或る日(2)

彼のことが好きだった、というには、あまりにもわたしたちは心許無い関係だった。

彼と知り合ったのは茶色く染まった葉が全て落ちて、ツンとした冷たさが鼻にしみる冬の始まりの頃だった。

高校の同級生だった友人と久しぶりに飲みに行こうと都内の居酒屋で待ち合わせたはずが、時間を少しすぎて現れた友人の隣には彼と、彼の友人が佇んでいた。

「……寒い。」
「ごめんごめん、お待たせ!こいつら大学の友達なんだけど、飲みに行くって話をしたら行きたいって聞かなくて」
「はじめましてー!おじゃましま!」
「……どうも。」
文句がましげに言うわたしにあっけらかんと笑って形だけの手を合わせる友人とにこやかにはにかむ彼の友人の隣で、彼はただ一言そう言った。

無愛想なやつだと思った。他人様の飲み会に勝手についてきた挙句にまともに挨拶もしないなんて。
最悪だ、と小さく呟きながら4人席の座敷に座る。
てっきり隣に来るものだと思っていた友人は何故か向かいの席に座って、散々迷った挙句に彼はわたしの隣へ腰を下ろした。

「なんであんたそっち座ったのよ!」
と小声で文句を言えば
「合コンじゃないんだから、女と男に分かれる方が変じゃない?」
と言って笑う友人に、確かにそうだと思う気持ちといまいち納得が行かない気持ちを持て余したまま口を噤んだ。

あれよあれよという間につまみが決まり、手渡されたメニューを眺めながらどうにも気まずい空気に観念して
「……何飲みます?」
とメニューを彼の方へ傾けると、ぼーっとしていたらしい彼はひどく驚いた顔でメニューを見るために微妙に空いていたわたしとの距離を少しだけ詰めた。

#小説

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