卒業アルバム

「さきちゃんの同級生イケメン過ぎない!?!?」
『いやほんとこれマスクの下もイケメンだからwwwww』
「羨ましい〜!!わたしの会社の同期くん、今まで出会った中でいちばんカッコいいからお顔見せたいんだけど写真ないんだよなぁ」
『同期さん今度盗撮お願いします』
「おっけーwww今度機会あったらこっそり撮るわ。あ、でも同期くんと出会う前までずっと1位だった人のなら写真あるよ」
『見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい』
「圧すごwwwwwwちょっと待ってね卒アル探すわ」


押し入れに封印していた中学の卒アル。二度と見ないと思っていたのに、深夜に友達と今まで出会った中でいちばんカッコイイ男子は?という女子っぽい話題で盛り上がり、テンションに押されて呆気なく開いてしまった。
久々に見た彼の個人写真。写真の中と彼と目が合う。全く心が動かされなかった。その瞬間、終わったんだと思った。わたしの七年が終わった。


いざ終わってみると驚くくらい自分の中に何も残らなかった。やっと過去と決別できてうれしいとか、忘れてしまうのがかなしいとか、そういう感情が何も湧いてこなかった。ただただ無だった。
また終わる終わる詐欺なのかな。数日したらまた夢に出てきて思い出して辛くなるのかな。
夢の中だけ解像度の高い君。夢を見る度に、わたしは彼の表情の一瞬一瞬を捉えて胸の奥にしまっていたんだって、ちゃんと好きだったんだなってことに気づいては安堵感と苦しさに狭まれていた。

彼のことを書いたnoteを読み返すとめちゃくちゃ痛いなって思う。本当に痛い。けどそれくらい好きだったんだなって思った。こんなに痛いこといっぱい書いちゃうくらい、わたしにとって特別な人だったんだろうな。
でももうきっと街の中で無意識に探すこともない。あの日のように同じ駅にいたとしても気づけないかもしれない。彼じゃなくてわたしが。目に入らない存在になってしまった気がする。



いつも頭の中を彼で埋めてたからもうこれから何を考えていればいいかわからない。頭の中を埋めるために空っぽの恋をいつまでも引きずってたわけじゃないのに。ずっとずっと苦しかったのに。
本当にわかんない。毎日思い出してたから。タラレバを並べたり再会した時のことを考えたり。頭の中の彼は彼じゃない。最初のときみたいに優しくしてほしくてわたしのことを好きでいてほしくて、多分彼じゃない誰かになっていた。
なかなか抜けない癖みたいになってる。どうすればいいんだろう。

成人式どうしようか。彼に会うために、会って自分の中で区切りをつけるために行こうと決意したけれど、会いたいと思わなくなってしまった。行く理由が完全になくなった。振袖を予約してしまったのに。卒業アルバムももういらない。いらないよこんなもの。中学なんて大嫌いだし。
難しいことだらけだ。全部わからないよ。やっと終わったのに。


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