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続・人生の大切な場面には。

2022年12月5日。夢が叶った日。
この日、わたしはずっとずっと会いたかった人達のライブに行った。6年分の想いと感謝とともに。
ポルノグラフィティ。わたしの人生に寄り添い続けてくれた、大切な存在。



一年ほど前「人生の大切な場面には、」というnoteを投稿した。まずはこの続きから書こうと思う。


就職試験当日、直前までポルノグラフィティを聞いて気合いを入れて挑んだ。試験後は透き通るような青空を眺めながら解放感とともに帰宅し、その日の夜は二人が出演したオールナイトニッポンXを聞いた。台風により直前になって試験が1週間もズレた時は勘弁してくれと胃がキリキリと悲鳴をあげたけれど、二人のリアルタイムの声が聞ける日と重なったのだから結果的にこの日でよかったと思う。
数日後、無事に内定を貰うことができた。帰りはCDショップに寄り道して「テーマソング」を購入し軽やかな足取りで家路に着いた。

そして春、社会人となった。ファンクラブに入るタイミングを伺っていると、4月末にアルバム発売とツアーが発表された。タイトルは『暁』。五年ぶりのアルバムだ。このタイミングだ!と入会し、同時にライブにも申し込んだ。
社会人1年生に金はなく、選択肢は地元のみだった(いま思えば静岡も行けたが)。幸い愛知公演は2日ある。日月休みの会社に就職したため月曜である1日目の公演は行けるけれど、2日目はどうしよう…?新入社員の有給は限られている。この先、コロナに感染したりワクチンの副反応で休むことも出てくるかもしれない。コロナ関係の会社規定をこの時は把握しておらず、まあ当たるだろうと愛知公演の1日目、12月5日のみ申し込んだ。
5月末、突然1万円強ほどのカードの利用速報が入った。全く心当たりがなく、詐欺かと疑い狼狽えたが、金額をよくよく見てみたらライブのチケット代と同じだった。先にこっちで当落を知ることになるとは………。サイトでも確認したが、無事当選していた。
当選に対して絶対的自信があったため、当たっても特に驚きはしなかった。本気で運命だと信じていたから。
ついに、ついに会えるんだ。ただその事実を強く噛み締め胸を踊らせた。
そこから12月までは、長かったような短かったような。アルバム発売、SONGS、地上波Zombie、ポルノ映画(語弊)、人体模型………。この期間にも色々なことがあった。
直前で家族がコロナになるというアクシデントがありつつも、なんとか当日を迎えることができた。
あと7ヶ月後、あと3ヶ月後、あと2週間後、あと1日。そして、今日。



当日、早めに家を出て会場近くの近くのコメダに入った。参戦前にどうしても「明日に続くリズム」を読みたかった。文章だけなのに因島凱旋ライブのシーンで泣いてしまい、この後大丈夫だろうかと笑った。
読み終わった本をリュックに入れて店を出る。外は寒くて、つい両手をブレザーのポケットに突っ込んだ。
服装は迷いに迷って制服にした。いざ着てみると一年ぶりとは思えないほど肌なじみがよくて驚いた。
会場で待ち合わせをした子と一緒に物販の列に並んだ。初対面とは思えないほど会話は盛り上がり、とにかく楽しくてずっと笑っていた。
Twitterではその子としか約束していなかったのだけど、その子のフォロワーさんとも会うことになった。フォロワーのフォロワー、全く接点がないのについていってもいいのかとドギマギしたが、優しく話しかけてくれたうえに、ツアトラの前で写真を撮ろうと声をかけてくれた。名古屋でツアトラはかなりレアらしい。
そこでも人の優しさに触れた。みんな楽しそうに写真の撮りあいっこをしていて、わたしも自然に「よかったら撮りましょうか?」という言葉が出てきて驚いた。自然にこういうことが言い合える空気ってすごいと思う。
なんてあったかいんだろうとじんわりしつつ、ライブまでの時間をお喋りに充てた。初対面ということもあり質問が多数飛び交う。ボーカルの昭仁さん派?ギターの晴一さん派?好きなアルバムは?ファンになったきっかけは?
出会った経緯は人それぞれだ。親がよくMDで流していたから、好きなアニメの主題歌を歌っていて調べていくうちに好きになった、King Gnuの井口くんが熱く語っていたのを聞いて気になった……色んな入口があるなぁとしみじみした。入口が広いとはこういうことなんだろうな。
お喋りのおかげであっという間に時間が過ぎ、ついに開場時間となった。電子チケットを係の人に見せて会場内に入る。
階段を一段一段降りていく。この距離でも十分よく見えるのにまだ降りてもいいの!?と思いながら踏みしめるように降りていき自分の席についた時、想像以上の近さに手が震えて泣きそうになった。
1階席の8列目。ステージから10メートルくらいしか離れていない。初めてなのにこんなに恵まれていいのかと興奮した。
開始前から早くもトランス状態だが必死に呼吸を整えてスマホを握りしめていた。







