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「Q」というアルファベットの謎

「LGBT」の「T」が「トランスジェンダー(広義)」を指すのか「トランスジェンダー(狭義)」を指すのか不明だし、なかには「トランスセクシュアル(性同一性障害)」と誤解している人もいるし、LGBT活動家やアライたちのそれぞれの主張においても「トランス」の定義がブレているという問題がある。

しかし、さらに「LGBTQ」という人もいて、その「Q」というアルファベットがどんな属性を指すのか、わたしにはさっぱり意味が分からないし混乱している。

わたしが現在のところ把握しているのは、「Q」には
①クエスチョニング(Questioning)
②クィア(Queer)
の二通りの解釈が存在するということだ。
どちらも頭文字が「Q」なのでまぎらわしい。
「Q」とは「クエスチョニング」なのか「クィア」なのか、あるいは「クエスチョニングとクィアの両方」なのか。
そしてそれぞれの意味は何なのか。

ちなみにわたしがいま読んでいる『ノンバイナリーがわかる本』の用語解説にはこう書いてある。

ジェンダークィア genderqueer
「ジェンダークィア」と「ノンバイナリー」の二つの言葉は、使いかたと語源に重要な違いがありますが、本書では、特記しない限り、同じ意味で使っています。自分のアイデンティティが「男性」や「女性」の枠に収まらないと思う人の多くは、自分をノンバイナリーだとは考えていません。その理由については、後ほど、この章で説明します。
本書で「ノンバイナリー」が「ジェンダークィア」より頻繁に使われているとしても、それは意図的なものではなく、単に私が自分自身をノンバイナリーと認識しているためでしかありません。そしてそれは、私が自分のジェンダー・アイデンティティを模索し始めたときに、コミュニティのほとんどの人がノンバイナリーという言葉を使っていたからでもあります。このようにアイデンティティにはいくつかの呼び方があると読者にも知って欲しいし、私自身の確認のためにも、両方の言葉を本の中で使っています。

『ノンバイナリーがわかる本』p.23~p.24

ジェンダークィア=ノンバイナリー……??
そしてノンバイナリーについてはこう説明してある。

ノンバイナリー nonbinary
多くのアイデンティティの中で最も一般的なのは「男性」や「女性」といったアイデンティティでしょう。本書では、ノンバイナリーを多くのジェンダー・アイデンティティの中の一つとして説明しています。概して言えば(そして本書の目的に沿って言えば)、「ノンバイナリー」とは「男・女」「彼・彼女」「男性・女性」のようなバイナリーのどちらか一方にとらわれないすべてのジェンダー・アイデンティティを指しています。ノンバイナリーは、ノン=バイナリー(non-binary)とハイフンを入れて書くこともありますが、この本では「ノンバイナリー(nonbinary)」と記しています。

『ノンバイナリーがわかる本』p.25

ノンバイナリーはバイナリーではない人すべてということ……?
けっこう範囲広くない?
ハイフンの有無はさておき、終始こんな感じで雲をつかむような言い回しなのでよく分からないままだった。

最近Twitterで「Q+」「PZN」をめぐるやりとりがあった。

くわしい経緯は毛糸子さんのnoteに書いてあるが、わたしもこの件に関して言及することにする。

まことさん山下真実さんのツイート

埼玉県内企業向けに、LGBTQに関する研修・相談窓口のサービス提供を開始!:時事ドットコム (jiji.com)

JobRainbowの記事【修正前】

【修正前のJobRainbow記事 アーカイブ】
LGBTPZNとは?【ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア】 | LGBT就活・転職活動サイト「JobRainbow」 (archive.md)

JobRainbow【修正前】の記事にはこう書いてある。

LGBT「P」「Z」「N」とは
PZNとはそれぞれ、
P:ペドフィリア(小児性愛)
Z:ズーフィリア(動物性愛)
N:ネクロフィリア(死体性愛)

の頭文字をとった略語です。
フィリア(philia)という言葉自体に「病的な傾向」というニュアンスがあるため、ニュートラルな表現と言えるかについても議論がありますが、今回は便宜上こちらを使用します。
では、ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアとはそれぞれどういった意味なのでしょうか。それぞれ解説していきます。

1. ペドフィリア(小児性愛)
ペドフィリアとは、児童にのみ性愛感情を抱くセクシュアリティを指します。
米国精神医学会の診断マニュアルであるDSM-5においては「小児性愛障害」として扱われていますが、こちらを「障害」と表現していいのかについては今もなお議論が白熱しています。

2. ズーフィリア(動物性愛)
ズーフィリアとは、動物に性愛感情を抱くセクシュアリティを指します。
性愛感情であれば法律によって規定されることはありませんが、獣姦行為となると、国によっては罪になることもあったり、また衛生上の観点からも問題視されています。

