失敗しない日本酒の選び方(SAKE COMPETITION2018を読み解く)

年末年始の日本酒を探す人もいるのではないでしょうか。
人の集まる場に持っていくお酒となると、普段買うお酒とは違う「確実においしい」という目線で選ぶ必要がでてきます。日常的にあまり買わない方にとってはなおさら「失敗しないお酒選び」をしたくなるものです。

今回、その指針として紹介するのがこちら。

世界最大の日本酒コンペティション「SAKE COMPETITION2018」。

SAKE COMPETITIONとは
(https://sakecompetition.com/)
日本一美味しい市販酒を決めるイベント。2018年は454蔵、総出品数 1772点と世界最多が参加。現在自醸蔵が1000程度とされている中、約半数の酒蔵が参加していることになります。総勢30名以上の審査員が完全ブラインドで審査、採点。平均値により「一番おいしいお酒」を決めます。純米酒、純米吟醸、純米大吟醸などの部門ごとにエントリーし、上位10%にSILVER、トップ10本にGOLDの栄誉が送られます。
※結果自体はHPでも見られます。結果をまとめた本もありますので、ぜひ手に取ってみてください。(編集担当しましたので)

このコンペティションの特徴は「市販酒」であること。日本酒の賞レースいえば「全国新酒鑑評会」が有名ですが、こちらは出品酒用に醸した専用の「作品」で競う場であり、そうそう一般消費者が飲めるものではありません。一方「SAKE COMPETITION」の対象となる市販酒は、流通させて利益を得ることが目的のお酒であり、普通に買えます(売り切れもありますが)。
・鑑評会酒=最大出力を目指す力
・市販酒=ある程度の量を作る再現力、そして流通に乗せる力
この2つでは、使う筋肉が全然違うのです。
鑑評会酒「年に一度本気だせばこんなの造れる技術あります!」、SAKE COMPETITIONは「だいたいいっつもこの味造ってます」くらいでしょうか。もちろん鑑評会酒もとっても好きなのですが、今回は気軽に「買う」ことが目的のため、SAKE COMPETITION2018の結果をもとに考えます。

POINT1  とにかくGOLD「ブランド」を買う

欲しい日本酒があってネットや本をメモしていても、いざ酒屋にってまったく同じ酒を手に入れられるということは、実はなかなかありません。日本酒とはひとつのブランドの中にさまざまな「造り」や「スペック」、「原料米」があり、春夏秋冬ことなる味をリリースしている、本当に「なまもの」なのです。

例えばお酒のラベルに書かれているのは…
「●●政宗(ブランド) 純米吟醸(スペック) 山廃(造り) 袋吊り(上槽方法) 山田穂(原料米) 生酒(季節・手法)」…といった具合。すべての条件を満たすのは、なかなか難しいのです。そもそも細かくなるほど数が少ない。

そこで、見るべきは「ブランド」。
SAKE COMPETITIONは、各部門のTOP10にGOLDの栄誉が送られます。例えば純米酒部門のGOLDならば出品数456点のうちTOP10点。ここに名前があるようなブランドは醸造界のトップランナー。お米の種類や作りが違っていても、おいしさは保証されているのです。(ちなみに僕は、同じブランドのお米違いを飲み比べても、違いを言えません…)

受賞酒の例)
・會津宮泉(純米酒1位)
・写楽(純米酒5位)
この2つは同じ宮泉酒造。會津宮泉は蔵元の地元・福島を中心に流通しているお酒であり、写楽は首都圏向けの商品。この2つ、飲み比べても僕は全然わかりません。ただただ美味しい。とにかく今年の宮泉酒造はすごい、ということです。

POINT2  「複数受賞」ブランドを選ぶ

SAKE COMPETITIONではGOLDばかり注目されますが、実はSILVERも部門出品酒の上位1割です。酒屋さんでずらーっと並んでいるお酒の「おいしい10%」が抽出されているようなもの。SILVER以上の点差なんて、本当に0.0〜とかの世界だそう。だって十四代とか磯自慢がSILVERなんですよ。

