないのは明白だ」けど、清水晶子さんの「ペドフィリアはセクシュアリティの一つであること」までは否定できないということなのだろうか。
NHK福祉情報サイト ハートネット
“SOGIハラ”-体験談・メッセージ(2018年2月“チエノバ”) - カキコミ板 6 | NHKハートネットには、 “SOGIハラ”に関しての番組ディレクターのコメントと共に、2018年2月のハートネットTV「チエノバ」で募集した意見が掲載されている。
アーカイブ “SOGIハラ”-体験談・メッセージ(2018年2月“チエノバ”) - カキコミ板 6 | NHKハートネット (archive.is)
いくつか寄せられているコメントのなかには「PZNさん」というペンネームの人の投稿とそれに対する反論が掲載されていた。
PZNさんによる提案
(NHKの公式サイトがなんの注釈もなくこの意見を載せていたのでわたしは驚いた)
それに対する反論意見
一部アライの方たちの意見
たぬきのたからばこ(カラバコ)さん
アーカイブ
Ringo@入管解体さん
アーカイブ
結局のところ、「Q」ってなに?
わたしは以下のようにツイートしたところ、
このようなご意見を引用リツイートでいただいた。
「『境界線を引く』事自体が管理・支配する側の論理であって、人権重視ではないんですよ」とのことだが、定義ができないことを法律の文言にするには無理があるのでは?
そもそも、なぜこんなに「Q」のなかに(PZNの中でも特に)ペドフィリアが含まれるのかが話題になるかというと、この話に関心がある人のなかにはお子さんがいる方もいるだろうし、子どもの時に性的被害にあった方もいるし、「子どもを守りたい」と考えている人も多いからだろう。
「ペドフィリアとチャイルドマレスターは違う」というアライの方の意見もあったが、わたし個人の意見としては実行に移すかどうかは確かに高いハードルがあるものの、小児性愛を是としてしまうと、将来的な被害者が増えてしまうのではないかと懸念している。
擁護者は「性暴力は許されない」ともいっている。しかし、子どもにとっては、大人から性的な関心を持たれ、それがセクシュアリティの一つとして認められている社会で生きること自体が児童虐待になりうるのではないか?
ペドフィリアがQに含まれるかどうかを心配する人たちに対して「Qにペドフィリアが含まれるのはデマだ」や「法的措置を検討しています」などの強い言葉を向けるよりも、県からLGBTQに関しての業務委託を受けている企業として、ペドフィリアを批判する姿勢を強く示してほしかった。
正直、アカデミアやクィア理論となんの関係のない、一般の人からすると、特にお子さんを育てている方はなおさらのこと「ペドフィリアはセクシュアリティの一つ」という意見ですら恐怖を感じる人もいるだろう。
そういったところに、ペドフィリアを理論として扱っている学者と一般市民との感覚に大きな相違があるのではないか?
わたしがこれほど考えても「Q」が「クエスチョニング」なのか「クィア」なのか「両方」なのか分からないので、この話題に関心のない一般の人はさぞ混乱するだろうと思う。
そもそも、使う人によって「Q」の意味が微妙にズレていると議論にならないのでは……??まるで「バベルの塔」のようではないか!
わたしたちはいつの間にか若干バベっていた――!?!?(動詞:バベる)
そして、さらに「LGBTQ+」という表現をする人もいる。
「+」ってなに……!?アルファベットですらない……!?
LGBTQ+の「Q」とかなにか、「Q」とは「クエスチョニング」なのか「クィア」なのか、あるいは「その両方」なのか、「クィア」「クエスチョニング」のそれぞれの意味、そして「+」の指し示す範囲、そしてPZNが含まれるのかどうかの共通認識を持たないと、わたしたちは議論すら始めることができない。
理解を求めていくのならば、なおさらのこと、あらゆる人に分かりやすい表現が求められるのではないか?
追記(2023年6月17日)
星さんに対してわたしの意見をツイートした。