3. ネクロフィリア(死体性愛)
ネクロフィリアとは、死体に性愛感情を抱くセクシュアリティを指します。
ネクロフィリアを題材とした文学作品は非常に多く、『雪国』などの作品で知られる川端康成の『眠れる美女』にもネクロフィリアの考え方が登場します。

ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア=確実に犯罪者?
性行為とは一人だけで成り立つわけではなく、自分と相手が存在します。そして、互いが自律的な存在であり、性的関係を結ぶことに関して合意していなければ、どちらか一方の性的な感情の押し付けになってしまいます。
合意を得ていない相手に性的な行為をすることは、相手の精神を深く傷つけることになり、到底許されることではありませんし、そこには性的嗜好・性的指向がどうであれ関係ありません。
そして、多くの場合「相手が自律的でありかつ合意を得ることができる」状態を実現することが、ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアの場合難しいです。
しかし、日本では、思想の自由が認められています。性愛感情を抱くことは罪ではありませんし、「ペドフィリアは精神障害に認定されているじゃないか!」という意見に関しては、同性愛もかつて「障害」とされていたという事実を忘れてはいけません。
「性的感情」と「性行為」が結び付けられ、何もしていなかろうがペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアだから犯罪者だ、と思われ苦しむ人がいるのも事実です。

「LGBTとPZNは違う!一緒にするな!」「いや、広い意味でのマイノリティとして連帯していくべきだ!」といった対立が数多く見られますが、それこそが「LGBTPZN」を利用して内部分裂を図ろうとした人の思うツボでしょう。
まずは、どのような嗜好であっても、感情に止める限りは、簡単に他者によって否定されてはならないのではないか、と慎重に検討するべきかもしれません。

JobRainbowの記事【修正前】アーカイブより引用

ジョブレインボー『ダイバーシティ求人サイト』(@JobRainbow)が削除した連続スレッド

この記事はそもそも2019年当時から問題点を指摘されていた。

そしてJobRainbowはこの記事への批判について2019年9月28日、Twitterの連続スレッドにおいて釈明していたが、投稿が削除されてしまったため、アーカイブのリンクを貼って全文引用する。

アーカイブ①

アーカイブ②

こちらの記事につきまして、多数のご意見を頂いております。当該記事につきまして、JobRainbow編集部より当該記事の掲載された背景と見解を説明させていただきます。
(注:「こちらの記事」とは【修正前】のPZNに関する記事のこと)

①「LGBTとPZNを一緒に扱う必要がないのでは?」というご意見がありましたので、お答えいたします。
当該コラムで説明されているとおり、「LGBTPZN」はLGBT運動に反対するためにポーランドで利用されました。ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアにある負のイメージを利用し、セクシュアルマイノリティ内でのいわゆる「内輪もめ」を狙ったものだといわれています。

しかし私たちは、「LGBTPZN」という造語を敬遠するのではなく、その歴史的背景・そこに潜む様々な重要な含意を知り、ダイバーシティについて考える必要があるのではないでしょうか?

「PZNはLGBTとは違う」と区別するとき、私たちは「性的嗜好/病気/性的倒錯/犯罪だから」と言うかもしれません。しかし、②③でお答えするように、LGBTPZNはそのような「常識」に対して重要な含意をもっています。LGBTを語る際に避けて通れない論点をもっています。

当該コラムはLGBT・LGBTQ+・LGBTQIAなどに替わってLGBTPZNを使うことを奨励しているのではなく、その用語の意味や含意を解説することで議論のきっかけが生まれることを願って書かれました。性のあり方の多様性について考えるきっかけとなったのならば、幸いです。

②「LGBTを、PZNといった”性的倒錯”や”犯罪”と一緒にするべきではない」というご意見をいただきました。この点についてお答えいたします。
まず、性のあり方と犯罪の実行は、全く別のことがらです。たとえばヘテロセクシュアル男性が女性に/ゲイ男性が別の男性に/小児性愛の人が小児に性的危害を加えた場合、それは犯罪です。しかし、性のあり方それ自体は犯罪ではありません。

かつてLGBTは、”性的倒錯” “病気” “犯罪”であるとされていました。しかし、精力的なLGBT運動によってそのイメージは払拭されつつあります。LGBT運動の歴史は、「あなたの性のあり方(欲求)は性的倒錯・病気・犯罪である」と他人から決めつけられることに抵抗してきた歴史といえます。