ここからが大切なのですが、SAKE COMPETITIONはブラインド審査のため、忖度なしに1つの蔵のお酒がいくつも受賞する、なんてことがよく起こります。ある部門のSILVER以上の上位10%に複数受賞している蔵があれば要注目。その蔵の日本酒は商品ごとのムラがなく、その年の造りがとてつもなく素晴らしいということです。

受賞酒の例)
・宝剣 →純米酒部門の10位、SILVERに2本入賞
・AKABU →純米吟醸部門の7位、10位、SILVERに2本受賞

POINT3 部門またぎは2つまで

ここで注意。日本酒には「純米大吟醸」「純米吟醸」「純米酒」というスペック(原料をどれくらい贅沢に使ったかという目安のようなもの)があります。先ほど「複数受賞の蔵はすごい」と書きましたが、この「部門」をまたぐと話は変わってきます。なぜなら、酒蔵によって「デイリーな純米酒が得意」「ハレの日の大吟醸が得意」というような個性があるからです。純米酒で評価されたお酒の「純米大吟醸」は、必ずしも「純米大吟醸の世界」で同じように評価されているわけではないということなのです。

SAKE COMPETITIONの結果を見ても、純米酒と大吟醸酒の両方で複数受賞しているような蔵はごく少数。(その分すごいのですが…)

ではどの程度の部門またぎなら買ってもいいかというと、
(純米酒・純米吟醸・純米大吟醸・大吟醸)
から、せいぜい隣のカテゴリーまでが、同じ評価を信頼していい範囲だと、僕は考えています。2つ程度のカテゴリーで無双といえる結果を出しているすごい蔵もいくつか見られます。

受賞酒の例)
・町田酒造→純米大吟醸部門、吟醸部門で複数受賞 高級酒がおすすめ!
・作→純米吟醸、純米大吟醸で複数受賞 ちょっと高め〜高級酒が強い
・東洋美人→純米酒部門、純米吟醸部門で複数受賞 日常酒からやや高級酒まで 
※東洋美人さんは全然タイプの違う大吟醸でもGOLD。2018年は無双しています。
※もちろん「純米酒が得意な蔵」の味が好きで、ハレの日のその上位版を買うのは大賛成です。あくまで「評価を同じだと思わないこと」というのが趣旨です。

POINT4 アーカイブから実力蔵、注目蔵を選ぶ

SAKE COMPETITIONは2018年で7回目。これまでのアーカイブを見ることで「流行にかかわらず強い実力蔵」「最近伸びている注目蔵」がわかります。

1・実力蔵
お酒はその年の「米の硬さ」にいかに対応するかが見どころ。年にかかわらず常に最高品質のお酒を醸す蔵は、問答無用の実力蔵です。
例)
飛露喜→SAKE COMPETITIONの初回王者。純米酒部門で常にGOLD獲得を続ける。
伯楽星/あたごのまつ→2016年純米酒王者。新澤酒造店も2014年あたりからGOLDの常連です。

2・注目蔵
近年受賞が増えている蔵は、まさに今酒質向上に取り組んでおり、市場での評価もめきめき上がっている蔵。「今が飲み頃」という注目蔵です。
例)
・蔵王→2018年、純米酒部門の3位に突如入選。原料処理のコントロールが向上した結果だそうです。
・せんきん→純米酒4位入賞。これまで「賞レースむきではない」ユニークな蔵とされていたが、ついに表舞台に登場しました。
・澤屋まつもと→「微発泡」という新ジャンルで純米酒部門の6位を受賞

もはや「おいしくない日本酒を探すのが難しい」といわれるほどの日本酒業界。賞レースを見ていると、ただのお酒からキャラクター性のようなものが伝わってきます。これらのお酒は主催のはせがわ酒店さんをはじめ、全国の地酒店で販売されています。
当然、「あえて賞レースで戦わない蔵」「オリジナリティを貫く蔵」も僕は大好きです。その上で「じゃあ何を買おう?」と困ったときのヒントになれれば幸いです。


もちろん、お酒を飲みます。