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三軒茶屋の角打(有料試飲)「唐木屋」。 ペアリングで遊ぶ、温度で遊ぶ、日本酒の実験室

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この、あわ…。
小左衛門の超活性。「樽生」の「日本酒」です。

三軒茶屋にある「唐木屋の中」。ここは「いろいろな日本酒を試したい」「おつまみとの相性を試したい」という人におすすめしたい「有料試飲(角打)」です。

唐木屋http://www.karakiya.net/

「角打ち」とは、酒販店の一角でお酒を提供する「有料試飲」。気に入った商品はそのまま購入できる。飲み屋のイメージがあるが、唐木屋は「あくまでもお酒を楽しむための『有料試飲スペース』という姿勢を貫いている。ちなみに酒屋なのが「唐木屋」で、試飲スペースは「唐木屋のなか」と呼ぶ。

ぱっと見は「町の酒屋さん」、しかし中は…

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お店は世田谷線太子堂駅の目の前にあります。一見ただの酒屋さん。

ドアをあけ中に入ると、まずはその「薄暗さ」に驚きます。
照明はお祭りやビアガーデンで見られるような「提灯」のみ。
壁面は冷蔵庫と陳列棚があり、酒瓶に囲まれるように折りたたみのパイプ椅子が数脚と簡易テーブル、そして酒樽を活用した丸テーブルが並んでいます。

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夏も冬も、ひんやりとした寒さが保たれています(実際、冬はコートが脱げません)。

なぜかというと、ここでは「お酒」が主役だから。
お酒の大敵は光と温度。品質管理のため照明を落としているのです。温度も同じ。寒い酒屋さんは信用できます。

ここで、唐木屋を楽しむためのルールを紹介します。

・会員制(酔客を断るためなので、誰でも入会できます)・食べ物持ち込み自由、レンジあり・お燗セルフサービス・1杯(60ml)100円代後半から

ミルクセーキ! な生酒

まず1杯目は冒頭の「小左衛門 生酒」。 ご主人が冷蔵庫(マイナス5度の氷温冷蔵庫)から金属の「樽」 を引っ張り(ひきずり)出し、そこにソケットを装着。完全に「樽生ビール」の動作で日本酒を注ぎます。

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「ガスは使っていませんよ。勝手に溢れてくるんです」とのこと。

最近流行りの「スパークリング日本酒」というと、クリアな泡をイメージします。しかしこの生酒は、泡がとにかく強い(粘りがある)完全に新ジャンル。粘度のあるどろりとした液体が流れると、口のなかで発泡が「ゆっくり」「しっかり」動きます。ミルクとカルピスを生クリームが合わさったような不思議な味わいです。

唎き猪口でいただく「飲み比べセット」はマスト

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唐木屋で必ず飲んでいただきたいのが、週替わりの飲み比べセット。

この日は…
・嘉泉(東京都福生市の嘉泉田村酒造場)
・米鶴(山形県の米鶴酒造)
・酔鯨(高知県の酔鯨酒造)

の3種でした。60mlずつですが、みてください、この金額。ダメでしょう。

酒器は、官能検査(利き酒)のときに使う本物の利き猪口(底の蛇の目は、青と白の模様を使って透明度を見ます)。ここからも唐木屋さんの本気さが伝わってきます。

❶嘉泉 ふなしぼり無濾過生原酒
香りは控えめで、甘みとほぼ同量の苦味あり。やや固めで、舌に味のブロックががちがちあたる感じがします。

❷米鶴 純米しぼりたて 生原酒
白いバナナのようなトロピカルな甘みがあり、さわやかな印象。飲み終わり、喉にすこしえぐみが残る。

❸酔鯨 純米吟醸 しぼりたて生
かおりはほぼ感じない。こちらはよりフレッシュで柑橘系の果物のよう。雑味がほとんどなく、ずっと口にいれていたいような心地よさ。単体の完成度は随一。

おつまみとの相性をさがそう!

唐木屋の真骨頂は、自由なペアリングの実験。持参したおつまみで3種を合わせてみました。(この日のラインナップは比較的綺麗でしたので、かたよりました)

「ポテトサラダ(バジル)」

これは❸「酔鯨」かなー、いや、❷米鶴もよい。「どこに酸味を感じるか」によって、マヨネーズ&バジルとの相性が変化しそうです。

「焼き鳥(塩)」

❶「嘉泉」が合います。お酒単体だと「硬い」に感じていた後味が、塩味と肉の旨味があることでまったく気になりません。「嘉泉」は食中酒なんだと実感できます。

「アジのたたき」

これも❶「嘉泉」が合う。鳥も魚もいけるなんてすごい。酔鯨は醤油との相性がよく、清涼感が魚臭さを打ち消してくれます。しかしここに「シソ」が入ってくると…なんと米鶴にあるある程度のボディがあることでメリハリがつく。

「貝柱の照り焼き」

醤油ベースでしっかり甘辛い味付けが特徴のおつまみ。どれも負けてしまいます…。しかし❶「嘉泉」を人肌燗まで温めてみると…甘さがまし、丸みをおびた味わいに。貝との相性もぐっと上がります。そして醤油にも負けない味になります。

つまみを合わせみると味の印象がどんどんかわります。

熱燗で遊ぶ

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試飲スペースのすみにある「燗どうこ」。これもセルフで使い放題。

おちょこをそのまま投入し、温度を見つつ好きな温度に仕上げることができます。

お燗酒ってお店で頂く分には「おまかせ」でいいのですが、自分でやるとなると何度にしていいのかわからないものです。(ぬる燗、ひとはだ燗、とびきり燗など細かい呼び名があります)

ここでは燗どうこの前に立ち、温度をあげつつ一口ずつ飲むなんてこともできます。(もちろん共有設備ですが、空いているときはそれができる)

飲食店で感じる「幸せ」とは逆に、自分で探るという「面白み」が得られる。
おもしろい、おいしいです。

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ちなみにですが、この唐木屋さん、クラフトビールもすごいです。
冷蔵庫にある(DIY)サーバーセットから、随時十数種類をいただけます。スタートでも、締めでもいい。

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これで1000円しない!!

居酒屋のようにガヤガヤはできない、だから別にだれかをつれていくわけでもない。時間のできたとき、スーパーによってつまみ買って、ふらっと訪れる。

なんていいテーマパークを見つけてしまったんだ、と震えています。

どうか、人気がでませんように!

もちろん、お酒を飲みます。