この歴史に鑑みると、「あなたの性のあり方は性的倒錯・病気・犯罪である」と誰かを判定するのは、かつてLGBTがされていたことの繰り返しかもしれません。「あなたの性のあり方は性的倒錯・病気・犯罪である」と決めつけられて苦しい/苦しんだ思いを、別の誰かにまた負わせるかもしれないのです。

だからこそ私たちは、「あなたの性のあり方は性的倒錯・病気・犯罪である」と言うこと自体にまずはためらいを感じる必要があるのではないでしょうか。

③「PZNは性的嗜好だから、LGBTを一緒にするべきではない」というご意見もいただきました。この点についてもお答えいたします。
この点について参考になる論考がありますので、ご紹介させていただきます。
Thinking Sex: Notes for a Radical Theory of the Politics of Sexuality (Gayle S. Rubin)
ダイバーシティは「取り戻す」もの 差別の歴史の中で生み出された”性的指向”と”性的嗜好”の違い

まず、異性愛やシスジェンダー(出生時の性別と同じジェンダーを生きること)もLGBTもすべて「性のあり方」のひとつです。PZNもその意味ではひとつの「性のあり方」にすぎません。また、②で書いたとおり、どんな性のあり方もそれ自体は犯罪ではありません。

私たちは、「たかが趣味(性的嗜好)じゃん。差別じゃないでしょ」という考え方をいさめるために、「いや、性的指向だから差別してはいけない」と反論することがあります。しかしここには、「趣味(性的嗜好)であれば差別してもよい」という隠された前提があります。

「趣味(性的嗜好)であれば差別してもよい」の裏には、「性的指向は変えられない・先天的/性的嗜好は変えられる・後天的」という考え方があります。しかしよく考えてみると、性的嗜好も変えられないことが多く、仮に変えられるもの・後天的なものだとしても、差別は正当化されません(例:宗教)。

つまり、性的指向はもちろん、性的嗜好に基づく差別も正当化できません。LGBTPZNという概念/造語は、まったく扱われ方が異なる性のあり方(LGBTとPZN)を並べることで、このような問題を提起していたといえます。

繰り返しになりますが、当該コラムはLGBTPZNという用語の使用を奨励しているのではなく、その用語の意味や含意を解説することで議論のきっかけが生まれることを願って書かれました。性のあり方について考えるきっかけとなったのならば、幸いです。

ジョブレインボー『ダイバーシティ求人サイト』さん
(@JobRainbow)が消去したツイート一連スレッドのアーカイブより引用

加賀ななえさんのツイート

2023年6月11日午前8時43分、加賀ななえさんがまことさん山下真実さん(@plmakoto)に引用リツイートするかたちでこう発信した。

「埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり基本計画(案)」に対する県民コメントへの回答をみると、埼玉県はLGBTQの「Q」を「クエスチョニング(性の在り方を決めていない、決められないの人)」と認識しているようだ。
( “等”ってなに?)

余談だが、埼玉県ホームページの令和4年度LGBTQ県民講座 配信中~性の多様性に関する基礎知識~ - 埼玉県 (saitama.lg.jp) では、

LGBTQの「Q」は「クエスチョニング」で「自分自身のセクシュアリティを決められない、分からない、決めないなどの人」かつ「クィア」で「規範的ではないとされる性のあり方を包括的にあらわす言葉」と説明されていた。
(また“など”が出てきた)
“規範的でないとされる性のあり方”とは具体的にどういったことだろう?)

埼玉県のホームページでは「クエスチョニング」と「クィア」が同時に紹介されている

今のところ、埼玉県にとっての「Q」の解釈は「クエスチョニング」と「クィア」の両方らしい。
(余談終わり)

すると、2023年6月11日午後5時29分、加賀ななえ市議のツイートに引用リツイートするかたちで星賢人@JobRainbowCEOさんから以下のような発信があった。

星賢人@JobRainbowCEOさんのツイート

「法的措置を検討します」

星賢人@JobRainbowCEOさんは加賀ななえさん以外にもこの件について発信した他の数十件のアカウントに対しても
「株式会社JobRainbow代表取締役の星です。 本ツイートはJobRainbow社の記事執筆の趣旨を誤解させる表現を用いて業務を妨害、信用を毀損する違法行為で、名誉毀損罪及び偽計業務妨害罪等にあたり得ます。 対応いただけない場合は、法的措置を検討いたします」
というリプライを送っていた。

JobRainbowがQにPZNが含まれると記事にしているというデマについて

【JobRainbowが QにPZNが含まれると記事にしているというデマについて】
現在弊社JobRainbowがLGBTPZNについて解説した記事につき、あたかもQに PZNが含まれているとJobRainbowが主張しているとみせかけるような悪質なデマに対し、法的措置を行わせて頂きます。
当該記事にもありますが、LGBTPZNはまさにLGBTに纏わる運動を弱体化させるため、ポーランドにて作られたワードです。