照明が落ち、ステージがスモークに包まれ、今回の主役たちが登場した。暗くてあまりよく見えないけれどそんなことは関係なく、既に狂ったように拍手していた。足が震える。
彼らを視界に捉えた瞬間、本物だ!!と胸の内で叫んだ。いや、でも本当に本物なのか、幻覚を見てるんじゃ……と疑う要素など何一つないはずなのにそんなことを思いかけた。深呼吸して思考の暴走を止める。余計なことを考えたくなかった。
もう一度ステージを見る。やっと逢えた。やっと逢えたねと言葉と涙がこぼれそうになった。胸が詰まる。
各々が立ち位置につき、イントロが流れる。最初の曲は悪霊少女だった。アルバム曲のひとつだ。
「し…」
一音目で意識が飛びそうになった。
歌のうまさにわたしはあんぐりと口を開けた。というか、閉じれなかった。これまで散々聞いてきたけれど、生はやはり強い。ハキハキとした歌い方も相まって歌詞がより浸透してくる。ロングトーンもすごかった。
歌唱力オバケと詩人、なんて最強の組み合わせだろう。

その日から少女の涙は 七つの色合いを帯びてく
誰にも読み取られない思い
密かに隠して生きるのだろう

悪霊少女


2曲目、3曲目と続く。序盤とは思えないほど豪華な選曲だ。既にこの時点でチケットの元は取れた。涙で視界がぼやけるが、グッと飲み込んだ。泣いている場合じゃない。とにかくこの光景を目に焼き付けたかった。
マヌケなことに、3曲目を終えて挨拶に突入してもまだ口を閉じられずにいた。足だってずっと震えっぱなしだ。4曲目に入る少し前でやっと顎が動き震えが収まった。

「ここからはポルノグラフィティの歴史の中から、何曲か聴いてもらおうと思います」

なにがくるかな、なにがくるかな、と呑気に待ち構えていたがイントロが流れた瞬間、思わず目を見開いた。
ジョバイロ。まさか今日、この曲を生で聴けるなんて思ってもいなかった。
ポルノにハマりたての頃一番よく聞いていた失恋ソングだった。好きだった人との関係が拗れてしまった頃で、彼が何を考えているのかさっぱりわからず苦しくて辛い時期だった。
苦い思い出はあるけれど、あの時の苦しさや胸の痛さを全く思い出すことなく純粋に曲を楽しむことができた。当時とは違う気持ちでこの曲を聴けるようになっていることに気づけてうれしかった。
5曲目、6曲目と続く。感情の波が押し寄せる度、手に力が入った。

再びMCへ。町ですれ違ってもファンに全然気づいて貰えない!という旨のエピソードを二本喋り倒しても飽き足らず、晴一さんがさいたまスーパーアリーナの警備員に3回も気づいてもらえなかった過去話までベラベラと暴露する昭仁さん。
トークはほのぼのとしていてどこからどう見てもよく喋る陽気な広島弁のおじさんなのに、歌になると本当に同一人物なのかと思うほどにかっこよくなる。落差についていけない。

「ここで暁のアルバムからね、いくつか聴いてもらおうと思います」

くるか……?と期待していると8曲目、念願のクラウドが来た。この時他にも二曲ほど披露したけれど、わたしはクラウドが断トツで好きだ。失恋ソングとは思えないほど爽やかで、優しい。未練がましいわけでもなく、一抹の切なさを含みつつも前向きで、いつか綺麗な思い出になりますようにと祈るような歌詞が胸に沁みる。

「次はしっとり系ですので1回お座りください。皆さんから結構支持されてるのに10周年の時以来やってなかった曲をね、今からやっていこうと思います」
なんだ…?と待ち構えていると思ってもなかった曲名が飛び出した。
「うたかたをね、アコースティックバージョンで歌いたいと思います」
聞き間違いかと思った。
うたかたは高校卒業前後によく聞いていた曲で、Spotifyにも「うたかたをよく聞いていましたね」と言われるくらいには聞き込んでいた。けれどセトリに入り込んでくるとは思いもしなかった。このライブで1番驚いた選曲かもしれない。