本記事では、そうした差別と分断を生み出すワードがなぜ生まれたのか、またそれぞれのワードがどのようにネガティブなイメージを活用してLGBTを弱体化させるために利用されてきたのかを解説しているのみであり、本記事内でも"合意を得てない相手に性的な行為をすることは、相手の精神を深く傷つけることになり、到底許されることではありませんし、そこには性的嗜好・性的指向がどうであれ関係ありません"と明記しております。

LGBTに対する批判や差別を広げるために作られたワードに対し、背景情報を整理することで分断を食い止める目的で作成された記事になりますが、今回まさにLGBTを批判/差別する目的で本記事が悪質に切り取られ拡散されていることは残念で仕方ありません。 当該デマを拡散されている方々に対しては法的措置を行わせて頂くとともに、本記事についてもデマに加担しないよう注意喚起を追記いたします。

星賢人@JobRainbowCEOさん(@kentohoshi)のツイートより

それに対して加賀ななえさんは2023年6月11日午後6時3分、引用リツイートでこう反論した。

加賀ななえさんの反論ツイート

「QにPZNを含めている」とのご指摘ですが、私は「記事中に“Q +”という記事をPZNを含める形での記事を掲載している」と発信しており、事実として、当該記事には「Q +」の「用語解説」という記載があります。

また、貴社は記事の内容を大幅に書き換えていらっしゃいます。その後、書き換えたことには一切言及せずに「法的措置、デマ」という発信をなさっており、そうした行動は読み手に誤解を与える可能性があります
私や他の方への謝罪と記事中に変更点の明記を求めます。
以下が貴社が言及せずに書き換えた部分となります。

加賀ななえさん(@Nanaekaga)のツイートより

たしかに加賀ななえさんのJobRainbowの記事【修正前】のアーカイブと【修正後】のサイトを見比べると、相違点がいくつかみられる。
つまり、加賀ななえさんが最初にツイートした午前8時43分時点と、それに対して星賢人さんが「法的措置を検討します」とツイートした午後5時29分時点で、記事の内容が書き換えられているということだ。

加筆修正前の記事の内容への批判に対して、加筆修正後の記事を根拠にして
「悪質なデマ」というのは筋が通っていないのでは?と思う。

加賀ななえさんがスクリーンショットやアーカイブを貼った通り、修正前の記事では「Q+」「用語解説」というページで「ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア」が取り上げられていた。

修正後の記事では「用語解説」だけ残して「Q+」という項目が削除されている。

これはわたしの個人的な意見だが、2019年の9月にも記事に対する問題点の指摘があったのにかかわらず、3年半もずっと放置されてそのままだった修正前の記事が、もし誤解を招くような表現だったとするならば、「誤解を招く表現に関しての修正とお詫び」を明記すればよかったのではないだろうか。

それなのに、批判をうけたあとに何も言わずに記事を修正したうえで「法的措置を検討いたします」とリプライをつけられると、顧問弁護士など何の後ろ盾もない人たちにとってさぞ恐ろしいことだろう。
誤解を解くために必要な段階をいくつも飛び越えているように思う。

それこそ「LGBT理解増進法」が話題になっている時期だけあって、火に油を注ぎかねないのではないかと不安になってしまう。
(この記事を書いているわたしも“理解増進”のために訴えられてしまうのだろうか……)


ともかく、ペドフィリア(小児性愛)・ズーフィリア(動物性愛)・ネクロフィリア(死体性愛)が社会的合意が得られづらい性的嗜好であることは確かだ。
ネクロフィリアについては、日本でも葬儀場で事件があったし、色々と議論の余地があるだろう。

葬儀場の職員が、亡くなった「女子高生」の胸を…被害者の母は涙ながらに「娘のお墓に土下座してほしい」(抜粋) | デイリー新潮 (dailyshincho.jp)

今回はなかでも子どもの被害者をうみだしかねない「ペドフィリア」についてより詳しく調べてみることにする。

ペドフィリアについて

LGBT活動家や有識者の意見

Twitterで観測できる範囲で、有識者やLGBT活動家の人たちの意見を集めてみた。

清水晶子さん

どこから再燃しているのか知らないですが、またTLにあがっているようなので。ペドフィリアはセクシュアリティの一つだと思いますし、ペドファイルはその意味ではセクシュアルマイノリティです。それは否定できない。そのことと、性暴力や性虐待を許容しないこととは、別の話です。

清水晶子さん(@akishmz)のツイートより

瀬戸マサキさん

「クィア」の射程にペドフィリアは入ってくると思います。ペドフィリアをただ単に忌避する社会に迎合するのであれば、それは、性の規範に対する批判的考察が不十分であるように思います。フェミニズムやクィア系で表現規制に反対の人がたくさんいますよ。

「LGBT」には権利獲得運動用語の側面が強く、一方で性の規範に対する批判的側面はそこまで強くありません。Pとの共闘はなかなか叶わないかも…。Pはむしろクィア/フェミの中でも国家権力への抵抗を重視する類のものと親和性が高いかもしれません。

瀬戸マサキさん(@MasakiChitose)のツイートより抜粋

「元漫画」って何だろうと思ってこの人のTLに行ったら https://twitter.com/anna_maria107/status/1451467214704431107?s=21 のことらしい。私は自分の店でも他の場所でのイベントなんかでも「いかに男性による女性へのセクハラや性被害を事前に防ぐか」をかなり重要な課題だと思って工夫してる。もし「小さい女の子に囲まれたい」なんて要望を
/聞いたら、私に権限のある場では確実に「参加拒否」しますよ。「女性に囲まれたい」でもアウト。一方、この人が言う通り性犯罪もそうだしセクハラもほぼ男性が加害者だから、女性が「イケメンが多い席がいいです」って言っても「たまたまそうなったらラッキーですね〜」って要望は無視しつつ
/中には入れるよ。ただ、「小さい男の子に囲まれたい」って言われたら女性でもアウトだけど。だから、「元漫画は差別」派とか言われても、勝手な思い込みで印象操作するのやめなさいよ名誉毀損ですよ、としか。「ペドフィリアはセクシャルマイノリティ」ってのも、そんなこと言った覚えはないし、
/なんなら過去にはクィア系のイベントでそういう発言した人に対して「でもペドフィリア、特に男性による女児を対象とした性的欲望は、日本においてこれまで迫害の対象だったとは言えないのでは(優遇されてきた側面もあるのでは)」と返答したこともある。ネット上でも何度も「性的欲望自体を断罪/
/することはできないにしても、欲望は常に社会的文脈に左右されるから、例えば植民地支配における宗主国側の人間が植民地側の人間を性的に蹂躙するような描写がフィクションの世界で流行したとしたら、それはクィアという批評的態度の射程範囲に入ってくる」と言ってきた。ペドフィリアも同様に、/
「子ども」という概念の近代史や、「子どもの人権」という人権概念の発達とそれへの反発の歴史、資本主義における子どもの描写の流通と消費、その他色々な社会的文脈を捉えれば、批評の対象になる。それを「クィア(という批評的態度)の射程範囲だ」と書いたことはあるけど、ペドフィリアを/
/セクシュアルマイノリティだと言った覚えはない。むしろ過去には、そう主張した人にツイッター上で反論を書いたこともある。そこで書いたのは、日本のコンテンツ産業がこれまで女児描写をやりたい放題やってきたこと、特に女児への性的な視線を男性異性愛者の欲望の亜種として受け入れ、それを/満たすことに日本社会全体がこれまで寛容なばかりか積極的ですらあった、という内容だった。
なのに「ペドフィリアはセクシャルマイノリティ」「元漫画は差別」派、と言われている。印象だけで他人の個人名を出して非難するのはやめなさいよ。
訂正もせず撤回を明言するわけでもなく、ただ当該ツイートを消すだけで名誉毀損の事実が消えると思っているのだろうか。消さないよりはマシだから今回はスルーしてやるけど。

瀬戸マサキさん(@MasakiChitose)のツイートより

私が名詞としてクィアを使う時(例えば「クィアの権利と尊厳」とか言う時)に、そこにペドファイルを含めて考えてはおりません。LGBTQ+の「Q」にも含めて考えてはおりません。

瀬戸マサキさん(@MasakiChitose)のツイートより抜粋

まとめると
「『クィア』の射程にペドフィリアは入ってくる」が「私が名詞としてクィアを使う時(例えば「クィアの権利と尊厳」とか言う時)に、そこにペドファイルを含めて考えてはおりません。LGBTQ+の「Q」にも含めて考えてはおりません」
ということだろうか。
( では最初の“射程”とはどういう意味だったのだろう?)
( この方が含めないという意見なのは分かったけど、では他の人が「クィア」を使う時にペドファイルを含める余地があるということなのだろうか?)