夏の日に蜉蝣を見て 何故か愛しく感じた
羽音の調べは優しい子守唄に

うたかた

あまりにも良すぎて記憶ないです。ただただ美しかった。

続いて、瞬く星の下で。これはかなり意外だった。久しぶりに聴いたけれど改めて聴くと歌詞のひとつひとつが染み込んできてグッときた。白馬には自分が乗る方がいい…………。
この二曲で堪えきれず少し泣いてしまった。どちらも何度も聴いてきたけれど、泣くのは初めてだった。

「皆さんにはこれから生きる屍になってもらいます」
こう告げられた瞬間、涙がどこかへ飛んでいき悲鳴をあげそうになった。Zombies are standing outだ………。
この日わたしは何度昭仁さんの歌唱力に圧倒されたのだろうか。文字通り生きる屍となった。音楽に殴られるとはこういうことなのかと肌で理解した。わたしのお葬式ではぜひこの曲を流して頂きたいです。棺を破壊して生き返ります。
メビウス…………………。初めて歌詞見た時はあまりの不穏さに驚いた。壊れた愛。怖いのに、切なさで胸が締まる。ライブに行ってからさらに好きになった曲のひとつだ。

アゲハ蝶、ミュージック・アワーとライブの定番曲が続いた。ラララの合唱こそできなかったものの、手拍子も変な踊りも本当に楽しかった。ポルノのライブの魅力はみんながひとつになれることだと思う。そしてVS、これは何度聴いても名曲だ。

そうか あの日の僕は今日を見ていたのかな
こんなにも晴れわたってる

バーサス 同じ空の下で向かいあおう
あの少年よ こっちも戦ってんだよ

VS

そして18曲目、テーマソング。わたしに勇気をくれた歌。
多分歌ってくれるだろうな、と思っていたけれどイントロが流れた瞬間身を乗り出しそうになった。うれしかった。



この一年、なにか楽しい予定が入っても「生きなきゃ生きなきゃ」って急き立てられるように思っていた。「○○まで生きよう」がまるで義務のようで、楽しみな反面どこか苦しかった。
そして楽しみが終わってしまうといつも絶望的な気分になった。幸せな気持ちになるのが怖かった。幸せが永久ではないことくらいわかっていたから、それならいっそ幸せなんて知らずに生きていたいとすら思っていた。


この夏、ありがたいことに楽しみな予定が沢山控えている。どれもとても楽しみでひとつひとつに思いを巡らすたびにワクワクしてくる。
それと同時に、大きな不安に襲われる。楽しいことや幸せなことが終わってしまうことが怖くて怖くてたまらない。
幸せなことが次々と舞い込むと、恐怖や不安を感じてしまう。このあと、とんでもなく不幸な出来事が待ち受けているのではないか。本当に自分の身に起きていることなのか。誰かの幸せを疑似体験している、あるいは奪っているのではないか。




もう消してしまったけれど、とある夏前のnoteにはそんなことを書いていた。楽しみが終わってしまうと、その先には退屈でなんの楽しみも光もない日常が待ち受けている。それがたまらなく嫌で、怖かった。

自分を肯定するのも、どこか無理をしていた。進学ではなく就職を選んだこと、何度も後悔しては楽しそうに19歳を謳歌している友達を見て嫉妬し、自分の醜さと選択に苦しんだけれど、どうにか納得するしかなくて必死に言い聞かせてた気がする。そうしないとあの時頑張った自分や背中を押してくれた人達、応援してくれた人達みんなを否定することになってしまう。

ほら!!!!!今日楽しかったでしょ!!!!!それは社会人になる選択をしたからだよ!!!!!!社会人になってなかったらこんなふうにできてないよ!!!!!!!!!ね!!!!!!わたしの選択間違ってなかったでしょ!!!!!!