畑野とまとさん

Queerがペドフィリアなどを含んでいないのは明白で、この言葉は元々「ゲイ」を名乗っていた人達の連帯の言葉として現在は使われています。

畑野とまとさん(@hatakeno_tomato)のツイートより

文脈からみて、畑野とまとさんはLGBTQの「Q」を「Queer」と認識しているようだ。

「LGBTQ」のQはQueerで「Queerにペドフィリアは含まれないのは明白だ」けど、清水晶子さんの「ペドフィリアはセクシュアリティの一つであること」までは否定できないということなのだろうか。

NHK福祉情報サイト ハートネット

本当はこむぎさんのツイートのURLを載せたかったのだが、
なぜか何度やっても反映されないのでスクリーンショットを載せる

“SOGIハラ”-体験談・メッセージ(2018年2月“チエノバ”) - カキコミ板 6 | NHKハートネットには、 “SOGIハラ”に関しての番組ディレクターのコメントと共に、2018年2月のハートネットTV「チエノバ」で募集した意見が掲載されている。

アーカイブ “SOGIハラ”-体験談・メッセージ(2018年2月“チエノバ”) - カキコミ板 6 | NHKハートネット (archive.is)

“SOGI(ソジ)ハラ”という言葉を知っていますか?
SOとはSexual Orientation=好きになる相手の性別(性的指向)、GIとはGender Identity=自分がどの性別であるか(性自認)についての頭文字。こうしたことに関連して、差別的な発言や嫌がらせなどを受ける=ハラスメントのことをいいます。

この問題は、そもそも加害者に「ハラスメント」という認識がなかったり、そのことによって「誰かが傷つくかもしれない」ということが想定されていなかったりすることがあります。また、受けた当事者自身も「我慢して受け流すしかない」と思ったり、モヤモヤするが「嫌だ」と言っていいことなのか分からない…といったことも多いのが現状です。 そのため、「何がSOGIハラなのか」「なぜそれがSOGIハラなのか」が社会に共有されないまま、家庭・学校・職場に蔓延し、当事者を追い詰めていることも知られていません。

そこで、SOGIハラを考えるため被害を「受けたことがある」「受けたかもしれない」と感じている人からの体験談をお寄せいただきました。

番組ディレクターのコメント

いくつか寄せられているコメントのなかには「PZNさん」というペンネームの人の投稿とそれに対する反論が掲載されていた。

PZNさんによる提案

SOGIに限定せず、性の多様性にまつわる差別を無くそう!(PZNさん)
SOGIハラは、性の多様性にまつわるいじめや嫌がらせや偏見をなくす為に生まれた言葉だと思います。

だとすれば、SOGIだけに限定せず、性の多様性を否定する言動を全てひっくるめたハラスメントをなくす為の言葉に変える方が良いのではないかと思います。
例えば、セクシャル ダイバーシティ(性的多様性)ハラスメント、略してセダハラとかです。

性的多様性はSOGIだけではありません。
LGBTPZNとはLGBTにペドフィリア(小児性愛)、ズーフィリア、ネクロフィリアという社会的に嫌悪される性愛を加えた概念です。
LGBTよりPZNの方が性的欲求解消が難しく、それ故LGBTと同様に配慮されるべきだと考えられますが、PZNは逆に差別されているように感じます。
SOGIやLGBTは一部の性的多様性だけを特権階級化する(逆)差別的な運動です。

SOGIやLGBTだけを配慮し、その他の性的多様性を排除・否定することは、現実に存在する問題どころか、LGBT解放運動の歴史からも目をそらす態度であり、明らかに差別・偏見を生み出す方向に動くものです。

2017年1月、自称イケメンお笑い芸人が、17歳の女性との交際が発覚し、何も違法行為はないのに以下のようなハラスメントを受けました。

▼「ロリコン」などの侮蔑的な発言
▼からかいや暴言
▼性的嗜好を理由に、無期限謹慎処分など仕事上の不当な扱いを受ける
▼性的嗜好について、了解を得ずに第3者に暴露される(アウティング) など
私は、飲み会で結婚や恋愛について聞かれたり、ロリコン・小児性愛者への差別発言が交わされたりするのが苦痛で、壁を感じていたところ、
女性上司に「心を開かないと」と注意され、悩んだ末にロリコンであることを打ち明けたところ、仕事の承認がおりなくなり、承認されないから成果を出せず「数字を出せなかったから」と退社に追い込まれました。

PZNさんの「提案」

(NHKの公式サイトがなんの注釈もなくこの意見を載せていたのでわたしは驚いた)

それに対する反論意見

SOGIとPZNは関係のないものだと思います。SOGIは性的指向と性自認で好きになる性別(また好きになる性別がない)と自分自身の性別について指しているものであって、PZNは指向ではなくて嗜好だと思います。どんなタイプが好きか、どんな事に性的欲求を満たすか性癖の話しなので一緒にされると困ります。

目覚まし時計さんによるPZNさんへの反論

わたしはセクマイ当事者ですが、あなたの主張は受け入れ難い。
PZNには性的対象と互いに尊重し合う関係が成立する余地が無いので倫理に反しています。
LGBには互いに尊重する関係の下で精神的にも肉体的にも愛し合うことが可能ですが、PZNに「相手」と互いに尊重しあう関係を築くことはできません。
異性愛の場合でも互いに尊重する関係が崩れた場合は破綻するわけで、例えば浮気や不倫、DVが厳しく咎められるのはそのためです。
もちろんPZNの人々にも基本的な人権はあります。しかし、PZNという性的指向は尊重されるべきものとは思いません。
PZN当事者の人々は、PZNが性的指向であり当事者のアイデンティティだとしたら、PZNの人々を本当に気の毒だと思いますが、仮に「行為」に及んだ場合、「相手」の自己決定権(例え動物でも)や人権(例え死体でも)に深刻な事態が起こるわけであり、到底肯定できるものではありません。
率直に申し上げて、SOGIを否定し、LGBTを特権化と断じておきながら、LGBTPZNを主張するあなたは間違っています。

felice_japonicaさん/宮城県/50代/トランスジェンダー によるPZNさんへの反論

一部アライの方たちの意見

たぬきのたからばこ(カラバコ)さん

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普通はQは、クィアとクェスチョニングのことなのでペドフィリアを指したものではない。ただ、LGBTQ+に、ペドフィリアが入っていたとしても、彼らの人権は当然に守られるべきだし、彼らの困難は支援されるべきだ。

チャイルドマレスターとペドフィリアは違う。性的な感情を抱くことと、同意のない性行為に及ぶことの間には大きな違いがある。同意のない性行為が許されないのは、性的特徴に関わらず誰にとっても当てはまることだ。

そして、ペドフィリアなどのような少数者に対してセックスモンスターであるかのように扱うことは、これまで他の性的マイノリティに向けられてきた歪んだ偏見と同じ構造を持っている。

現実のチャイルドマレスターは、ペドフィリアではない事例が多い。たいてい人間関係における優位さにつけ込んだものだ。神父による犯行がしばしば問題になるのも、彼らが地域において強い権威を持っているからだ。

ペドフィリアは、原理的に、同意のある性行為が出来ない。仮に児童がいいよと言っても、それは同意としては見做さない社会的な合意がある。
だから、彼らに対しては性的な出会いなどの支援はできない。

だが、彼らに向けられた誤解と偏見に基づく蔑視に抗うこと、彼らを差別の正当化の道具に使わせないよう働きかけることなどは、必要な支援としてあると私は考える。

トランスジェンダーやペドフィリアに対する差別扇動を見るたびに、性犯罪者の多数派はシスジェンダーのヘテロセクシャルであると言うことを思い出して欲しいと思う。

たぬきのたからばこ(カラバコ)さん(@hi_kmd)のツイートより

Ringo@入管解体さん

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同意します

LGBTQやペドフィリアを小児に対する性加害者であると憎悪煽動することで、家庭や地域社会での小児に対する性暴力や虐待を不問にしていないかという懸念も拭いきれない。

LGBTQなど家父長制の規範から逸脱する性的マイノリティを「女性や子どもへの脅威」と見做して、守るべき女性や子どもを選別してパターナリスティックに庇護することがフェミニズムの文脈で行われていることにも危機感を覚える。
どういった性的指向や性的ファンタジーを抱くかということでの差別は、あってはならない。

「女性や子どもに対して性的欲求を抱くから危険」という理由で属性排除が許されるのであれば、まず真っ先に圧倒的多数のシスジェンダー・ヘテロセクシュアル男性が社会から排除されるべきはずだが、そのような論調にならずLGBTQ(特にトランスジェンダーの女性)やペドフィリアに対するヘイトに繋がりやすい背景には権力勾配があって、このような属性排除が家父長制を基盤にしていることが表れていると思う。

LGBTQやペドフィリアの人権という話をすると「女性や子どもに対する性暴力に反対していない」と、ミスリードされがちなことにも抗議したい。
私はすべての性暴力に反対しています。
今のLGBTQ権利運動の多くはペドフィリアを包括していないにも関わらず「LGBTQへの連帯を示すということは、小児性愛の擁護だ」という難癖が後を絶たない……

誰にどんな性愛や性的欲求を抱こうが、そのことで差別するのは間違っている。属性排除は、防犯にはならない。ペドフィリアとチャイルドマレスターは違う。「頭の中の性的ファンタジーを実行したら即加害」と言うのであれば、対人性愛みんなそう。

私がこういう意見を言うことで「ほら、LGBTQコミュニティのやつが小児性愛を擁護してる!やっぱりLGBTQは危ない」って、一部を切り取って曲解するヤツが絶対に出てくると思う。LGBTQコミュニティの多くにも、私のような意見はよく思われないだろうと思う。
とりあえず、私はすべての性暴力に反対です。

Ringo@入管解体さん(@R88088595)のツイートより

結局のところ、「Q」ってなに?