そう言い聞かせてた。そうじゃないと報われないから………。でもそうすると今度は自分の気持ちの行き場がなくなって、さらに苦しくなった。

だからこそ、この日ここでテーマソングを聴けた時、この一年半を全部肯定して貰えたようでとてもとても嬉しかった。当時の選択も今のわたしも。優しく背中をさすってくれているような気がした。
声に出さずに口だけ動かして「ありがとう」を何度も繰り返した。届かないことくらいわかってた。それでも言いたかった。手のひらに痛いほど爪を食い込ませながら、じっとステージの上を凝視していた。


「いよいよ最後の1曲です。暁というのは夜明け前のとても暗い状態のことを言います。けれどその先には、強い光があります」

わたしじゃん!わたしのことじゃん!未明も同じく夜明け前の暗い時間帯を指す言葉だ。
わたしの名前である「未明」は、正直あまりポジティブな由来ではない。夜が明けきらない暗い感じが自分に合っているな、と思って選んだ。
けれどそうか………明けない夜はないんだ。未明の、暁の先には強い光があるんだ。夜明けの先にある光を愛したいと、心から思った。

「今回のアルバムは、どの曲も届ける先がハッキリしてスラスラと書けました」

この言葉がどれほど嬉しかったか。このライブに来られてよかった。こんな集大成みたいな、最高のタイミングで来れたのが本当にうれしい。
暁は圧巻だった。どれも素晴らしかったけれど、これは別格だった。言葉のひとつひとつが心に食いこんでくる。歌声も、歌詞も、演奏も、何もかもが最高だった。本当に、言い表しきれないほど最高だった。


豪勢なアンコールも終え、ついにお別れの時間が来てしまった。
こちらを指さしながら昭仁さんが叫ぶ。

「胸張っていけー!!!自信持っていけー!!!」

ライブ終わりにいつも言ってくれるお決まりの言葉。自信を与えてくれるおまじない。

はずかしがるな。叫んでみ。
自信を持っていけ。胸をはれ。

「明日に続くリズム」の作中でも昭仁さんが言ってた。まさに原点回帰。活字でもなく画面越しでもなく、ほんの数メートル前にいる人たちの声が鼓膜に直接届いているのが幸せだった。

メンバー紹介を終え、みなが一斉に頭を下げた。腰からの深いお辞儀。ああこれが20年以上愛される所以なんだろうなと思った。それはサポートメンバー(ドラムなど他楽器を担当する人たち)が退場し二人になっても同じだった。敬愛のこもったお辞儀をする姿を見て、この人たちを好きになれて本当によかったと思った。
お礼を言いたいのはこっちです。本当にありがとう。

「次会う時まで元気でね」

ああそうだ。そうだね。元気でいよう。
元気で「いなくちゃ」と苛まれることはなかった。ただ心から、次この人達会う時も元気でありたいと思った。
こうして、『18th LIVE CIRCUIT 暁』愛知公演1日目が終了した。




ライブから数日後、余韻に浸りつつわたしは日常に戻った。
あー今すごく幸せ。
憑き物が落ちたかのようにスッキリした。背中が軽い。少し前にあげたnoteのことを思い出した。

人生に満足した。けれど幸せとは何か違う。

いま思えば、満足しつつも知らないうちに背負ってたもの、自分を縛っていたものがたくさんあったんだと思う。忘れられないあの人のこと。いつまでも引きずってしまう中学時代のこと。そして、高校生だったあの頃に戻りたいと嘆いては必要以上に記憶を美化して縋ってしまうこと。
今回制服を着たのもそうだった。温度調節がしやすいとか制服ライブに憧れていたとか、色々な理由があるけど、いちばんはまだわたしが高校生でいたかったから。自分に一番似合う服が制服であってほしかったから。
でもライブを終えて家に帰ったあと、これを着ることはもうないだろうと思った。コスプレとか、制服ディズニーだとか、ファッションとして着ることは今後あるかもしれないけれど、自分を慰めるために着ることはきっともうない。


自分をグルグル縛っていた呪い、取り繕おうと表面を固めていたもの、無理やり縋っていたもの、ボロボロと剥がれ落ちて消えていった。

今ならハッキリ言える。幸せだと。満たされていると。
もう何も怖くない。大丈夫、生きていける。


序章が終わったんだ。長い長い序章が。
ここからが第1章だ。今回の当選や良席などの幸運は、やっぱり全部運命の助長だったんだろうな。次からは本当の運勝負になるだろう。今度も当選して、良席で二人を見たいな。

また救われちゃったな。行く前、特に悩んでいることや苦しいと感じるようなことは全くなくて至って元気だったから、自分でも気づいていない(というか気づいてはいたけれどどうにもならないと諦めていた)部分を救ってもらえるなんて本当に思いもしなかった。
この人達、テレビでヒーローが毎週世界を救う感覚でわたしのこと毎度毎度救ってくれてるな。一体何者なんだ………(ポルノグラフィティです)。
やっぱりこの人たちとは出逢うべくして出逢ったんだと改めて思った。




「会いたい」という気持ちが強く脈打ち続ける。きっとこれが、この先も生きていくための理由となる。

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