わたしは以下のようにツイートしたところ、

このようなご意見を引用リツイートでいただいた。

「『境界線を引く』事自体が管理・支配する側の論理であって、人権重視ではないんですよ」とのことだが、定義ができないことを法律の文言にするには無理があるのでは?

そもそも、なぜこんなに「Q」のなかに(PZNの中でも特に)ペドフィリアが含まれるのかが話題になるかというと、この話に関心がある人のなかにはお子さんがいる方もいるだろうし、子どもの時に性的被害にあった方もいるし、「子どもを守りたい」と考えている人も多いからだろう。

「ペドフィリアとチャイルドマレスターは違う」というアライの方の意見もあったが、わたし個人の意見としては実行に移すかどうかは確かに高いハードルがあるものの、小児性愛を是としてしまうと、将来的な被害者が増えてしまうのではないかと懸念している。
擁護者は「性暴力は許されない」ともいっている。しかし、子どもにとっては、大人から性的な関心を持たれ、それがセクシュアリティの一つとして認められている社会で生きること自体が児童虐待になりうるのではないか?

ペドフィリアがQに含まれるかどうかを心配する人たちに対して「Qにペドフィリアが含まれるのはデマだ」や「法的措置を検討しています」などの強い言葉を向けるよりも、県からLGBTQに関しての業務委託を受けている企業として、ペドフィリアを批判する姿勢を強く示してほしかった。

正直、アカデミアやクィア理論となんの関係のない、一般の人からすると、特にお子さんを育てている方はなおさらのこと「ペドフィリアはセクシュアリティの一つ」という意見ですら恐怖を感じる人もいるだろう。
そういったところに、ペドフィリアを理論として扱っている学者と一般市民との感覚に大きな相違があるのではないか?

わたしがこれほど考えても「Q」が「クエスチョニング」なのか「クィア」なのか「両方」なのか分からないので、この話題に関心のない一般の人はさぞ混乱するだろうと思う。

そもそも、使う人によって「Q」の意味が微妙にズレていると議論にならないのでは……??まるで「バベルの塔」のようではないか!
わたしたちはいつの間にか若干バベっていた――!?!?(動詞:バベる)

偽典の「ヨベル書」によれば、神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた。しかし人々は、これら新技術を用いて天まで届く塔をつくり、シェム[6]を高く上げ、人間が各地に散るのを免れようと考えた。神は降臨してこの塔を見「人間は言葉が同じなため、このようなことを始めた。人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにしよう」と言った。このため、人間たちは混乱し、塔の建設をやめ、世界各地へ散らばっていった。

Wikipedia「バベルの塔」より

そして、さらに「LGBTQ+」という表現をする人もいる。
「+」ってなに……!?アルファベットですらない……!?

LGBTQ+の「Q」とかなにか、「Q」とは「クエスチョニング」なのか「クィア」なのか、あるいは「その両方」なのか、「クィア」「クエスチョニング」のそれぞれの意味、そして「+」の指し示す範囲、そしてPZNが含まれるのかどうかの共通認識を持たないと、わたしたちは議論すら始めることができない。
理解を求めていくのならば、なおさらのこと、あらゆる人に分かりやすい表現が求められるのではないか?

追記(2023年6月17日)

星さんに対してわたしの意見をツイートした。

「性的な加害は断じて許されざる」とありますが、「ペドフィリアとチャイルドマレスターは違う」と擁護している意見もありますし、県から業務委託された企業として、これ以上の誤解を招かないように「ペドフィリアを許容しない、否定的な立場だ」と明言なさったほうが良かったのではないでしょうか。

わたしは、星さんが問題点を指摘された記事を何も言わずに修正した後に、何十人も色んな人に対して「法的措置を検討する」というリプライを送っていたのをみて、その攻撃的な姿勢をとても恐ろしいと感じてしまいました。
こんな意見を書いたわたしも訴えられてしまいますか?

修正前記事の問題点を指摘した人たちはJobRainbowさんを貶めようとする意図はなく、子どもや社会に与える影響が心配で指摘したのでしょう。「法的措置を検討」という強い言葉は「ペドフィリアとチャイルドマレスターは違う」と擁護して心理的不安を与える側に言ってほしかったです。長文失礼しました。

いただいたサポートはアウトプットという形で還元できるよう活かしたいと思います💪🏻